いま注目すべき腕時計をデザインの視点から切る、雑誌『Pen』で好評連載中の「並木教授の腕時計デザイン講義」。今回のテーマは「シルバーカラーのワントーン」。いまや腕時計素材の主役の座、纏うだけでこなれ感を演出する“シルバーカラーのワントーンウォッチ”に注目！

無彩色のワントーンは、それだけでクールな印象に映える。ブラック、グレー、そしてシルバー。明度の差こそあれ色彩を差し挟まない潔さは、逆にノーブルな品のよささえも醸し出す。ファッションでもワントーンコーデは“こなれ感”を出すテクニックとして定石だが、無彩色だからこそ、色の微差でグラデーションをつくったり、素材や質感の違いで奥行きを出すのがキモとなってくる。

こと時計に関しては、いまからちょうど１００年前、１９２５年のパリ万博（現代装飾美術・産業美術国際博覧会）に端を発するアールデコの隆盛とともに、白色金属が流行する。富の象徴であったイエローゴールドに代わり、プラチナ、ホワイトゴールド、シルバーが主役の座へと躍り出たのである。その後、世界恐慌を経て、ステンレス・スチールが腕時計の素材として広まっていき、ロレックスの「オイスター パーペチュアル」の発明以降、ブレスレットも徐々に普及していくのである。

そして現在、ホワイトゴールドやステンレス・スチールを用いたシルバーカラーのワントーンウォッチは、クールで洗練された印象を演出するとともに、その“仕上げ”に各ブランドの美学を映す。ダイヤルはもちろん、ケースやブレスレットに施したサテン、ポリッシュ、ヘアライン、サンブラッシュなどの多彩な仕上げは、立体的な造形美と奥行きのある表情を腕に宿すのだ。それはつまり、腕時計ひとつでワントーンコーデのような“こなれ感”を生んでくれるのである。

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１．PIAGET（ピアジェ）
ピアジェ ポロ 79 ウォッチ

ケースとブレスレットは、ロジウム加工を施した18Kホワイトゴールド製。1979年に登場したイエローゴールド製ブレスレット一体型スポーツウォッチを、現代的な解釈で蘇らせた。オリジナルのデザインコードを受け継ぎ、かつてクオーツだったムーブメントは自社製自動巻き「Cal.1200P1」に刷新。ジュエラーとしても名を馳せるブランドの美意識を象徴する一本だ。

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２．LONGINES（ロンジン）
コンクエスト

レトロモダンなテイストを巧みに織り込み、クサビ型のアプライドインデックスの下に潜り込むように、同心円を束ねたサークル装飾で外縁を切り替えた。シルバーカラーのダイヤルは、放射線状のサンレイ仕上げが入射光に鮮やかなフレアを返し、モノトーンにエレガントなスパイスを添える。誕生当時のDNAを受け継ぐ70年を超えるロングセラーコレクションに、無彩色の美学が息づく。

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３．BELL & ROSS（ベル＆ロス）
BR-05 36mm グレー スティール

ポリッシュとサテン仕上げが交互に施されたブレスレット一体型ケースに、光沢のあるサンレイ仕上げのダイヤルを合わせた。アプライドの数字とバーインデックス、時針と分針には白色のスーパールミノバ X1 （緑色発光）を充填。ケース四隅の丸みを帯びたラインやインデックスのフォントが、クールな硬質さの中にやわらかな表情を与えている。36㎜サイズは都会的な軽やかさをたたえた新定番。