「靴と腕時計」Vol.10
スタイルの要となる“靴”と“腕時計”——。両者のベストなマッチングを考える。今回は、大空への挑戦と過酷な大地という異なるフィールドの記憶を宿し、現代のフレンチシックを体現するカルティエとパラブーツを合わせる。
「ビス」と「ステッチ」。実用と装飾が交差する足元と手元
今回のシューズは、フランスが誇る名門シューメーカー、パラブーツの代名詞とも言えるUチップシューズ「シャンボード」だ。 悪天候や険しい道に耐えうる堅牢なつくりが特徴で、革にはワックスがたっぷりと含まれており、悪天候に強い「リスワクシーレザー」が使われる。そして最大の特徴は、アッパーとラバーソールを縫い合わせる「ノルヴェイジャン・ウェルト製法」だ。水の浸入を防ぎ、靴の堅牢性を高めるための製法は、純粋な「機能の必然」でありながら、いまやフレンチカジュアルを象徴する美しいデザインとして愛されている。
この重厚な足元に合わせたいのは、カルティエの「サントス デュモン」ウォッチだ。 1904年、飛行家アルベルト・サントス=デュモンが、飛行中に操縦桿から手を離さずに時間を確認できるよう考案されたオリジナルモデルは、「世界初の実用的な男性用腕時計」として歴史に名を刻んでいる。当時、腕時計といえば女性向けの華やかな装身具と見なされており、男性は懐中時計をポケットに忍ばせるのが絶対的な常識だった。 そんな時代に、純粋な「飛行の実用」から誕生したこの時計は、ベゼルに「ビス(ねじ)」のモチーフをあしらっている。
当時の最先端技術であったエッフェル塔や航空機のパーツを繋ぐリベットから着想を得たこの意匠は、ネジを隠して表面を装飾することが常識だった懐中時計全盛の当時において、極めて前衛的なアプローチであった。本来は隠すべき無骨な工業的要素を、あえてエレガントな装飾へと昇華させたのである。このエクストララージモデルは、自社製の手巻きムーブメント「Cal.430 MC」を搭載。ステンレススチールのケースに18Kイエローゴールドのベゼルを合わせたツートーンの輝きが、薄く繊細なシルエットに絶対的な気品を与えている。
悪天候を凌ぐ必然から生まれたパラブーツの「製法」と、大空への憧憬を意匠化したカルティエの「ビスモチーフ」。アプローチは異なれど、共にフランス発のブランドとして、モノづくりの背景にあるロマンを可視化している。そして、ボリュームのある足元に、あえて極薄の手巻き時計を添える。このコントラストこそが、真に洗練された大人のスタイルだ。
「サントス デュモン」ウォッチ エクストララージモデル/手巻き、SS&18KYGケース、ケースサイズ 46.6㎜×33.9㎜、パワーリザーブ約38時間、アリゲーターストラップ、日常生活防水。¥1,755,600
