『THE BLACK ○ ALBUM』をいち早く試聴した音楽ジャーナリスト・高橋芳朗。ブラックミュージックに造詣が深い彼の視点から、ドリカムが音楽シーンで果たした役割と、最新アルバムから読み解ける“現在地”を解説してもらう。
DREAMS COME TRUEが9年ぶりとなる待望の最新アルバム『THE BLACK ○ ALBUM』をリリースする。J-POP が新たな地平に立ついまだからこそ、ドリカムが鳴らす鐘に耳を澄ませ、その“引力”を存分に語り合おう。
『いまこそ、ドリカム!』
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日本流ポップスへとローカライズされた、ブラックミュージック
編集者・音楽ジャーナリストとして、洋邦問わず長年にわたり音楽と向き合ってきた高橋芳朗は、ドリカムの音楽との出会いについてこのように記憶しているそうだ。
「ブラックミュージックを聴きあさっている時に出会った、中村さん選曲によるカリンバプロダクションのコンピ盤『DANCE WITH KALIMBA』が入り口です。それを機に、ソウル、ファンク、ディスコ、フュージョンなどブラックミュージックの語法が生々しく表出したドリカムの楽曲群に強く魅了されました。『APPROACH』のジャネット・ジャクソン、『Eyes to me』のバリー・ホワイト、『眼鏡越しの空』のパティ・オースティン、『決戦は金曜日』のシェリル・リン。いずれも引用を超え、J-POPの文脈に優雅に溶かし込んだ見事なオマージュでした」
ブラックミュージック愛好家の視点からドリカムに着目していた高橋は、バンドがJ-POPシーンに及ぼした影響をこう捉える。
「ヒップホップの台頭によりポップスの重心がブラックミュージックへと大きく傾いた90年代、ドリカムはその語法を日本の大衆音楽に適切に翻訳して定着させたパイオニアだと考えています。同様の功績は久保田利伸さんからも見出せますが、久保田さんが当時のブラックミュージックの動向を踏まえてストリート性を強烈に打ち出していたのに対し、ドリカムはあくまで国民的ポップバンドの看板を堅持しつつ、その奥行きとしてブラックミュージックを呼吸させる。その二重構造がユニークでした。ブラックミュージックの楽しさや身体性を深い理解のもと、ポップスへ自然体でローカライズする。黒人音楽の魂を宿しつつ徹頭徹尾ポップであり続けた、その均衡感こそ彼らの強みでしょう」
ブラックミュージックの楽しさの、大衆への翻訳者。ドリカムの歩みをそんなふうに評価する高橋は、新アルバムをこう紐解いた。
「異なるコンセプトで構築された楽曲群であることは明確ですが、全体としての物語性がきわめて高い。『YES AND NO』『G』『東京 magic hour』のファンク三連打が作品の中で絶妙な色彩のコントラストとして機能していて、アルバム全体を祝祭的な“テーマパーク空間”へと押し上げています。曲間の呼吸、曲順の流れ、楽曲同士の継ぎ目に至るまでが高度に設計されているせいか、プレイリスト的消費に回収されない、アルバムというアートフォームの醍醐味を真正面から提示している印象です。近年では、『アーティストの精神性が最も濃縮されるのはアルバムである』という認識も強まっています。グラミー賞が依然としてアルバムの芸術性を重視し、ビヨンセ、ケンドリック・ラマー、テイラー・スウィフトらがコンセプチュアルな作品をリリースして評価を高めている事実がその裏付けになるでしょう」
かねてドリカムが示してきた音楽性にある種のシンパシーを抱いてきた高橋は、これからの彼らに期待していることがあるそうだ。
「長らく抱いていた願いなのですが、世界的なディスコ/シティポップのリバイバルに対して、ドリカムがどう応答するかを示す作品をぜひ、聴いてみたい。今回の新作の中では、『東京 magic hour』がその期待を一段と押し上げるような手応えを持つ曲でした。ブルーノ・マーズが往年のディスコポップへのオマージュで全米チャートの首位を獲得している現代において、ドリカムが本来の強みを最も輝かせられる局面はむしろいまではないか、そう思わずにいられません」
読者に薦めたい、ドリカム作品
『DANCE WITH KALIMBA』
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