今年の土用・二の丑はムサコの人気やきとん店「豚星」の新業態、うなぎ串の...

今年の土用・二の丑はムサコの人気やきとん店「豚星」の新業態、うなぎ串の「梅星」へ。

今年の土用・二の丑はムサコの人気やきとん店「豚星」の新業態、うなぎ串の「梅星」へ。
今年の土用・二の丑はムサコの人気やきとん店「豚星」の新業態、うなぎ串の「梅星」へ。

東の「宇ち多゛」と並ぶ、西の「牛太郎」は、東京を代表する古典酒場の代表格だ。しかし、2010年に開店し、瞬く間に帝都を席巻した「晩杯屋」と翌年4月にオープンした「豚星」。ムサコホッピングの起点となったこの2店が誕生しなければ、現在の武蔵小山の攻勢はなかったはずだ。酒に目がない地元の親父たちばかりでなく、若者たちが遠くから訪れる街に変容したのは、眩しいムサコドリームを体現した2店の功績だ。


徹底した仕入れのマジックで圧倒的な低価格を看板にした「晩杯屋」に対して、当初から「豚星」には女性同士の客や、デート使いのカップルさえ夢中にするサムシングがあった。近隣の大衆酒場に最上級の敬意を払いながら、決して迎合することのない爽やかな存在感。東西の2人が開いた「豚星」は、ムサコという昭和レトロな街の空気をごく自然に呼吸しながら、当時は広大なスナック街だった街並に新しい句読点を打った。

今年の土用・二の丑はムサコの人気やきとん店「豚星」の新業態、うなぎ串の「梅星」へ。
今年の土用・二の丑はムサコの人気やきとん店「豚星」の新業態、うなぎ串の「梅星」へ。

大衆酒場感は近隣のスナック街を借景として、白とナチュラルな木の色で統一されたシンプルな内装と居酒屋ライクなコの字カウンターが同居する店内。壁には、近年のビストロの定番、大きな黒板メニューを配置した。


油と煙だらけの店舗、無骨な親父、黙々と串を平らげる会話なき客たち。すべての飲食業界のマイナス要因が、売り物に変わるもつ焼き業界。そんな世界に鉄槌を打つ、「豚星」の清潔感と好感度の爽やかな革命は口コミで広がり、店は連日超満員の人気店になって行く。


その後、2015年、駅前の再開発で立ち退きになった後、翌年のヴァレンタインデイにはパワーアップして復活。広くなった店内には、再び人の波が絶えなくなる。


「梅星」は、いつのまにか炭焼きのオーソリティになった「豚星」の一方、熊本出身の黒田 (直人)くんがコンパクトな焼き台を携えて開いた小さな鰻串の立ち飲み屋だ。

今年の土用・二の丑はムサコの人気やきとん店「豚星」の新業態、うなぎ串の「梅星」へ。
今年の土用・二の丑はムサコの人気やきとん店「豚星」の新業態、うなぎ串の「梅星」へ。

『美味しんぼ』の舞台にもなった中野「川次郎」、その店主が独立して開いた「味治」、新宿思い出横町の「カブト」、自由が丘「ほさかや」、平和島「あきば」。東京には何軒もの名だたる鰻串の名店がある。


それは、モツの本場だと信じられている九州では、まず出会わないものだ。九州には、豚モツを食べる習慣はないし、鰻串を食べる文化もない。ホルモン鍋も、屋台で出されるサガリも、共に牛。鰻に至っては、蒸籠蒸しなど調理法は変わったとしても、食べるのは身の部分だけだ。


捨てられる豚の内臓や、鰻の各部位を串に打って、ご飯のおかずではなく、酒のつまみ、それもほとんどは甲類焼酎と共に楽しむ。それは、いつの時代にも巨大な労働力を必要とした東京のローカルフードだ。


