冷たさで涼をとるか、辛さで目を覚ますか。はたまた、職人の手仕事に浸るか。今夏、注目したのは“スタイル”別の麺の楽しみ方。創造性にあふれ洗練されたコンテンポラリーな一杯を“創麺”と命名し、東京にある注目の3店舗を紹介する。
暑いからこそ、啜りたくなる一杯がある。本特集では、「この夏、啜るべき麺」の厳選リストに加え、食通やクリエイターのお薦め、瀬戸内のご当地麺旅、レシピ提案、ローカルチェーン、製麺所の現場までを紹介。冷たさに癒やされ、熱さ・辛さにととのう。この夏、麺が気分だ。
『夏の麺を、食べつくす』
Pen 2025年9月号 ¥880(税込)
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パクチーの根入り、超個性的な冷蕎麦

アパレルブランドやショップのクリエイティブディレクターとして活躍する南貴之が手掛ける“食とカルチャーのセレクトショップ”。服やレコード、洋書なども並ぶ店内で存在感を放つのが、コの字型の飲食カウンターだ。蕎麦屋で酒を飲む蕎麦前をモダンに楽しめるスタイルで、メニューには富山「ミッちゃん餃子」の焼き餃子や、京都「オクテ」のサワーやアテなど、南が全国からセレクトした人気店の自慢の品々が揃う。
蕎麦は京都「スバ」の二八蕎麦に旬の具材をのせた、「寄」オリジナルメニュー。なかでも夏のお薦めが、見た目から強烈な個性を放つ「山盛りパクチー しらすとからすみ」だ。利尻昆布、本鰹、サバ、ウルメイワシを使用した関西風の出汁で、繊細ながらコクがしっかりあり、味わい深い。根までがのったパクチーや老舗・山利の高級シラスなどを酒のアテに、最後は蕎麦を啜って締めるのも、この店らしい小粋な楽しみ方である。

000〜¥4,000台が中心。
寄
住所:東京都渋谷区代々木3-38-10 1F
TEL:03-6381-6131
営業時間:11時30分~23時
定休日:水
Instagram:@yose_tokyo
カスタマイズ無限大、研究型そうめん店

日本三大そうめんのひとつ、小豆島手延素麺「島の光」を使用した、いわば“研究型”のそうめん専門店。特徴は、麺や量、味付け、トッピング、具材まで、すべて自分好みにカスタマイズできること。まるで実験のように、そうめんの新しい可能性を楽しめる。
店のコンセプトは、“スタッフも客も研究員”というもの。たとえば、トマトペーストを選べばイタリアン風に、大葉を足せば和の趣に。組み合わせはまさに無限だ。迷った時は、スタッフによる「研究レポート」が頼りになる。お薦めの組み合わせが紹介されており、カスタマイズのヒントになるからだ。
今回紹介する「明太子そうめん」は、そのレポートから選んだ一杯。麺1.5束とボリュームもあり、濃厚な明太ソースが食欲を刺激するが、そうめんならではの軽やかさがあり、箸が止まらなくなる。使用されている麺は驚くほどコシがあり、そうめんの既成概念を覆す、創造性に富んだ一軒である。



そうめん そそそ 研究室
住所:東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ6F
TEL:03-6450-6795
営業時間:11時~22時
定休日:渋谷ヒカリエの休日に準ずる
Instagram:@somensososo
スダチの酸味×イチジクの甘みが新感覚

2021年、大晦日に京都でオープン以来、関西に立ち食い蕎麦の文化を広める人気店「スバ」が24年、渋谷に登場。ワインショップ「ウィルトス」とのコラボ店で、1階が「スバ」、2階が「ウィルトス」となっている。
蕎麦は定番メニューが10種類ほど。加えて月替わりの「季節のお蕎麦」が3種類というラインアップ。たとえば「島根県産宍道湖しじみと青マンダリンオイル」や「舟形マッシュルームと唐千寿(カラスミ風)」など、ネーミングから興味をそそられる。
なかでも「酢橘無花果(スダチイチヂク)」は暑い季節に食べたい爽やかな一杯。オリジナルの二八蕎麦を覆うように盛り付けられた徳島産のスダチと淡路島産のイチジクが美しい。清涼感を感じるスダチの酸味とイチジクのほのかな甘み、そして仕上げにかけられているオリーブオイルが全体を引き締め、絶妙なバランスを楽しめる。その発想が見事な麺である。


スバ ブイエス
住所:東京都渋谷区渋谷1-15-8 宮益ONビル 1F
TEL:070-3080-1847
営業時間:12時~23時
不定休
Instagram:@subasoba_vs
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