単身パリに乗り込んだ日本人の眼鏡職人が考える、アイウエアの未来とは?

単身パリに乗り込んだ日本人の眼鏡職人が考える、アイウエアの未来とは?

「北村 Domont」のコレクション。2014年以来、毎年10本ほど新作を発表している。

視力矯正器具であるとともに、ファッションツールとしても重要な眼鏡。我々が眼鏡を購入する際、眼鏡販売店で気に入ったデザインのフレームを選び、視力に応じたレンズを入れ、フィッティングでかけ心地を調整してもらう、というのが一般的な流れでしょう。しかし、人の顔や頭のカタチは十人十色。デザイン的にもかけ心地的にも、真に自分にフィットしたものを欲するなら、スーツや革靴などと同じようにオーダーメイドするのがいちばんです。日本ではまだあまり普及していませんが、ヨーロッパでは多くの眼鏡販売店で眼鏡をオーダーメイドすることができます。もちろん割合としては日本同様に既製品を購入する人が圧倒的に多いのですが、オーダーメイドする人もごく普通にいます。欧米系、アフリカ系、アジア系などさまざまな人種の人々が暮らすヨーロッパでは、既製品だけでは対応できないケースが多いからですが、それと同時に眼鏡は医療器具であるという認識が強く、保険が適用されるため、比較的気軽につくれるというのも大きな理由です。

眼鏡職人の北村さん

フランスでは、オーダーフレームの製作を請け負う工房が数社あります。そのひとつである「Dorillat(ドリラ)」社は、1950年に設立された歴史のある工房。欧米各国の眼鏡店からの依頼で月に70~80本のオーダーフレームを製作するほか、デザイナーズブランドや著名人の一点物のフレームも製作しています。北村拓也さんは、この工房で2014年から働いている日本人の眼鏡職人です。同年秋から自身がデザインした眼鏡のブランド「北村 Domont(ドモン)」も展開している北村さんに、フランスでオーダーメイドの眼鏡製作を始めた理由などについて聞きました。

北村拓也さんがかけている眼鏡はもちろん自作のもの。きめ細やかでセルのようなツヤ感がありながらも軽量なバッファローホーン(水牛の角)を使用している。

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