2025年、IWCシャフハウゼンの「インヂュニア」コレクションがまたひとつ進化を遂げた。セラミックやゴールドといった新素材の採用から、パーペチュアルカレンダーの搭載に至るまで、その拡充は実に多彩だ。今回、その新生「インヂュニア」を纏ったのは俳優・滝藤賢一。卓越した演技力で幅広い役柄を演じてきた彼が、個性の異なる3本の「インヂュニア」を身に着け、それぞれの魅力を体感する。
伝説的ウォッチが新たなステージへ
インヂュニア・オートマティック 42/ブラックセラミックを使用した2025年の新作。自動巻き、ブラックセラミックケース&ブレスレット、ケース径42㎜、パワーリザーブ約60時間、シースルーバック、10気圧防水。¥3,080,000
1950年代、エンジニアたちが働く環境は機械式時計にとって理想的ではなかった。強力な電力や磁石が生み出す磁気は、ムーブメントのパーツを磁化させ、精度に悪影響を及ぼすからだ。そこでIWCは既にパイロットウォッチで確立していた耐磁技術を進化させるかたちで、1955年に耐磁ウォッチ「インヂュニア」(ドイツ語で「エンジニア」の意)を発表する。
この時計が大きく飛躍を遂げたのは、天才ウォッチデザイナーとして知られるジェラルド・ジェンタが手掛けた76年製の「インヂュニアSL」だ。よりスポーティに進化した「インヂュニア」だったが、耐磁のために軟鉄製のインナーケースを収めるという制約があったため、かのジェンタをしても、直径は40㎜、ケース厚は12㎜という、かなり大きなサイズだった。70年代は使用できるムーブメントに制約があったため、ジェンタの理想がかなったとは言い難かったのだ。
それから半世紀以上を経て、 現代の技術を駆使し、ジェンタのデザインを再構築したモデルをつくろうという計画がはじまった。そして2023年に現行の「インヂュニア・オートマティック 40」が誕生する。優れた耐磁性能ながらケースは以前よりも薄型化され、全体的に洗練されたルックスとなったこのモデルは、デビューするや熱狂的に迎えられた。
優れた柱ができれば、次はバリエーションの拡充だ。2025年に発表された「インヂュニア・オートマティック 42」は、新たにセラミックを用いた。
IWCは80年代からセラミックをケース素材として使用し、カラーセラミックや発光セラミック、チタンとセラミックのハイブリッド素材である独自の「セラタニウム」まで、素材開発に注力してきた背景がある。「インヂュニア」はその名の通り、IWCのエンジニアリング(=工学)の力が凝縮されたコレクションと言えるだろう。
セラミックは軽くて装着感に優れ、傷つきにくく、オールブラックで腕に精悍な雰囲気が漂う。現代のニーズを取り入れ、ライフスタイルに寄り添う新しい「インヂュニア」に仕上がっている。
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日常使いできる、スポーティなパーペチュアルカレンダー
「子どもを公園に連れて行く時とかに使ってもいいかも。こういう時計を普段使いするって、かっこいいよね」 衣装はすべて私物
IWCが得意とする永久カレンダー機構を搭載する、「インヂュニア・パーペチュアル・カレンダー 41」も注目モデルだ。
1985年、IWCの天才時計師クルト・クラウスが手掛けた「ダ・ヴィンチ・パーペチュアル・カレンダー」は、リューズ操作だけで日付・曜日・月・年・ムーンフェイズを調整できる革新性で、IWCをコンプリケーションの雄へと押し上げた。
その系譜は進化を続け、昨年の「ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー」では400年ごとに1回転する歯車を組み込むことで、グレゴリオ暦の複雑な閏年規則に対応できるようになり、少なくとも西暦3999年までは正確に閏年を計算できるまでに進化。IWCのエンジニアリングは、複雑機構の分野でも発揮されている。
永久カレンダーは多くのパーツを使用する複雑機構のため、ナーバスな取り扱いを要する。そのためドレスウォッチに搭載するのがセオリーで、アクティブな使い方をするスポーティなモデルには搭載されてこなかった。しかしクルト・クラウスが開発した永久カレンダー機構は、前述の通り操作性に優れ、ハイビート化で耐衝撃性を確保。さらに強いトルクで大ぶりの針も力強く駆動できる。
既にパイロット・ウォッチで実用性を証明してきたが、ついに「インヂュニア」にもこの機構が搭載されたのだ。
インヂュニア・パーペチュアル・カレンダー 41/リューズのみで、すべてのカレンダーを操作できる利便性も魅力。自動巻き、SSケース&ブレスレット、ケース径41.6㎜、パワーリザーブ約60時間、シースルーバック、10気圧防水。¥5,852,000
「インヂュニア・パーペチュアル・カレンダー 41」は複雑機構でありながら、従来モデルの40㎜に+1.6㎜というサイズ感に収めている。ケース厚は13.3㎜だが、ムーブメントがセンターローター式で防水が10気圧であることも考えると、十分に許容範囲だろう。
ダイヤルの中には3つのインダイヤルをバランスよく配置。9時位置の曜日表示の中に閏年表示を小窓で設けることで、視認性を確保しつつも機能性や実用性は失わない。
