歴史の厚みを感じる、品のある文字のプロフェッショナル

「私自身の名刺は違うのですが、ただやはりいろいろな方と名刺を交換すると、中村さんのところの名刺が多いんです。そして、それを見てさすがだなと唸ってしまいます」
そんなふうに森岡さんが語るのは、明治43年創業の活版印刷の老舗「中村活字」です。「なんといっても中村明久社長の佇まい、朗らかで誰にでも門戸を開いてお願いを聞いてくださる人柄も素晴らしい」と森岡さんはいいます。
2016年秋に資生堂ギャラリーで監修を担当した「そばにいる工芸」展では展示物の一部に中村活字で印刷をしたプレートを使いました。急遽必要になったものの、会場の佇まいを崩すことなく説明文を添えるには……森岡さんがすぐに思い浮かべたのが中村活字だったといいます。展覧会に作家として出展をしていた京都在住の和紙職人、ハタノワタルさんの和紙を持ち込み、「急なお願いながらすぐにご対応いただくことができました」と振り返ります。また2015年には、ドイツ人デザイナーでタイポグラフィ愛好家のバート・プロヤンさんが、「Gründlich. ドイツとウィーンからやってきた『黒い芸術』」展を開いていたことも強く印象に残っているそう。そうしたネットワークの広がりや展示を行う姿勢にも尊敬の念をもつといいます。
「文豪も出入りしていた、街に根付く老舗。背筋が伸びますね。銀座には、近代から現代へと時間を積み重ねてきた、厚みのある場所がいくつかあります。ここはそんな場所のひとつといっていいかもしれませんね」

中村活字

東京都中央区銀座2-13-7
TEL:03-3541-6563
営業時間:8時30分~17時
定休日:土、日、祝

www.nakamura-katsuji.com
森岡書店店主・森岡督行さんが案内する、もうひとつの銀座。

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超おさらい! 日本美術史。