自らが東京を代表するやきとんの名店で焼き台に立ちながら、休日には「あきば」や「ほさかや」に足を伸ばし、いつかは鰻も焼いてみたいと考えていた黒田くんが細長い夢の砦に立ったのは去年の暮。好調に客足は伸び続け、ムサコの新しい星となり始めていた矢先。ウイルスの季節が訪れる。


そんな中、蒲焼きと白焼きの鰻弁当のテイクアウトを続け、少しずつ営業を再開。「牛太郎」と共にムサコの名店として愛されていた隣の「みやこや」も、ほぼそのままの形で「ばぶ」として再開し、両店はムサコホッピングの新しいランドマークとして活況を呈している。

今年の土用・二の丑はムサコの人気やきとん店「豚星」の新業態、うなぎ串の「梅星」へ。
今年の土用・二の丑はムサコの人気やきとん店「豚星」の新業態、うなぎ串の「梅星」へ。

通常は捨てられている鰻の色々な部位を、時にはニラやゴボウも加えて、丁寧に串打ちし、蒲焼きや白焼き以外は、東京流の蒸しの工程を加えず、直に炭で焼き上げて行く。東京ローカルの懐かしさはそのままに、「梅星」ではこれまでに培ってきた新しい酒場としての魅力も満載だ。


ビールやハイボールのほか、さまざまなサワー、もちろん、鰻串屋の定番「梅割り」もある。

前店で人気を博した、大葉と鷹の爪が鮮やかな「金魚」や、焼酎版ブラッディーメアリーの「辛トマ」。つくだ煮や肝刺し、マカロニなどサイドメニューも豊富だ。


〆には、落語の一場面を想像させる「タレご飯」もある。


誰もが子どもの頃、鰻のタレを白いご飯に思い切りぶっかけて食べたいと思ったことがあるはずだ。しかも、ここでは卵付き。思いついた串でも乗っければ、焼鳥丼ならぬ鰻串丼が出来上がる。

今年の土用・二の丑はムサコの人気やきとん店「豚星」の新業態、うなぎ串の「梅星」へ。
今年の土用・二の丑はムサコの人気やきとん店「豚星」の新業態、うなぎ串の「梅星」へ。

8月最初の日曜日は、土用、二の丑。都内の鰻屋には長蛇の列ができるだろう。しかし、どうせ立つのなら、鰻串の立ち飲みがお勧めだ。協力し合い席さえ確保できれば、そのまま様々な鰻の各部位を楽しむことができる。


まずは「ひと通り」を頼んで、思い思いの酒を楽しみながら土産用の弁当を待つのもいい。酒の酔いが程よく回り始めた頃には、カルシウム(鰻の骨煎餅)や卵焼きも詰め込まれた弁当も出来上がるだろう。


ところで、「食べ合わせ」の代表として知られる鰻と梅干には、実は何の根拠もない濡れ衣であることはご存知だろうか!?脂が乗った鰻に、さっぱりした梅干を合わせると、食が進んでついつい食べ過ぎてしまうから、身体よりむしろ懐にご注意と言うのが真実らしい。


そんな鰻の迷信を逆手にとったチャーミングなネーミングには、ムサコドリームを牽引してきた2人ならではの茶目っ気と自信が溢れている。

もちろん、ここなら好きな数だけいつでもつまめるから、丑の日ならずとも気軽に出かけられる。近隣の名店、自由が丘「ほさかや」との鰻ホッピングだって可能だ。

今年の土用・二の丑はムサコの人気やきとん店「豚星」の新業態、うなぎ串の「梅星」へ。
今年の土用・二の丑はムサコの人気やきとん店「豚星」の新業態、うなぎ串の「梅星」へ。
今年の土用・二の丑はムサコの人気やきとん店「豚星」の新業態、うなぎ串の「梅星」へ。
今年の土用・二の丑はムサコの人気やきとん店「豚星」の新業態、うなぎ串の「梅星」へ。

梅星
東京都品川区小山4-9-1
TEL:03-6421-6359
https://www.instagram.com/butahoshi/