【1936年の劇場建築がホテルに】“帝国ホテル 京都”に受け継がれた、アールデコの美学

  • 文:佐藤季代
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庭を望むラウンジ。ソファなどの家具も新素材研究所が手掛け、杉本博司がデザインした松竹図襖絵が伝統芸能の舞台空間を想起させる。

長く日本の迎賓文化を象徴してきた帝国ホテル。2026年3月、その美学を継ぐ国内4拠点目となる「帝国ホテル 京都」がの敷地内に開業した。

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保存活用された南西側の壁面には、既存の外壁タイルを一部再利用した。新規に設けた古美色のポーチや柱など、新旧の設えの対比が際立つ。

舞台となったのは、1936年竣工の劇場建築「会館」。和の様式にアールデコの気配を纏う外観を継承しつつ、フロアごとの床を持たない巨大な劇場空間を解体しつつ再構築。さらにお茶屋様式の北棟を増築し、3つのデザインカテゴリーからなる全55室のホテルへと蘇った。内装設計を担った榊田倫之は「日本古来の素材を用いながら、フランク・ロイド・ライトが手掛けた帝国ホテル2代目本館や弥栄会館が持つ歴史の文脈を引き継ぎました」と語る。

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すだれ越しに祇園の景色を望む北棟には、帝国ホテル初となる畳敷きの客室が登場。桜や神代欅などの多彩な銘木が温もりを添える。

宿泊者を出迎えるラウンジは、保存建築ゆえの階高の制約を逆手に取り、庭へと視線が抜ける水平方向の広がりを生み出した。新素材研究所がデザインした家具や照明にはライト館に見られる後期アールデコの幾何学的モチーフを織り交ぜ、歴史的意匠への応答を図っている。客室や館内各所では、国産の銘木や天然石を基調に、外壁と産地を同じくするや、ライト館と同時期の希少な大谷石などを使用。時を重ねた素材が、空間に独自の深みを与えている。

歴史ある建築の記憶と帝国ホテルの美学が静かに響き合う。京都の地に、またひとつ新たな日本の迎賓空間が誕生した。

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バーにはライト館と同時代の明治・大正期に使用された大谷石を使用。大谷石大使を務める榊田倫之が入手した希少な古材が深みを与える。

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地下プールの壁を覆うのは、瀬戸内海で産出される北木石。岩肌を切り出したような荒々しい質感で、洞窟を思わせる空間をつくり上げた。

 

帝国ホテル 京都

住所:京都府京都市東山区祇園町南側570-289  
TEL:075-531-0111
全55室
料金:プレミア ¥164,500〜
www.imperialhotel.co.jp/kyoto
【設計者】新素材研究所
現代美術作家の杉本博司と、建築家の榊田倫之によって、2008年に設立された建築設計事務所。古代や中世、近世に用いられた素材や技法を研究し、現代における再解釈と再興に取り組む。