冷たさで涼をとるか、辛さで目を覚ますか。はたまた、職人の手仕事に浸るか。今夏、注目したのは“スタイル”別の麺の楽しみ方。ここでは、食欲をそそる、ひんやりとした“涼麺”が楽しめる都内の3店舗をご紹介。
暑いからこそ、啜りたくなる一杯がある。本特集では、「この夏、啜るべき麺」の厳選リストに加え、食通やクリエイターのお薦め、瀬戸内のご当地麺旅、レシピ提案、ローカルチェーン、製麺所の現場までを紹介。冷たさに癒やされ、熱さ・辛さにととのう。この夏、麺が気分だ。
『夏の麺を、食べつくす』
Pen 2025年9月号 ¥880(税込)
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もずくと夏野菜が生む清涼感、飲み干せるつゆが美味

十割手打ち蕎麦の同店。開店から15年以上変わらないメニューが多いのは、いつ来ても好みのメニューが食べられる安心感を感じてほしいから。加えて季節限定のメニューも揃う。つゆのもととなる「かえし」は5種類つくり、合わせる出汁の割合をメニューごとに変えることで、すべての蕎麦に対して理想の味を追求。
夏のお薦めは「ひやかけもずく蕎麦」。若干細めに切り出した蕎麦は、しっかり噛むほど蕎麦本来の風味が味わえる。昆布と亀節の出汁を使ったつゆはさっぱりしながらもコクがある仕立て。具材にはナス、キュウリ、もずく、ミョウガ、揚げ玉を使用。瑞々しくてさわやかな野菜本来のおいしさが、蕎麦とともに味わえる。
店主は「蕎麦屋の醍醐味は蕎麦前にあり、明るい時間帯から飲んだほうが楽しい」と話す。その言葉通り、この店も開店から閉店まで休憩のない通し営業がうれしい。

お蕎麦のしらかめ
住所:東京都世田谷区経堂1-27-13 ディアコート経堂1F
TEL:03-3420-1988
営業時間:11時30分〜20時30分 ※蕎麦がなくなり次第終了
定休日:火
Instagram:@shirakame
2日かけてつくる讃岐うどんのおいしさが満ちた一杯

噛みしめると小麦の旨味と、徳島産スダチの酸味と甘み、大根おろしの苦みと生醤油の塩みが合わさる。次々と押し寄せてくる五味の来襲に、思わず飲み込んでしまいたくなる。それを我慢してゆっくりと堪能したくなるほど、店主・亀山恵三の讃岐うどんはおいしさに満ちている。その実力が如実に表れるのが、最もシンプルなメニュー、「生醤油うどん」。「注文されると、いちばん緊張する一品です」と、亀山。20分ゆでて20〜25℃の水でぬめりをとったら、20℃の冷水で麺を締めて、スダチなどをのせて提供。この涼しい一杯を求め、夏は多くの客が訪れる。
そう、亀山のうどんづくりで重要なのが温度管理。2段階熟成を経るために製造に2日を要するが、前段階の国産小麦の保管から庫内の温度は22〜24℃と決まっている。練り工程での塩水の配分も、1年を通して食感にブレが出ないように、春夏秋冬で調整。勘ではなく理論で、おいしい一杯を紡いでいく。


饂飩 根の津
住所:東京都台東区谷中1-4-2
TEL:03-5834-8655
営業時間:11時〜14時、17時30分〜20時30分
定休日:火
自然派ワインと楽しむ、無添加・無化調の自家製ブン

学芸大学駅の人気店「スタンドバインミー」の姉妹店として誕生したフレンチ・ベトナミーズ。無添加・無化調にこだわり、旬の素材を活かした調理を徹底する。昼の主役は、自家製の米麺「ブン」を使った麺料理。
味やトッピングの異なる6種類から選べるが、夏のお薦めは、「スパイシー『サーテー』ブン」。国産米油を用いた自家製の辛味調味料「サーテー」をベースにした一杯で、ライムを搾り、卵を割って混ぜれば、辛みが全体に行き渡り、奥行きのある味わいに変化。米麺はほどよい弾力とつるみを併せ持ち、軽やかなのに満足感がある。
シャキシャキの野菜も添えられ、辛さの中に清涼感があるのもうれしい。料理に寄り添うワインは、フランス産の自然派を中心に厳選。ブドウ本来の風味が感じられるものが揃う。刺激と優しさが共存するブンと、ナチュラルワインの相性は格別だ。


スタンドボブン
住所:東京都目黒区祐天寺2-3-2
TEL:03-6303-2245
営業時間:11時〜15時、17時〜22時
定休日:火(不定休)
Instagram:@standbobun
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