【アニエスベーのボーダーTシャツ】名品の原点は、ラガーシャツだった

  • 文:小暮昌弘(LOST & FOUND)
  • 写真:宇田川 淳
  • スタイリング:井藤成一
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モデル名は「メンズ 細ボーダー コットン長袖Tシャツ“ Coulos”」。ラガーシャツと同じように、非常に密に編まれたコットン生地を採用。横伸びが少なく、丈夫。着るほどに肌に馴染んでくれる。白と黒を使ったカラーリングが上品でモードなテイストをもたらしてくれる。12×12mmの幅の細ボーダーと60×60mmの太ボーダーが定番として用意されているが、これは前者のタイプで、半袖モデルも人気だ。¥15,400/アニエスベー

デザイナーが1970年代にフランスで出逢ったラガーシャツが、このブランドのボーダーTシャツの始まりとなった。やがてこのTシャツはブランドを象徴するアイコンとなり、上質で上品なフレンチカジュアルの着こなしに欠かせないアイテムとして、女性にも男性にも長く愛され続ける、ブランドを代表する名品となった。

動画連載『大人の名品図鑑』、毎月PenのYouTubeチャンネルで更新中。アニエスべーのボーダーTシャツの魅力をさらに紐解きます。

「大人の名品図鑑」アニエスべー:ボーダーTシャツ編 Podcast

普遍の名品を、その歴史や周辺のカルチャーとともに徹底解説していく『大人の名品図鑑』の音声版。ここでは、動画や記事で紹介できなかったエピソードを中心にトークを展開する。案内人を務めるのは、フリー編集者の小暮昌弘とスタイリストの井藤成一。毎月上旬に公開。

ポッドキャスト版を聴く(Spotify/Apple)

映画『ヌーヴェルヴァーグ』が映し出す、ボーダーTシャツの魅力

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フランスを代表するブランド、アニエスベーが生まれたのは1975年で、すでに50年を超える歴史がある。ブランド名は、デザイナーのアニエス・トゥルブレが、雑誌『ELLE』で編集者として働いていた時に使用した署名が由来。
 

 

2026年にリチャード・リンクレイターが監督した映画『ヌーヴェルヴァーグ』が公開された。この作品は、1950年代のフランスで巻き起こった「新しい波=ヌーヴェルヴァーグ」と呼ばれる映画運動中に誕生した傑作『勝手にしやがれ』(1960年)の製作過程が描かれている。『勝手にしやがれ』を監督したジャン=リュック・ゴダールは、既存のルールに縛られず、自由な発想に基づいたロケーション撮影と即興的な演出を実践し、ヌーヴェルヴァーグを代表する映画作家となり、いまなお世界中の映画作家たちに多大なる影響を与えている。「これは自分にも映画がつくれると信じてくれた人々と、“映画をつくるべきだ”と確信させてくれた人々へのラブレター」だと、映画『ヌーヴェルヴァーグ』を監督したリンクレイターは語る。

 

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ボディの脇に縫い付けられたピスタグにもブランド名が刺繍されていて、洒落ている。ボディなどに使われるのは、ラガーシャツに使われていた丈夫なコットン生地で、白×黒などのモノトーンが定番だが、新色のボーダーTシャツが登場することも少なくない。

 『勝手にしやがれ』でジャン=ポール・ベルモンドとともに主演を務めたのは、ジーン・セバーグ。“セシルカット”と呼ばれるショートカット、アンクル丈のジーンズ、そしてボーダーTシャツを披露、この映画によって一躍世界的なトップ女優の地位を獲得した。『ヌーヴェルヴァーグ』で、ジーン・セバーグを演じたのは、ゾーイ・ドゥイッチ。リンクレイター監督とは『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』(16年)以来のタッグで、ゾーイはセバーグを彷彿とさせるスタイルと演技を見せる。

今回取り上げる名品は、両作品に印象的に登場したボーダーTシャツだ。多くのブランドがボーダーTシャツを手がけているが、その代表としてフランスを代表するアニエスベーのボーダーTシャツを紹介しよう。

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12×12mmの細ボーダーと60×60mmの太ボーダーを比べると、こんなにも太さが違う。いかにもラガーシャツらしいのが太ボーダーで、一枚で着ても存在感がある。細ボーダーは、いろいろなアイテムとマッチしやすい。

ラガーシャツから生まれた、ブランドを象徴する一枚

アニエスベーというブランドが生まれたのは1975年。名品のボーダーTシャツが生まれたのは、創業から2年後の1977年。同ブランドのHPには、フランスでラガーシャツを製造する業者との出会いが書かれている。

