大圃祐二(おおはたゆうじ)●1969年、広島県生まれ。1992年オンワード樫山に入社。スーツからカジュアルまで、一貫してメンズファッションを手掛け、2017年より「カシヤマ ザ・スマートテーラー」のクリエイティブ・ディレクターとして、ブランド全体のディレクションを行っています。
オンワードパーソナルスタイルのオーダースーツブランド、「カシヤマ ザ・スマートテーラー」からさらに一歩踏み込み、より快適で簡単に、オンでもオフでも心地よくスタイリッシュに着られるセットアップを打ち出した新ライン、「モダンテーラード」。ブランドを指揮するクリエイティブ・ディレクターの大圃祐二さんに、 “働く姿”とテーラードの未来について聞きました。
「『カシヤマ ザ・スマートテーラー』の立ち上げ前、ニューヨークのシェアオフィスの視察に行く機会がありました。でもオフィス以上に衝撃を受けたのが、そこで働くビジネスマンたちのスタイル。ストレッチスーツにカットソーというような人々が増えているという前情報はあったのですが、実際にはフリーランスのクリエイターだけでなく、ビッグビジネスをバリバリとこなす起業家までもがそういった格好だった。日本も近い将来、こうなっていくに違いないと感じました。テーラードのスーツは男の趣味としては残るけれど、”働く姿”はもっと快適なものに進化していく。でもTシャツにチノパンではないはずだと」
実店舗での採寸で使用される、「モダンテーラード」ライン専用に開発されたフィッティング・サンプルとバンチブック。ジャケットの袖やパンツの裾など、サイズ調整が可能な箇所には目安の目盛りが。ジャケットの前合わせとパンツのウエストは面テープで仮留めしながら、ジャストなサイズを探りやすくなっています。オーダーしたスーツには、収納に便利な写真手前のポケッタブルポーチが付属。
「モダンテーラード」ラインのオーダースタイルは極めてシンプル。「TRAVELLER」と「ACTIVE」というふたつのスタイルをベースに生地を選び、ジャケットとパンツの基本サイズを個別に選択。ジャケットは着丈、左右の袖丈、ウエストを5㎜単位で、パンツはウエストを1㎝単位、左右の股下の詰め・出しを5㎜単位で微調整するのみです。
「我々のスタイルガイド(フィッター)によるていねいな採寸や補正は、『カシヤマ ザ・スマートテーラー』の大きな魅力です。でも『モダンテーラード』ラインは、とにかくスピーディーに販売したかった。セットアップを、もっとスマートに買えるアイテムにしたかったんです。そのために修正箇所は最小限にして、ユーザー自身で採寸できるところまでもっていきたいと思いました」
とはいえ、自らのサイズを正しく採寸するのは難しさを伴います。もちろん、店舗で熟練のスタイルガイド(フィッター)に採寸してもらうこともできますが、もっと気楽に、思いついた瞬間にどこからでもオーダーできるとなれば、忙しい現代人にとって大きなメリットとなるでしょう。そこで実際には、手持ちのジャケットやパンツをテーブルなどに置いて、必要箇所を計測して参考にすればいい。こんな肩肘張らない手軽さも、実に合理的で現代的なサービスだと感じさせます。
今後、全国の「カシヤマ ザ・スマートテーラー」のショップに、順次設置予定の「モダンテーラード」ライン専用の移動式セルフセミオーダーブース「Mobile Shop」。
「普段着ているスーツよりも、リラックスできるセットアップが欲しい。あるいはカジュアルなアイテムを上下で揃えて、オンにも対応したい。『モダンテーラード』ラインには、そんな双方向からの需要があると考えました。そこで今季は、パンツのクリースラインが必要か否かによって、前者を『TRAVELLER』、後者を『ACTIVE』というモデルでわかりやすく提案しています。生地はストレッチ性があって動きやすく、ウォッシャブルであることにこだわりました。テーラードを着たくないと思う最大の理由が、窮屈さ。その次が汚れても洗えないこと、と言われているからです。実際、私がオーダーした『モダンテーラード』ラインのセットアップも洗って綺麗にできましたし、その日のうちに乾いてクリースラインもキープできたんですよ」
「カシヤマ ザ・スマートテーラー」で仕立てたオーダースーツを身にまとい、「モダンテーラード」という新ライン、そして今後のテーラードのあり方についても熱く語ってくれた大圃さん。
最後に、そんな「モダンテーラード」ラインの魅力や楽しみ方を、大圃さん自身の言葉で語ってもらいました。
「『モダンテーラード』ラインは楽チンなビジネスウェアでありつつ、実はカジュアルなテーラードジャケットに共地のパンツを合わせているという、トレンディーなスタイリングなんです。これって誰にでも似合うし、旬だし、コーディネートも簡単だし、どんな靴も合わせやすい。それでいて、サイズもジャストで着られます。だから私自身は、ぜひ皆さんにキレイめのカジュアルウエアとして捉え、普段着を格上げするような着こなしを楽しんでいただきたいです」
「これからの時代はビジネスシーンでも、クールビズやスマートカジュアル的なものではなく、もっとアクティブでスポーティなスタイルが求められ、増えていくだろうと感じています。『モダンテーラード』もアクティブさやわかりやすさを損なわない範囲内で、選べる生地のバリエーションや寸法を変えられる箇所を増やしていきたいですね。そしてカジュアルセットアップをさらに浸透させ、日本の“働く姿”をも進化させていけたらと思っています」