次なる「予約の取れない店」はここ!? 名店で修業を重ねた鮨職人が満を持して独立、「みつい」で味わう口福のひと時

  • 文:Pen編集部
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和食からフレンチまで多くの人気店が軒を連ね、東京屈指の美食の街として知られる麻布十番に、注目の新店がオープンした。ミシュラン三つ星も獲得する銀座の名店『青空(はるたか)』で研鑽を重ね、西麻布『鮨祥』で店主を務めた三井祥が独立し腕を振るう「みつい」だ。

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「魚の目利きと魚体を見極めた仕事」が鮨職人にとっては必要不可欠と考える店主の三井祥。同じ魚でも個体によってその個性は大きく異なるため、ていねいな仕込みを心掛けているという。

5月1日に麻布十番に誕生した「みつい」は、カウンター9席、個室1部屋(カウンター4席)からなり、コースは27,500円のおまかせのみ。既に6月も予約でほぼ埋まっているという注目の新店だ。

店主を務める鮨職人の三井祥は、幼い頃から日本の伝統的な食文化に魅了され、高校卒業後に地元・長野から上京。新宿の「ヒルトン東京」で和食を学びながら、ふぐ調理師免許も取得した。日々の仕事に加え、鮨の勉強のためにと名店に通う中で衝撃を受けたのが、銀座の「青空」だったという。高橋青空の握る鮨に惚れ込み、弟子入りを直訴、その後で8年半にわたって「青空」で心技を磨くことに。そして、独立を視野に入れながら就いた西麻布の「鮨祥」では付け場を務め上げ、多くの食通を唸らせてきた。そんな三井が満を持して独立し開店したのが、自身の名を冠した「みつい」だ。4月からのプレオープンを経て、5月1日にグランドオープンを迎えた。

店主の三井を支えるのが、伴侶であり、朗らかな笑顔でゲストを迎える女将の美紀。SAKE DIPLOMAの資格も有する店主とともに、女将の出身地である沖縄ならではの泡盛やかめ出し古酒を巧みに織り交ぜながら、日本酒を軸としたペアリングを提案してくれる。カウンター奥で目を引く羽釜で50~60度に温める「蒸し燗」など、コースの料理や酒のポテンシャルに合わせて温度にもきめ細やかな工夫が凝らされているのがなんとも嬉しい。日本酒のほか、シャンパーニュやワインも取り揃えているので、シーンや気分に合わせて選ぶ楽しみもある。

三井の握る鮨と女将の美紀が提案するペアリングに加え、コースに深みをもたらすが、のどぐろや金目鯛など脂が乗った“焼き鮨”や炭火焼きなどの一品料理だ。それらを手掛けるは、店主の古くからの友人であり、前職はイタリアンの名店「トラットリア シチリアーナ ドンチッチョ」で腕を振るっていた君波真吾。付け台の後ろには、カウンターのどの席からも調理風景を眺められる炭台を設置し、炭火ならではの心地いい音と香りに包まれながら、君波の手でふっくらと焼き上げた一品をいただける。

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三井 祥●1988年、長野県生まれ。「ヒルトン東京」の日本料理店で料理人としての基礎を体得後、銀座のミシュラン三つ星店「青空」の高橋青空の鮨に惚れ、門戸を叩く。8年半の修業を経て、西麻布「鮨祥」では付け場を務め上げる。2025年5月、麻布十番に「みつい」を開店。 
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左:店主三井の妻であり、女将の美紀。故郷・沖縄の地酒を織り交ぜるなど、料理に合わせた個性豊かなペアリングを、SAKE DIPLOMAの資格も取得した店主とともに日々考案する。7杯のアルコールペアリング¥7,700(サービス料別) 右:炭火焼きなどの一品料理を手掛ける料理長の君波真吾。3人のチームワークも「みつい」の魅力のひとつだ。

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緻密でていねいな仕込みが活きる、焼き鮨やこだわりのネタで楽しませる「おまかせ」コース

「みつい」で提供するのはおまかせのコース(¥27,500 サービス料別)のみで、全国各地から厳選した旬の食材を活かしたつまみ5〜6品と、握り12〜13貫、デザートという構成。握りには、店主の確かな目利きで選び抜いたこだわりのネタを使用。中トロ、赤身、大トロと3貫続けて提供する鮪は、長く懇意にしている「やま幸」から仕入れており、日本海側の定置網で獲れる鮪は酸味と旨みのバランスがよく、「自身の握りとの相性がいい」と三井は話す。また、「鮨祥」時代に出会った漁師が、長崎から生きたまま豊洲へ運ぶ穴子も思い入れのある鮨ネタのひとつだという。

シャリは、店主の出身地である長野県産のコシヒカリをはじめとした高地栽培のコメを羽釡で炊き上げる。鮨ネタと一体になりながら、口のなかではらりとほどけるようなシャリを心がけているという。緻密でていねいな仕込みをはじめ、江戸前の伝統技法を継承しながらも、旬の食材と向き合い、独自の個性を加えた料理の数々。そこに、炭火で香ばしく焼き上げた“焼き鮨”やつまみが、コースに豊かな奥行きと余韻をもたらしている。

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握りのアオリイカ。以下、料理はすべて¥27,500(サービス料別)のおまかせコースより。
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大トロ
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くじら
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車海老
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穴子

店内の空間設計は、京都を拠点に数多くの店舗デザインを手掛ける杉原明(杉原デザイン事務所)がプロデュース。店主・三井の「お客様に一期一会の時間をゆっくりとお楽しみいただきたい」という要望を取り入れた白木の変形カウンターは、付け台との距離が近く、鮨職人の所作を間近に見ることができる。

2段階の高さに組んだ網代天井には竹と杉を用いており、天井をやや低めにすることで、親密感が生まれる設計に。店内にはメインカウンターとは別に4名まで利用可能な個室も備えており、ビジネスでの接待や会食などにも利用可能だ。

店の入り口に掲げられた木札は、三井の師匠である「青空」の高橋青空が「長く、多くのお客様に愛される鮨店になるように」という思いを込めてしたためたもの。料理はもちろん、細部まで店主の細やかな心遣いが感じられる空間は、なごやかなひとときを約束してくれる。大切な人とぜひ訪れてほしい。

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どの席からも店主の所作を間近に見られる変型カウンターをしつらえた。付け台の後ろに炭台を備えたかまども。
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左:三井の師である「青空」の高橋青空さんが筆をとった、店の入り口に掲げられた木札。人と人とのつながりを大事にしてきた店主の人となりを偲ばせる。 右:暖簾の先でメインカウンターの部屋とつながる、4名まで座れるカウンター個室も用意。

みつい

住所:東京都港区麻布十番3-10-2 THE CITY 麻布十番LIBERTA 5F
電話番号:03-4400-3023
営業時間:17時~21時最終入店
定休日:日曜、その他不定休
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