山葡萄のワインの進化系! 樽熟成を経ることでぐんとなめらかな味わいに。

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    日本ワインで乾杯!We Love Japanese Wine!

    #40|
    鹿取みゆき・選&文
    尾鷲陽介・写真
    selection & text by Miyuki Katori
    main photograph by Yosuke Owashi

    レアリティ

    日本では、もともとは野山で自生していた山葡萄からもワインがつくられています。本連載の第30回でご紹介した蒜山ワイナリーの「山葡萄ロゼ」もまたしかり。そんな日本独自の品種である山葡萄からつくられるワインにいま、変化が見られ始めています。山葡萄といってもさまざまな品種がありますが、特に注目したいのが、「コワニティ」という品種。というのもここ数年、スパークリングワインや微発泡酒、樽でゆっくり寝かせた熟成タイプと、コワニティでつくられるワインのバリエーションに広がりが出てきているのです。

    今回紹介するレアリティも、コワニティでつくられたワインです。つくったのは、岩手県にあるワイナリー「くずまきワイン」の醸造責任者、大久保圭祐 さん。くずまきワインにとって、コワニティは非常に重要なブドウです。ワイナリーでは、コワニティ100%のワイン4アイテムに加え、他の品種とブレンドしたものを合わせると全12アイテムものワインをつくっています。「レアリティ」はコワニティ100%のワインの中でもいちばん上のランクに位置するワインになります。

    「コワニティは、人の手で容易にコントロールできない生命力あふれるブドウです。酸味が強い傾向はありますが、それを活かせば他にない個性が輝き出します。この土地に古来より自生してきた、日本オリジナルの種として大事に思っています」と大久保さん。

    レアリティが初めてリリースされたのは1993年。大久保さんがワイナリーに入社したのがその4年後。もう20年間も、大久保さんはこのワインをつくり続けています。酸が豊かなコワニティの魅力を少しでも活かそうと考えた大久保さんは、出来上がったワインを樽の中でゆっくりと熟成させることを考案。「レアリティ」は5年前から樽熟成を経たものに変わりました。色は黒みがかった紫色。樽熟成させても色はほとんど変わりませんでしたが、味わいはぐんとなめらかになりました。少し野趣味のある香りにカシスや樽の風味が加わり、複雑な香りがします。ひと晩置いて飲むと、おいしさも格別です。

    山葡萄のワインの進化系! 樽熟成を経ることでぐんとなめらかな味わいに。
    ワイナリーのコワニティの畑。かつて野山で自生していたものを選んで栽培しています。岩手県葛巻町はもともと酪農が盛ん。ここで新たな産業を興そうとした時に注目されたのが、コワニティでした。くずまきワインの創業は1986年ですが、最近の日本ワインの目覚ましい変化に対応すべく、新しい試みに積極的。5年後を目途に、新たなワイナリーを建設する予定だそうです。新生くずまきワインも楽しみです。

    レアリティ

    ワイナリー名/くずまきワイン
    品種と産地/ヴィティス・コワニティ(別名ヤマブドウ・岩手郡葛巻町 )
    容量/750ml
    価格/¥2,900
    問い合わせ先/くずまきワイン
    TEL: 0195-66-3111
    www.kuzumakiwine.com