【100種の植栽ホテル】人形町の“路地裏”から着想した建築「SOIL Nihonbashi Hotel」

  • 文:佐藤季代
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緑を纏う9層の建物が、人形町の風景に自然と溶け込む。客室は5タイプ・14室。屋上には季節の移ろいを感じるファームガーデンが広がる。photo: Kyouhei Yamamoto

下町の風情が色濃く残る東京・日本橋人形町。大通りから入った路地裏に、2025年9月、「SOIL Nihonbashi Hotel(ソイル日本橋ホテル)」が誕生した。徒歩圏内には、運営を手掛けるステイプルによるベーカリーカフェなどが点在し、滞在を起点に街巡りを楽しめる。

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ホテルの1階にはピッツェリア「Pizza Tane」が入居。構造の支持部材をあえて見せ、プランターを置いたり、鉢植えを吊るスペースとして活用。photo: Masaki Hamada

外装を中心に設計を主導したのは、〝自然と建築〟をテーマに活動する武田清明。住民同士が鉢植えを持ち寄り、株分けをしながら植物を育てる昔ながらの〝路地裏園芸〟にヒントを得て設計した。「人形町の園芸カルチャーを纏わせながら建物を積層し、地域とのつながりが感じられるこの町らしい風景を表現しました」と武田は語る。外壁を緩やかに湾曲させて、その隙間に近隣から株分けされた約100種類の植物を中心に植栽を構成した。内外に用いられたレンガや外壁の赤茶の金属板とともに、多様な緑が季節ごとに表情を変えながら、通りにやわらかな彩りをもたらしている。

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最上階の客室「パークビューロフト」。植物やレンガ、布など外観と共通する要素が用いられ、室内にも路地裏の空気がやわらかく流れ込む。photo: Masaki Hamada

内装を主体に設計を手掛けたステイプル スタジオの川口貴之が「人形町の風景をそのまま室内に引き込みました」と語るように、床の高さに変化を持たせ、外構と共通のレンガや天井に掛けられて風にゆれる布が、室内に路地裏の雰囲気を漂わせている。大開口の窓越しには、看板や提灯など近隣の風景が映り込み、街の一部に泊まるような感覚をもたらす。1階には宿泊者以外も立ち寄れるピッツェリアを併設。地域に開かれた建築が、人と人、都市と自然をつなぐ拠点となっている。

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客室にはヴィンテージのカセットプレーヤーを設置。カセットテープはプロジェクトに関わる地域の人々から“株分け”のように提供された。photo: Masaki Hamada

 

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ピッツェリアには、周囲の景色を取り入れる大開口が設けられた。開放すれば外構の縁側を通し、街とシームレスにつながることができる。photo: Kyouhei Yamamoto

SOIL Nihonbashi Hotel

住所:東京都中央区日本橋人形町3-2-4
TEL:03-6231-0945
全14室
料金:スタジオダブル¥27,200〜
https://soilis.co/nihonbashi
【設計者】武田清明建築設計事務所 ステイプル スタジオ
武田清明設計事務所と、本ホテルの開発・運営を手掛けるステイプルのデザイン部門であるステイプル スタジオが共同で設計・デザインを行った。