
2026年夏、展覧会が熱い。“一生に一度は見たい”と思うような巨匠たちの作品が関東にいて、味わうことができる。
ゴッホの『夜のカフェテラス』、モネの『睡蓮』…さらに人の心を救うアート家具であるソットサスの作品群まで――。注目の作家の展覧会が目白押しだ。
①『モネ没後100年・開館25周年記念 あたらしい目 ― モネと21世紀のアート』
開催期間:開催中〜2027年4月7日(水)
開催場所:ポーラ美術館

箱根にあるポーラ美術館は、印象派絵画の充実したコレクションで知られる美術館だ。なかでもクロード・モネの油彩画は、1870年代の初期作品から晩年の『睡蓮』の連作に至るまで19点を収蔵し、その質・量ともにアジア随一を誇る。
2027年4月まで開催中の『モネ没後100年・開館25周年記念 あたらしい目 ― モネと21世紀のアート』は、そうしたモネのコレクションを軸に現代美術の作家たちの作品を組み合わせて見せるユニークな展覧会だ。

レセプションのあいさつで、同館学芸課長の岩﨑余帆子は「私たちは今日、モネを歴史上の絵画の巨匠として見ています。しかし本展で改めて考えたいのは、モネがどれほど新しく、ラディカルな目を持っていたかということです」と述べた。
「その目は、没後100年を経た今もなお、私たちに新鮮な問いを投げかけます。本展で、当館のモネのコレクション全19点と、時代や表現方法の異なる国内外の現代作家18組の作品が出会うことで、モネの絵画がいまどのように新しく見えてくるのか。モネの作品を印象派の名画としてだけではなく、今の私たちの感覚を揺さぶる新しい絵画としてご覧いただければ」
モネ展であり、現代美術展でもある
現代作家には、フェリックス・ゴンザレス=トレス、ロニ・ホーン、ピエール・ユイグ、三嶋りつ惠、中谷芙二子、ヴォルフガング・ティルマンスなど、国際的に評価されている作家の名前が並ぶ。さらに、ルーカス・アルーダ、ノエミ・グダル、今坂庸二朗、ダニエル・スティーグマン・マングラネら、日本の美術館では初めて作品を展示する作家も本展に参加している。
モネを軸にした展覧会だが、現代美術の展覧会としても十分に見応えのある内容だ。それらの作品は、展示室だけでなく、アトリウムやロビー、美術館の外に広がる森の遊歩道にも点在し、美術館全体を使って配置されているのも面白い。
『モネ没後100年・開館25周年記念 あたらしい目 ― モネと21世紀のアート』
開催期間:開催中〜2027年4月7日(水)
開催場所:ポーラ美術館
神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
開館時間: 9時〜17時(入館は16時30分まで)
休館日: 12月1日(火)
TEL:0460-84-2111
入館料:大人¥2,200他
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②『大ゴッホ展 夜のカフェテラス』
開催期間:開催中〜2026年8月12日(水)
開催場所:上野の森美術館

ファン・ゴッホの前半生に焦点を当てた『大ゴッホ展 夜のカフェテラス』が、上野の森美術館にて開催されている。74点のすべての出品作は、オランダが誇るクレラー=ミュラー美術館のコレクション。ファン・ゴッホの作品約60点に加え、彼が影響を受けたハーグ派や印象派の作品も並ぶ。画家がいかにして「ゴッホ」になったのか。その問いを解く鍵が、この夏、東京に集まっている。
約20年ぶりの来日、『夜のカフェテラス』の前に立つ

© Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands.
約20年ぶりに来日を果たした『夜のカフェテラス(フォルム広場)』が圧倒的な輝きを放っている。アルルの中心フォルム広場で夜中に描かれた本作は、画家が愛読していたモーパッサンの小説「ベラミ」の冒頭、主人公が目にしたカフェの夜景がモデルとされている。テラスを照らす黄色いガス灯の灯りは、鮮やかなコバルトブルーの夜空に瞬く星々の美しさをいっそう際立たせている。
何度も図版で目にした傑作といえども、リアルな画布の前に立つと気づきは尽きない。思いのほか絵具が厚く盛られたランプの灯りは、人々の集うテラスを煌々と照らし出す。しかし画家の視点はどこか奥まった位置にあるようで、会話すら聞こえてきそうなほど賑やかな光景を描きながら、静かな孤独感がそこはかとなく漂う。「そう、これは黒のない夜の絵だ」との言葉を記した画家の心中を自由に思いながら、絵の前にしばし佇んでみてほしい。
『大ゴッホ展 夜のカフェテラス』
開催期間:開催中〜2026年8月12日(水)
開催場所:上野の森美術館
東京都台東区上野公園1-2
開館時間:9時~17時30分
※金・土・祝日は19時まで。
※入館は閉館の30分前まで
会期中無休
入場料:一般¥2,800(平日) 他
※7月1日からは完全日時指定予約制。チケットの購入や入場方法に関する詳細は、東京展公式サイトをご確認ください。
https://grand-van-gogh-tokyo.com/
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③『エットレ・ソットサス ― 魔法がはじまるとき、デザインは生まれる』
開催期間:開催中〜2026年10月4日(日)
開催場所:アーティゾン美術館

20世紀イタリアを代表する建築家・デザイナーであるエットレ・ソットサス(1917〜2007年)の日本初の大規模回顧展が、東京・京橋のアーティゾン美術館で開かれている。
合理性や機能性を追い求めるのではなく、人間の本質的な感性を揺さぶり、遊び心をかき立てるデザインを手がけたソットサス。初期から晩年までの100点を超える作品を通して、その創作の軌跡を辿ってみたい。
オーストリアに生まれたソットサスは、建築家の父の仕事の都合でイタリア・トリノに移り住み、1939年にトリノ工科大学で建築学の学位を取得した。大戦中は山岳部隊に動員され、ドイツ軍の捕虜となる経験もしている。
戦後はミラノを拠点にデザイナー・建築家としてのキャリアをスタートし、1950年代から60年代にかけてオリベッティ社やポルトロノーヴァ社と協働しながら、数々の優れたデザインを世に送り出していった。
ストライプ模様のサイドボード『モービル』は、ソットサスがポルトロノーヴァ社のためにデザインしたもの。その鮮烈な色彩美とポップな味わいから、早くも彼らしいデザインの個性がにじみ出ている。
一方、オリベッティ社から発売された『ヴァレンタイン』は、デザイン史に残る名作として今なお語り継がれるタイプライターだ。日本では「真っ赤なバケツ」として親しまれつつ、持ち運び可能でおしゃれなタイプライター自体が画期的とされ、大いに人気を集めた。

「人の心を救済する」ためのデザインを
1960年代、実験的なデザインに取り組んだソットサスは、陶器の輪を積み上げた柱のフォルムに着手し、『オダリスク』といったトーテム状の作品を生み出していく。
高さはいずれも2、3メートル。有機的でどこかかわいらしく、一見アート作品のようだが、彼自身は「いくつか並べて建てることで、神殿のような建築ができるのではないか」と述べている。人々の心を救済するための「道具」としてデザインしたと言われている。
「メタファー」と題された写真シリーズにも注目したい。1970年代、都会を離れたソットサスは、スペイン・カタルーニャ地方をはじめ、ギリシャ、アメリカなどを旅し、空想的な「建築」のドローイングを描く。
それらを木や石、ロープにて再現し、写真に撮影したのがこのシリーズだ。写真には「暗闇に入るためのドアのデザイン」や「…それとも玉座が欲しいか?」といった、時に詩的なテキストが添えられ、イメージとともに彼の思索の隠喩として示されている。
『エットレ・ソットサス ― 魔法がはじまるとき、デザインは生まれる』
開催期間:開催中〜2026年10月4日(日)開催場所:アーティゾン美術館
東京都中央区京橋1-7-2
開館時間:10時~18時(毎週金曜日は20時まで)
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(7/20、9/21は開館)、7/21、9/24
入館料:一般¥1,200(ウェブ予約チケット)、¥1,500(窓口販売チケット)、学生無料(要ウェブ予約)
※この料金で同時開催の『瀧口修造』展も鑑賞可能
www.artizon.museum/exhibition_sp/sottsass2026






