日本一の湧出量を誇り、「別府八湯」とも言われるように各地で湯けむりが上がる大分県・別府市。そんな全国屈指の温泉地である別府でひと際存在感を放つのが「ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパ」だ。別府のまちを見渡せる“雲の上のホテル”とも称されるラグジュアリーリゾートに、豊後国として栄えた大分の豊かな食文化をいまに伝える鮨「豊後前 霧翠」が誕生した。

日本一の温泉郷で、非日常のリトリートを味わうお籠もりステイ
イギリスを拠点とする世界的なホテルグループ、IHGホテルズ&リゾーツが擁する「インターコンチネンタル」ブランドで、世界で初めて温泉を構えたのが、「ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパ」だ。2019年8月に別府湾を見渡せる明礬(みょうばん)地区の高台に誕生して以来、多くのゲストを非日常の世界へといざなってきた。
日本一の源泉数と湧出量を誇る大分県。なかでも、市内のほぼ全域に温泉施設が点在する別府は、大型ホテルから地域に密着した共同浴場まで幅広くあり、公衆浴場だけでも150以上の施設があるという日本随一の温泉郷だ。「別府八湯」と呼ばれる市内にある8つの代表的温泉地(浜脇温泉、別府温泉、観海寺温泉、堀田温泉、明礬温泉、鉄輪温泉、柴石温泉、亀川温泉)は、それぞれ泉質が異なるのも大きな特徴。ひとつの市内でこれだけさまざまに異なる泉質の温泉を楽しめる地域は他にないという。


大分空港からクルマで走ること約50分。「ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパ」に到着してまず目を引くのが、大分の県産材である「日田杉」や別府で採れる「別府石」を用いたクルマ寄せやエントランスだ。建材には、地産地消を意識し、地元の材料を積極的に活用したという。
館内に足を踏み入れると、吹き抜けの開放的なロビーが出迎える。天井までとった大開口の窓からは、眩いほどの光が差し込み、眼下に広がる絶景に心奪われることだろう。ロビーには、アメリカのフィラデルフィア美術館などにも作品が所蔵される竹藝家・中臣一(なかとみ はじめ)のバンブーアートをはじめ、地元の特産品でもある竹材を使用したソファや別府石の壁など、随所に“別府らしさ”が光る。館内のインテリアデザインは橋本夕紀夫デザインスタジオが手掛けた。
全89室からなる客室は、すべてにテラスが設けられており、別府湾や鶴見岳、扇山、湯けむりが立ち上る別府市内の景色など、時間を忘れて見惚れてしまうほど。スイートとクラブインターコンチネンタルに宿泊するゲストは、クラブラウンジが使用でき、チェックインを兼ねたアフターヌーンティーから、イブニングカクテル、ナイトキャップ、翌日の朝食まで、ワンランク上の滞在を叶えてくれる。



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露天風呂からインフィニティプール、レストランまで、館内のいたるところで絶景に出会える

日本屈指の温泉郷にあるホテルとして、別府石の巨石と杉ルーバー製の傘が印象的な野趣あふれる露天風呂や、日替わりで楽しめる檜と石造りの2種の内湯のほか、1時間単位の貸切で使える予約制の家族風呂、スイートやクラブインターコンチネンタルの客室に備えたテラスの露天風呂といった、別府ならではの源泉掛け流しの温泉を満喫できる多種多様な施設に加え、インフィニティプールやオールデイダイニングのレストランからも、刻一刻と変わる景色を堪能できるのが「ANAインターコンチネンタル別府」の醍醐味。露天風呂から眺める、朝焼けに染まる別府湾はまた格別だ。
大浴場の温泉は、露天風呂と、檜と石造りの2種の内湯を用意。目玉となる露天風呂には、30年以上寝かせて色を落ち着かせた別府石の巨石群を使用。自然に付いた苔や草木をあえて残すことで、あたかも昔からそこにあったかのような野趣あふれる風情を目指したという。泉質は保温・保湿効果が高く湯冷めしにくいことから「温まりの湯」とも呼ばれるナトリウム塩化物泉で、ほんのりとぬめりけがあり、肌がしっとりと潤う感覚を味わえる。時間制で男女入れ替えとなるため、ぜひ朝と夜の二度堪能してほしい。
ラグジュアリーホテルでは珍しい試みだが、部屋から温泉まで浴衣で行けるのは温泉街の別府ならでは。ホテルオリジナルの浴衣は、江戸時代から続く大分の老舗染物屋・太田旗店がデザインしたもので、椎茸や関サバ、海、竹などなど、別府の自然や名産品をグラフィックで表現した。


