―サイドスロープが出合う、クリエイションの精神06―
脇坂 つくり手との対談連載もいよいよ最終回。最後のお相手は「アンティパスト」のデザイナー、ジヌシジュンコさんとカトウキョウコさんです。
カトウ 脇坂さんと知り合って、初めはソックスにドッキングするパーツをつくっていただいたんですよね。
ジヌシ そのおかげでソックス生地を縫製ではなくニットのリンキングという手法で縫製できるようになりました。仕上がりが格段にきれいになったし、デザインの幅が広がりました。
脇坂 業界的に画期的でしたね。海外進出も早かったですよね。
ジヌシ そうなんです。1991年にブランドを始めて、パリで共同展示会があるからって誘ってもらって。
カトウ 営業も生産管理もわからない状態なのに(笑)。
脇坂 そういう「勢い」みたいなもの、僕はおふたりから学びました(笑)。
ジヌシ なんかね、どうしようかなって考えてたら、必ず誰かが救いの手を差し伸べてくれるんです。
脇坂 出会いって大切ですよね。僕はパリでの話を伺っていたので、海外進出するときに参考になりました。
カトウ 当時は人種差別もありました。私たちは友人が守ってくれたけど、展示会後のパーティで別の日本人がナプキンを投げられたり。
脇坂 そんな心構えがあり、2006年に僕も初めて海外で展示会をした時は、誰からも話しかけられなくても、パーティに呼ばれなくても平気でした。負けるかって思ってましたね。
カトウ 嫌なことは一瞬ですから。誰かと親しくなるとか、嬉しいことのほうが多いし、よい関係はずっと続きます。私たちにとって財産ですね。
脇坂 そうやって一つひとつの出会いを大切にして続けてきた結果、こんなにもファンがいるんだと思います。
カトウ ありがとうございます。これからは、さらにブランド力をつくっていかないと、と思っているんです。
ジヌシ 私たちが責任をもってつくっている商品であることを伝えていかないと。25年やっていても、まだまだやれることは残っているみたい。
脇坂 僕も、これから「サイドスロープ」でやれることはいっぱいあると思っています。発見を求めて、この春初めてミラノサローネ国際家具見本市に行くんです。ニットを軸にして、また違った展開ができればいいなと。
カトウ 軸がブレなければ、すぐにかたちになりそうですね。
脇坂 判断と行動が早いのは先輩であるおふたりから学んだので。
ジヌシ 小さな先輩ですけど(笑)。
脇坂 偉大な先輩ですよ。
サイドスロープ SIDE SLOPE
●2005年に誕生した、ファストファッションでもコレクションブランドでもないニットファクトリーブランド。脇坂大樹がデザイナーを務め、「遊び心のある大人を満たすニット」をテーマに商品を展開。洋服の価値に対する合理的な値付けや、資源の再利用も視野に入れ、国内のみならず海外への発信を強めている。
脇坂大樹 サイドスロープ デザイナー
●1972年、大阪府生まれ。企業のパタンナーやデザイナーを務めたのち、ニットデザイナーとして数々のブランドの企画に携わる。2005年に「サイドスロープ」を立ち上げ、工場の技術力や素材の特徴を熟知したテクニックを活かし、新たな発想をもってモノづくりに挑戦している。
カトウ キョウコ 「アンティパスト」デザイナー
●染色や織物の作品を制作していたが、ジヌシさんと出会い、ソックスの企画デザインに参加。ともにブランドを始めた。
ジヌシ ジュンコ 「アンティパスト」デザイナー
●大手企業でソックスやタイツのデザインを担当したのち、カトウさんとコスチュームやアクセサリーをつくり始め、独立。
問い合わせ先/フォワード・アパレル・カンパニー
TEL:03-5423-6451 www.sideslope.jp