大人の名品図鑑 サマープレッピー編 #2
プレッピーとは、アメリカの名門私立学校=プレパラトリースクール(略してプレップスクール)に通い、有名大学を目指す学生たちのこと。彼らの装いを参考にしたスタイルも“プレッピー”と呼ばれ、これまで多くのデザイナーやブランドの着想源となってきた。今回はこのプレッピースタイルと、その装いに欠かせない名品たちを掘り下げて紹介する。ポットキャスト版を聴く(Spotify/Apple)
ブレザー、ボタンダウンシャツ、ポロシャツ、シェットランドニット――プレッピースタイルに欠かせないこれらの定番アイテムは、1960年代に日本でも流行した“アイビー”と多くの共通点を持つ。しかし、80年代の“プレッピー”で大きく変化したのは「パンツ」だった。
『オフィシャル・プレッピー・ハンドブック』(以下『プレッピー・ハンドブック』)のCHAPTER4では、「プレッピーにふさわしい着こなし」として、パンツの選び方にも詳しく触れている。まずシルエットについては、「テーパードでもフレアでもなく、ストレートに限られます」と断言。そして、プレッピーが選ぶべきパンツの10種類のうち、最初に挙げられているのが「カーキ」———日本で言うところの「チノパン」だ。「カーキは短めの丈で履くのが普通です」と、その着こなし方にまで踏み込んで解説されている。60年代のアイビーブームでは、「コッパン」と呼ばれる綿パンやホワイトジーンズが主流だった。しかしプレッピースタイルにおいては、チノパンが“王道アイテム”として確固たる地位を築いた。
そもそもチノパンの起源は、アメリカ軍の制服用パンツとされている。だが、プレッピーが履いていたチノパンはそれを“ファッション”として昇華したものだった。象徴的なのが、ウディ・アレンが主演・監督した1977年制作の映画『アニー・ホール』(過去記事:ウディ・アレンが映画『アニー・ホール』で着こなした、トラッドな愛用品、チノパン)。彼が劇中で履いていたチノパンは、フロントにプリーツが入り、ウエストにはフラップ付きのコインポケットが付いた、実にクラシックで洒落た仕様。軍用パンツとは一線を画すその仕様は、ラルフ・ローレンによるデザインとも言われている(諸説あり)。
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シップスやビームスも惚れ込んだ、アメリカ製のディテール
今回紹介するバーンストーマーは、まさにこの映画が制作された1977年に創業。まだ「チノパン」という言葉が一般に浸透していなかった時代に、アメリカから輸入したチノパンを分解して型紙を起こし、国内の縫製工場や生地メーカーと連携しながら、アメリカ製品の“味”を再現したブランドだ。やがてシップスやビームスといったセレクトショップとも取引が始まり、日本のプレッピーファッションを支える存在へと成長した。創業当時の仕様を守りながらも進化を続け、近年では海外でのポップアップショップ開催など、グローバルに活動の幅を広げている。
ちなみに、2010年にリサ・バーンバックが著した続編『オフィシャル・プレッピー・ハンドブック True Prep』でも、「ほつれたチノパンは信頼できる友人に等しい」とこのパンツを評している。バーンストーマーのチノパンもまた、長く寄り添ってくれる“相棒”のような存在だ。---fadeinPager---
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