いま東京では、店主の価値観や生活感がにじみ出る、“まるで誰かの家のような店”が増えている。今回は、連載「New & in the News」より、人のあたたかな温度に触れる5つの新店を紹介。この春は、肩の力を抜いて過ごせる場所へいきたい。
①ナナゴーフーズ|松陰神社前
弁当の名店「チオベン」で修業を積んだ店主が手掛ける、日常に寄り添う小さな弁当屋。主役となるのは、あきたこまちを主役に据えた、どこか懐かしい“実家の味”を思わせる一箱だ。コーンクリームコロッケや根菜の煮物、旬の野菜の副菜など、揚げる・蒸す・煮るといった調理法を丁寧に重ね、滋味深い味わいに仕上げている。店内には北欧で買い付けた雑貨が点在し、“おもちゃ箱”のような温もりある空間に。料理を選ぶ時間すら楽しく、自然と気持ちがほどけていく。弁当を片手に商店街を歩く、その時間まで含めて心地いい。日常のなかにある、小さなご褒美のような一軒だ。
---fadeinPager---
② ひこうき|尾山台
尾山台の住宅街にひっそりと佇むこの店には、オープンしたばかりにもかかわらずリピーターが絶えない。店内は木の温もりと生活道具に囲まれ、店主の私室のような親密さを感じさせる空間。10代から国内外で経験を積んだ店主が、多様な食文化に共通する“ほっとするおいしさ”をベースに日本の風土・素材の味に添う、どこかの国の食堂に出てきそうなひと皿を提供。日本酒や焼酎を中心に据えた構成もユニークで、食事とともにゆるやかな時間が流れる。本棚に並ぶ愛読書や、カウンター越しの距離感が、訪れる人を自然とリラックスさせる。ここで過ごすひとときは、“外食”というより、誰かの家で食事をしているような感覚に近い。
---fadeinPager---
③理容室ハンサム|笹塚
懐かしさと新しさが交差する、ローカルバーバーの新しいかたち。ヘアメイクアーティストAMANOが手掛けたこの理容室は、“地域に根ざす場所”として設計されている。タカラベルモントの名機「679」に身を預ける時間は、髪を整える行為を小さな非日常へと変えてくれる。店名に冠された“ハンサム”は、外見の美しさだけを指す言葉ではない。AMANOが大切にするのは、内側から滲み出る雰囲気や匂い、そして「ロマン」だ。そんな思想が、シェービングを含めた丁寧な施術や、地域に開かれた料金設定にも表れている。ここは、髪を切る場所でありながら、人が整う場所でもある。
---fadeinPager---
④ CAILO|世田谷
衣と食がゆるやかに交差する、暮らしの延長のような空間だ。1階には惣菜店、2階にはセレクトショップを配し、食とファッションが自然に行き来する“回遊”が心地よい。惣菜は旬の素材を活かした家庭的な味わいで、ワインやマードレとともに楽しめる気軽さも魅力。2階では国内ブランドの服や雑貨、アートが並び、訪れるたびに新しい発見がある。大きな窓から差し込む光や、木材の温もりを活かした設えが、空間全体に穏やかなリズムを生む。ここでは、何かを買う・食べるという目的を超えて、“暮らしを整える時間”そのものが体験になる。
---fadeinPager---
⑤ SUNDAE APART|蔵前
築60年のビルを丸ごとリノベーションした、どこか懐かしくて新しい複合空間。地下から4階まで、それぞれ異なる表情を持ちながら、ゆるやかにつながっている。名物は、やさしい甘さの今川焼きとコーヒー。さらにヴィンテージ雑貨や家具が並び、暮らしに遊び心を添えるアイテムにも出合える。各フロアにはラジオが流れ、音に包まれながら過ごす時間が、自然と肩の力を抜いてくれる。地下で静かにひとり時間を楽しむもよし、上階で街を眺めながらくつろぐもよし。その日の気分で居場所を選べる自由さが、この店の魅力だ。
誰かが丁寧に積み重ねてきたものに触れると、自分の時間の流れも、少しだけやさしくなる。この春は、ふと立ち寄った先で“ただいま”と言いたくなるような場所に出合ってみたい。