気に入って手に入れた腕時計であれば、ボックスの中にしまい込まず、さまざまなシーンで使ってあげたい。それが複雑機構であったとしてもだ。スポーティな「インヂュニア」と実用的に進化した永久カレンダーの組み合わせであれば、その気持ちに応えてくれるだろう。これもIWCだからこそ可能な時計の楽しみ方だ。
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ラグジュアリーなフルゴールドモデル
もともとはエンジニアのためのツールウォッチとして誕生した「インヂュニア」。しかしジェラルド・ジェンタが「インヂュニアSL」で美しい魔法をかけた結果、華やかで色気があり、ライフスタイルのひとつとして楽しむための腕時計=ラグジュアリースポーツウォッチとして人気を集めるようになる。
となれば、新しいバリエーションとして、もっとラグジュアリーなモデルも欲しくなる。定番サイズである「インヂュニア・オートマティック40」に新しく加わったゴールドモデルは、コレクションとしては初の試み。質実剛健を旨とする、IWCの中でも異色のラグジュアリーウォッチだ。
インヂュニア・オートマティック 40/従来の40㎜サイズにフルゴールドモデルが加わった。自動巻き、18KRGケース&ブレスレット、ケース径40㎜、パワーリザーブ約120時間、シースルーバック、10気圧防水。¥7,359,000
ジェンタが好んだ、ケースを薄くデザインする一方で、ベゼルやケースサイド、ブレスレットのエッジを斜めに落としてポリッシュで仕上げ、メリハリのある輝きを引き出すデザイン様式は、美しく輝くゴールド素材との相性もよい。赤みを感じるレッドゴールドにブラックダイヤルを組み合わせることで、ぐっと締まった印象になり、華やかな色気を纏う。
現代の「インヂュニア」は、ユーザーのライフスタイルを彩るもの。スーツにもカジュアルにも、ビジネスにもオフの時間にも似合うのが魅力だ。優れた機能性と歴史あるデザインに、ゴールドのケースとブレスレットというラグジュアリーな魅力が加わることで、「インヂュニア」はさらに幅広いシーン、幅広いニーズに応えてくれることだろう。
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IWCのブレない姿勢が、自分の指標となる
私服も交えた自身のスタイルで、3モデルを着けこなした滝藤。今回の撮影を通して「インヂュニア」に対してどのような印象を抱いたのか?
「時計には同世代感を求めます。そのほうが、愛着が湧きやすいでしょ。僕は1976年生まれなので、現在のIWC『インヂュニア・オートマティック』のルーツとなる、76年の『インヂュニアSL』に引かれます。この時計は時代を語るもの。そんな傑作が50年以上経って、いまこうやって身に着けることができるのは嬉しいことです。当時は加工精度も高くないでしょうし、工夫を重ねて時計をつくっていたわけですよね。そこから技術を進化させ、いまにたどり着いた。最新の『インヂュニア』を見たら、ジェンタさんも喜ぶでしょうね」
滝藤と言えばファッション好きとしても知られ、特に柄物やビビッドなカラーのものも好む。そんな彼は「インヂュニア」のシンプルな機能美をどう評価するのか?
「堅実で、とても真面目で飽きのこないデザインですよね。昔のモデルと比較してもブレていないし、流行に流されていない。すごく好感が持てますよね。現代の腕時計のデザインは、もっと自由じゃないですか。でも『インヂュニア』は、機能や性能といった本質の部分を追求している。控えめなのに存在感があるし、武骨なのに洗練されている。それって素直に素晴らしいことですよね」
それは、腕時計を着用した感触からも感じる。
「どのモデルも腕に馴染むんです。セラミックモデルは軽いし、ゴールドモデルは重いけど、どちらも腕乗りがいいので違和感がない。IWCはマニュファクチュールなので、全体の設計まで細かくこだわれる。だから手首の上の感触にさえも、自社の哲学や独創性が感じられるのでしょう」
「改めてダイヤルを眺めて感じたのですが、見る角度によって表情が変わるんですよね。こういった派手じゃないけど、こだわりを感じさせる部分は、自分が俳優をやっていく上で見習わないといけないところでもあります。派手に主張するのは簡単なんです。そうではなくて、存在で勝負するのが理想。それって言い換えると、"究極の普通"を目指すっていうことなのかもしれません。普通なことだって突き詰めれば、それはもう普通ではないのですから」
滝藤は理想を目指すために、真面目さや謙虚さは徹底的に意識してきたという。そしていま、それが間違っていなかったことがわかる。
「自分が出ている映画が、何十年、何百年か経ったあとに、凄いなって思ってもらえると嬉しい。そういう作品に出会いたいし、そういう俳優になりたいですよね。そのためには、いまの結果だけを追うのではなく、10年、20年先に勝負できるなにかをしっかり突き詰めておかないといけない。IWCは150年以上も前から、“究極の普通”という姿勢を貫き、そして成功している。僕はすぐ影響受けちゃうから、IWCのブレない姿勢は自分にとっても励みになります。迷いがちな弱気な気持ちに活を入れてくれるのがIWC。そこを信じて、ともに生きていくぞと思わせてくれる時計なんです」
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動画版を見る
IWCシャフハウゼン
0120-05-1868
www.iwc.com/jp/ja/home.html