また、温泉と並んでこのホテルのアイコンとなっているのが、別府湾の水平線と一体化するように設計されたインフィニティプールだ。遮るものがなく、まるで宙に浮かんでいるかのような錯覚を覚える。サンベッドでくつろぎながら、シャンパンやカクテルをいただけるほか、温水のジェットバスも完備しているので、非日常的なリゾート気分を存分に味わえるはずだ。プールに浸りながら、サンセットに染まる湯けむり混じりの街並みを望めば、心まで軽くなって癒やされるだろう。夜9時まで開放しているので、美しい夜景も見ものだ。
温泉やプールで汗を流したら、部屋に戻る前にライブラリーに寄ってひと息つきたい。ブックディレクターの幅允考率いるBACH(バッハ)がセレクトした、別府や温泉文化のほか、日本の伝統文化にまつわる良書が厳選されて並ぶ。温泉×読書なんて、まさにお籠もりステイに欠かせない組み合わせと言えるだろう。


昼と夜で異なる表情を見せるインフィニティプール。夕暮れが近づくにつれ、鶴見岳や扇山の稜線が茜色に染まるマジックアワーは必見。
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大分の食文化の豊かさを感じる、“豊後前”の鮨と日本酒&ワインのペアリング

開業から6年を迎えた今年の6月1日に新たにオープンしたのが、鮨会席をいただける「豊後前 霧翠」。江戸前ならぬ“豊後前”と名付けれられた通り、変化に富む海岸地形である豊後国・大分で水揚げされた四季折々の新鮮な魚介類をはじめ、地の食材などをふんだんに使った鮨の会席を提供する。
竹や石などの別府にまつわる自然素材をあしらった店内は、カウンター8席、個室1室という、一人ひとりのゲストに向き合ったきめ細かなサービスが行き届く落ち着いた空間。店名は、明礬温泉や鉄輪温泉など周囲で立ち昇る湯けむり、鶴見岳や別府湾が生み出す「霧」、そして艶やかに輝く竹や山々の「翠(みどり)」に由来する。
腕を振るうのは、大阪、京都、兵庫など関西を中心に日本料理店などで料理長を歴任してきた三好博幸。カナダ日本領事館にて公邸料理人兼料理長として3年間赴任した経験や、アメリカのポートランドで料理長を務めたこともあるという。

メニューは四季に合わせた「鮨会席」のおまかせコースで、前菜、鮨(3貫)、御椀、向附、進肴(しいざかな)、鮨、留椀、水物という構成。特筆すべきは、前菜に続いて出された鮨3貫。大分空港から別府までの道の途中にある日出(ひじ)で獲れた「城下かれい」は、肉厚で弾力ある食感で上品な甘みが口いっぱいに広がる。臭みがなく新鮮な「城下かれい」は、ここ別府だからこそ味わえる逸品だ。続いて、大分の名産として名高い、別府の隣町・大分市の佐賀関で水揚げされた関あじ。そして、赤酢のシャリと合わせた長崎産の天然鮪のとろ。
わさびは大分県日田産を使用し、ネタに合わせてシャリも変更する。いずれも大分では、握りのネタはやや厚みを持たせるのが一般的だという。前菜後の提供で、序盤で非常に満足感を得られるからこそ、その後のコースもゆっくりと時間をかけて味わえる。
その後は、鮑を煮付けた向附、椀物、“豊後揚げ”と称した太刀魚のアスパラ巻きの進肴と続き、真打ちの鮨へ。店名を冠した「むすい」は同店のスペシャリテで、大分の郷土料理「りゅうきゅう」に着想を得たひと品。「りゅうきゅう」とは、ブリやアジ、サバなど、その時期にとれる旬の魚を醤油、酒、みりん、ごま、生姜でつくるタレと和えていただく、大分の代表的な郷土料理だ。


大分の土地の恵みをより感じるならぜひ試してほしいのが、その日の食材や料理に合わせ、ワインと日本酒などを合わせてくれる9種の 「ペアリングコース」。シャンパーニュに始まり、地元大分の銘酒や、ほどよい酸味が白身魚と好相性なオレンジワイン、ブルゴーニュのマルサネで気鋭の造り手として近年世界で注目を集める「ドメーヌ・コワイヨ」といった、鮨会席に合うこだわりのワインをセレクト。
特に日本酒に関しては、ソムリエ資格を持つ杜氏がワイン酵母で仕込んだ日本酒「花笑み 特別純米 ヴァン ルベール」や、1925年に大分で開発され一度は姿を消した酒米「大分三井」を100%使用した「豊潤 純米大吟醸 大分三井」、1804年創業の老舗蔵元であり大分の清酒で唯一の女性杜氏・井上百合が手掛ける「百合仕込み」といった、大分ならではなの厳選したラインアップ。料飲部長でシェフソムリエの笠間修が料理長と相談しながら、感動の一杯を届けてくれる。
「ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパ」は、日本一の温泉郷・別府が誇る豊かな湯の文化と食文化を味わえる、唯一無二のラグジュアリーホテルと言えるだろう。ここでしか味わえないひとときがある。

ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパ
住所:大分県別府市大字鉄輪499-18
TEL:0977-66-1000
https://anaicbeppu.com