「ラガーシャツはボーダーの厚いコットン地を裁断してつくられていますが、アニエスベーは、その生地を特別な色で染め、襟なしのTシャツをつくろうと思いました」

つまりスポーツ用のユニフォームから発想されたのがアニエスベーのボーダーTシャツで、現在でも本物のラガーシャツに近い厚いコットン地で、洗濯しても型崩れしない素材を使って仕立てられている。

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アニエスベーは長年アーティストのサポートを行っており、こちらのモデル名は「アーティストTシャツ “Gilbert & George”」。ボーダーTシャツと並んで人気を集める「アーティストTシャツ」。これはロンドンを拠点に活躍する二人組のアーティスト、ギルバート&ジョージの作品「PHONE」を胸にプリントしたTシャツ。¥18,700/アニエスベー

ブランド誕生前から育まれていた、ボーダーという発想

2024年に出版された『アニエスベー ストーリーズ』(青幻舎)を読むと、実はボーダーTシャツの誕生の前日譚が載っている。デザイナーのアニエス・トゥルブレは、自分のブランドを立ち上げる前の1966年、『ポリー・マグお前は誰だ』という映画のための衣裳の制作を依頼される。この作品は有名ファッションカメラマンとしても知られるウィリアム・クラインが監督、1960年代のパリのモード界を風刺的に描いた意欲作で、モデルが太いボーダー柄のTシャツを着用して登場する。このTシャツこそ、彼女が映画のためにデザインしたものだ。のちにブランドのアイコンとなるボーダー柄のTシャツは、彼女がブランドを立ち上げる以前から温め続けていたアイデアだったのだろう。

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これもアニエスベーの「アーティストTシャツ」の一枚。モデル名は「アーティストTシャツ “JonOne”」。ニューヨークのハーレムで育ったペインターで、グラフィックアーティスト、彫刻家でもあるジョン・ワンの作品をプリントしたTシャツ。彼は1989年にアニエスと出会い、アニエスベーがつくったギャラリーで展示会を行っている。¥18,700/アニエスベー

1980年代、フレンチカジュアルの定番へ

2016年に出版された『アニエスベー スティリスト』(青幻舎)には、「アニエスのとても私的なスタイルがいつしか普通の女性たちのスタイルにはなったのは、1980年代のことだ。(中略)1980年代に彼女がデザインした服のほとんどは、いまでもクローゼットから出して着たくなる……」と書かれている。 

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モデル名は、「アーティストTシャツ “Futura”」。フーチュラ(Futura2000)の作品をプリントしたTシャツ。フーチュラはニューヨーク出身で、グラフィックアーティストとして世界的に知られる。彼がフランスで初めて作品を発表したのは、1989年で、アニエスベーのギャラリー「ギャラリー デュ ジュール」がその場所だった。¥18,700/アニエスベー

藤原ヒロシも魅了された、時代を超える一枚

一枚着こなしに取り入れれば、たちどころにフレンチの香りをもたらす彼女のボーダーTシャツに魅了されたのは、女性だけではない。フランスや日本だけでなく、世界中の男性にも愛用された。日本のストリートファッションを牽引してきた藤原ヒロシもそのひとりだった。前述の『アニエスベー ストーリーズ』には「1986年頃、当時はスケートボード用として着ることが多かった。というのも、海外の雑誌でスケーターたちがボーダーのTシャツを着ているのを見て憧れていたから」と書いている。

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ボーダーTシャツと並ぶアニエスベーのアイコンが「カーディガンプレッション」。HPには「私は毎日のように着ていたスウェットシャツをもっと自由にしたいと思って、大きなハサミで切ってみたのです」とある。彼女の発想で、どこにも売られていない、ボタン留めのカーディガンが完成した。モデル名は「カーディガンプレッション “Nacre”」。¥36,300/アニエスベー

ラガーシャツから生まれたアニエスベーのボーダーTシャツは、フレンチカジュアルを象徴する一枚となり、映画からストリートまで、時代を超えて愛され続けている。

 

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1979年に誕生した「カーディガンプレッション」。当初と同じく、フランス・トロワにある工場でつくられたメイド・イン・フランスのモデルで、これはウィメンズ向け。裾にフランスの国旗を模したピスタグが縫い付けられている。¥29,700/アニエスベー

 

『ヌーヴェルヴァーグ』

全国ロードショー中
© 2025 ARP - Detour Development LLC
配給:AMGエンタテインメント
https://nouvellevague-movie.com

 

アニエスベー

TEL:0120-744-800
https://www.agnesb.co.jp

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