時の哲学者、フランク・ミュラーが、ルネサンス期の天才画家が生み出した光と影が織りなす色彩表現の再現を試みた。自然と向き合う技法を新たな前衛とし、マニュファクチュールの真髄を3本の新作に注ぎ込む。
自然の美の本質を探求した歴史的技法を再解釈
レオナルド・ダ・ヴィンチは、イタリアのルネサンス期を代表する芸術家として知られる。新作「ヴァンガード スリム スフマート」は、レオナルド・ダ・ヴィンチが生み出した独自の絵画手法「スフマート」に着目し、500年の時を超えて再解釈。時計文字盤に応用した。
「スフマート」は、輪郭線を描かず、光と影の自然なぼかしで立体感を表現する。明るさや色彩のわずかな移ろいを重ねることで、かたちがにじみ出す。境界を曖昧にすることで、自然界に存在する美しさを捉えようとしたのである。その手法は美的感性だけでなく、科学、数学、工学など多岐にわたって異彩を発揮したダ・ヴィンチが色彩学の理論に基づき完成したもので、芸術と自然科学との一体化とも言える。
自然に明確な線がないのと同様、時間にも輪郭はない。両者に通底する普遍性は、時の哲学を追求するフランク ミュラーの創作とも呼応するのである。
文字盤は、中心から色彩がなめらかに濃淡を増していき、まるで周囲に光が放たれていくようだ。色の移ろいが途切れることのない時の流れを表現している。同時に、見る角度や光の反射によって印象を変える色の表情は、感情によって長くも短くも感じられる、時の深遠を表す。こうした時の感情ともいえる描写の実現には、伝統的な文字盤装飾の技法に加え、培ってきた独自の技術が余すところなく注がれている。
まずトノー型の文字盤に放射状のヘアラインであるサンレイ装飾を刻む。その上から文字盤の外周にエナメル塗料を吹きつけ、文字盤を回転させ1辺ずつ順番に中心に向かって塗装を繰り返す。手作業によるエナメル塗装は20層にも重ねられ、徐々にグラデーションを生み出す。そして焼成と最終磨きによって、深みとともに移ろう時の表現が完成するのだ。
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曖昧さと精緻のアンビバレントな面白さ
カラーバリエーションはオリーブ、サーモン、グレーを揃える。湖畔を背景に広がる草原、秋の残光が煌めく森の小道、氷雨の映し出す凛とした空気。いずれも彩度を抑えた色彩には、ジュネーブの自然と歴史が織りなす、時の移ろいそのものを表現する。そこには、フランク ミュラーのマニュファクチュールの本丸であるウォッチランドから望むレマン湖の静謐な波紋や、歴史を湛えるジュネーブ旧市街の街並みを彷彿とさせる、叙情豊かな色が吹き込まれているのである。
ぼかしという連続性に自然への理解を深めた画家の炯眼に感嘆すると同時に、そこには曖昧さを纏った精緻な時というアンビバレントな面白さも秘められている。それこそが、時の哲学者ならではの含意なのかもしれない。
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洗練のスタイルに込めたスフマートという前衛
「ヴァンガード スリム スフマート」は、2014年に発表された「ヴァンガード」をベースに、ケース厚を同サイズ比で約3㎜薄く設計した。未来的なスポーティスタイルに対し、繊細な文字盤にふさわしいスマートなエレガンスを備える。薄くなったことでラグレスのケースからストラップにつながるフィット感もより心地よく、シンプルなバーインデックスやスモールセコンドを採用し、モダンクラシックを演出する。
シリーズの特徴であるケースのインサート構造は、側面の意匠として残し、スリットに文字盤やストラップと統一したカラーリングを施す。また通常モデルではクローズドバックが中心であるのに対し、シースルーバックにしているのも特徴のひとつだ。
「ヴァンガード」の名は、アヴァンギャルドを語源に、革新をテーマにする。あえてこのシリーズにスフマートを採用したのも、天才画家の生んだ絵画手法に新たな前衛を見出したからに違いない。そして、スフマートの革新的な解釈は、進むべき方向を指し示す時の羅針盤という「ヴァンガード」本来のメッセージにも添うのである。
フランク ミュラー ウォッチランド東京
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