東京の冷たい麺3選。もずく蕎麦、讃岐うどん、ベトナムのブンで夏を乗り切る!

  • 写真:太田太朗、伊藤菜々子
  • 編集&文:石川博也、笹 元、岡野孝次
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冷たさで涼をとるか、辛さで目を覚ますか。はたまた、職人の手仕事に浸るか。今夏、注目したのは“スタイル”別の麺の楽しみ方。ここでは、食欲をそそる、ひんやりとした“涼麺”が楽しめる都内の3店舗をご紹介。

暑いからこそ、啜りたくなる一杯がある。本特集では、「この夏、啜るべき麺」の厳選リストに加え、食通やクリエイターのお薦め、瀬戸内のご当地麺旅、レシピ提案、ローカルチェーン、製麺所の現場までを紹介。冷たさに癒やされ、熱さ・辛さにととのう。この夏、麺が気分だ。

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もずくと夏野菜が生む清涼感、飲み干せるつゆが美味

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「ひやかけもずく蕎麦」¥1,480。特に、コクがありながらもさっぱりとした冷たいつゆに自信あり。「ぜひ飲み干してほしい」と店主は話す。

十割手打ち蕎麦の同店。開店から15年以上変わらないメニューが多いのは、いつ来ても好みのメニューが食べられる安心感を感じてほしいから。加えて季節限定のメニューも揃う。つゆのもととなる「かえし」は5種類つくり、合わせる出汁の割合をメニューごとに変えることで、すべての蕎麦に対して理想の味を追求。

夏のお薦めは「ひやかけもずく蕎麦」。若干細めに切り出した蕎麦は、しっかり噛むほど蕎麦本来の風味が味わえる。昆布と亀節の出汁を使ったつゆはさっぱりしながらもコクがある仕立て。具材にはナス、キュウリ、もずく、ミョウガ、揚げ玉を使用。瑞々しくてさわやかな野菜本来のおいしさが、蕎麦とともに味わえる。

店主は「蕎麦屋の醍醐味は蕎麦前にあり、明るい時間帯から飲んだほうが楽しい」と話す。その言葉通り、この店も開店から閉店まで休憩のない通し営業がうれしい。

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自然光が入るカウンター席は昼から蕎麦前を楽しむのにぴったり。淡麗、濃醇、酸の利いた日本酒を幅広く揃えている。店名は、店主の妻の親戚がかつて福岡で造り酒屋を営み、そこで醸造していた日本酒「白亀」に由来。

お蕎麦のしらかめ
住所:東京都世田谷区経堂1-27-13 ディアコート経堂1F
TEL:03-3420-1988
営業時間:11時30分〜20時30分 ※蕎麦がなくなり次第終了
定休日:火 
Instagram:@shirakame

2日かけてつくる讃岐うどんのおいしさが満ちた一杯

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「生醤油うどん」¥710。小麦は、練るとやや硬くなる北海道産のキタホナミと、逆にやわらかくなる九州産のニシホナミを使用。徳島産のスダチは、酸味と甘みに加えてコクも湛える。

噛みしめると小麦の旨味と、徳島産スダチの酸味と甘み、大根おろしの苦みと生醤油の塩みが合わさる。次々と押し寄せてくる五味の来襲に、思わず飲み込んでしまいたくなる。それを我慢してゆっくりと堪能したくなるほど、店主・亀山恵三の讃岐うどんはおいしさに満ちている。その実力が如実に表れるのが、最もシンプルなメニュー、「生醤油うどん」。「注文されると、いちばん緊張する一品です」と、亀山。20分ゆでて20〜25℃の水でぬめりをとったら、20℃の冷水で麺を締めて、スダチなどをのせて提供。この涼しい一杯を求め、夏は多くの客が訪れる。

そう、亀山のうどんづくりで重要なのが温度管理。2段階熟成を経るために製造に2日を要するが、前段階の国産小麦の保管から庫内の温度は22〜24℃と決まっている。練り工程での塩水の配分も、1年を通して食感にブレが出ないように、春夏秋冬で調整。勘ではなく理論で、おいしい一杯を紡いでいく。

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左:ゆで上がったら、まず麺のぬめりをとる。写真左が20℃の冷水で、これで締めたら冷たいうどんの完成だ。 右:ゆで加減をチェックする亀山。「饂飩 根の津」の讃岐うどんは太さがあるため、ゆで上がりまで20分かかる。
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2003年に根津神社の近くで開業、19年に一旦閉店、22年に現地に移転。「この間の3年でうどんづくりが変わった」と亀山は言う。

饂飩 根の津
住所:東京都台東区谷中1-4-2
TEL:03-5834-8655
営業時間:11時〜14時、17時30分〜20時30分
定休日:火 

自然派ワインと楽しむ、無添加・無化調の自家製ブン

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牛肉や揚げエノキ、新鮮野菜など具だくさんで彩り豊か。ヌックマムやチリビネガーで好みの味変を楽しめる。「スパイシー『サーテー』ブン」¥1,430

学芸大学駅の人気店「スタンドバインミー」の姉妹店として誕生したフレンチ・ベトナミーズ。無添加・無化調にこだわり、旬の素材を活かした調理を徹底する。昼の主役は、自家製の米麺「ブン」を使った麺料理。

味やトッピングの異なる6種類から選べるが、夏のお薦めは、「スパイシー『サーテー』ブン」。国産米油を用いた自家製の辛味調味料「サーテー」をベースにした一杯で、ライムを搾り、卵を割って混ぜれば、辛みが全体に行き渡り、奥行きのある味わいに変化。米麺はほどよい弾力とつるみを併せ持ち、軽やかなのに満足感がある。

シャキシャキの野菜も添えられ、辛さの中に清涼感があるのもうれしい。料理に寄り添うワインは、フランス産の自然派を中心に厳選。ブドウ本来の風味が感じられるものが揃う。刺激と優しさが共存するブンと、ナチュラルワインの相性は格別だ。

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左:「国産米麺を第4の麺に」を掲げ、米粉へのこだわりは徹底。写真は、水分を馴染ませるため寝かせている工程。 右:蕎麦屋が使っていた製麺機を使用。新潟産米と北海道産馬鈴薯をブレンドし、毎朝店で製麺している。グルテンフリーなので食べ疲れしないのも特徴だ。
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まるでハノイの街角を思わせる、風情ある外観。夜は多彩な一品メニューなど、お酒に寄り添った料理を提供している。

スタンドボブン
住所:東京都目黒区祐天寺2-3-2
TEL:03-6303-2245
営業時間:11時〜15時、17時〜22時
定休日:火(不定休)
Instagram:@standbobun

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