みんなで食べる記憶の味、コロッケパン

森岡さんが「ハムカツが人気のようなんですが、ぼくが大好きなのはコロッケサンドですね」と語るのは、昭和2年創業「チョウシ屋」のコロッケサンドイッチ。近隣の勤め人はもちろん、すぐ近くの歌舞伎座関係者、そして遠方にもファンの多い老舗です。森岡さんも銀座に移る以前からたびたび足を運んでいたといいますが、なかでも思い出深いのは店を構える前に鈴木ビルで行った「NIPPON」の展示準備の際にみんなで買って食べたことだと言います。
「チョウシ屋に初めて来たのはいつだったかはわからないけど、以前から東銀座に来たらふと立ち寄る店でした。素直においしい昭和の味というのでしょうか。こうしたところにも銀座に根付く記憶の継承が見られますね。買う時の一連の流れも気持ちがいいものです」
そんなサンドイッチを包む包装紙を手に、牛と豚のイラストとともに描かれた丸に十字の紋を指差し、「これは島津家の家紋ですよね。銚子なのになぜだろうと気になって、お店の方にお話をきいたことがあります」と森岡さんは言います。今回あらためて、チョウシ屋3代目の阿部さんに尋ねたところ、「もともと祖父は千葉県銚子市の長崎鼻(銚子市最南端の岬)のほうから移ってきたときいています。ただそれ以前に鹿児島のほうから移ってきたと聞いたことはありません。同じ地名が指宿にもあるので、そんなところかもしれないですね」とのこと。なおカツ(豚カツ)をのぞいて、ハムカツやコロッケ、メンチカツなどはダブルで挟み込むことも可能で、食パンのほかにコッペパンのサンドも。自分好みのメニューを森岡さんのように見つけるのもおすすめです。

チョウシ屋

東京都中央区銀座3-11-6
TEL:03-3541-2982
営業時間:11時~14時、16時~18時
定休日:月、土、日、祝

森岡書店店主・森岡督行さんが案内する、もうひとつの銀座。