「愛」を詩的に表現した、 ヴァン クリーフ&アーペルの唯一無二のタイムピース

  • 写真:渡邉宏基(LATERNE)
  • 文:柴田 充
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ヴァン クリーフ&アーペルの2025年の最新作「レディ アーペル バル デ ザムルー オートマタ ウォッチ」。グリザイユ エナメルによる濃淡の背景に、建物や石畳みなど5つの層で構成し、奥行きあるパリの街角を表現した。

「ポエトリー オブ タイム(詩情が紡ぎだす時)」という時計制作の哲学のもと、2025年、ヴァン クリーフ&アーペルは「愛」をテーマに、美の希求を通して物語を綴る。先の見えない不透明な時代だからこそ、「人を愛する想い」の尊さがより深く伝わる。

ふたりの愛から始まったメゾンの歴史

メゾンの歴史は、1895年、アルフレッド・ヴァン クリーフとエステル・アーペルの結婚から始まった。その後1906年に、ふたりの永遠の誓いを名に込めたブティックをパリのヴァンドーム広場に開く。台帳に記された最初の作品がハートモチーフであったように、創業以来、愛はインスピレーションの源であり続けてきた。

ふたりの結婚から130年の今年、改めてテーマに掲げたのがメゾンの起源である「愛」。複雑機構とプレシャス素材、メティエダールを融合し、詩情豊かな時を刻む「ポエティック コンプリケーション」は今年、新章の幕を開けた。

舞台は、19世紀にパリ郊外で人気を博した屋外のダンスカフェ、ギャンゲット。愛を育んできた恋人たちは、星明かりの下、ふたりだけの時を謳歌し、口づけを交わす。そんなひと時を繊細なオートマタの動きと美しいエナメル装飾で優雅に表現する。時刻を示すのは、雲に浮かんだふたつの星で、ダブルレトログラードの複雑機構を感じさせない。「ポエティック コンプリケーション」の真髄だ。

無限に広がる創造性と人間の手が生み出す芸術とともに、愛の物語が終わることはない。

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正午と真夜中の12時になると、まるで互いに引き寄せ合うように、腕や全身の自然な動きとともに近づきキスをする。開発に4年の歳月をかけ、3つの連結部でなめらかな動きを実現した。
FB-VCA_02_BDA_SDT_6h30 .jpg レディ アーペル バル デ ザムルー オートマタ ウォッチ /ムーブメントは、ダブルレトログラード機構に、ミニッツリピーターと同様のオートマタ用モジュールを積層し、ケース側面のプッシュボタンでオンデマンドでも作動できる。ダイヤモンドを122石(2.82ct)セッティング。自動巻き、18KWGケース、ケース径38㎜、パワーリザーブ約36時間、アリゲーターストラップ、3気圧防水。¥24,948,000

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文字盤上で物語を綴る、メティエダールと複雑機構の融合

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レディ アーペル ポン デ ザムルー オーブ ウォッチ /パリの異なる時間を描く「ポン デ ザムルー」の新作4作のうち、「オーブ」は夜明けの瞬間を表現する。昇りゆく太陽に照らされる曙の空や街の光景は、カラーグリザイユ エナメルの技法を用い、ゴールドの橋のレリーフが遠近感を演出する。正午と真夜中にふたりが出会い口づけを交わす3分間は、開発チームが実際にパリの橋で見かけたフレンチキスの時間から決めたという。自動巻き、18KRGケース&ブレスレット、ケース径38㎜、パワーリザーブ約36時間、3気圧防水。¥66,660,000

先述した愛の物語の前章となったのが、2010年に登場した「レディ アーペル ポン デ ザムルー ウォッチ」だ。橋の上で向かい合った男女が時と分を刻みながら互いに近づき、正午と真夜中に約3分の口づけをする。この間、時計は止まることなく、ふたりは再び正しい時刻の位置に戻り、時を刻み始めるのだ。この独創的な「ポエティック コンプリケーション」の世界を表現した代表作が、今年新たな美しさを纏った。

文字盤の背景には、夜明け、朝、夕暮れ、月光という1日の瞬間をそれぞれグリザイユ エナメルで描き、ダイヤモンドでベゼルを飾る。さらにケースサイドからブレスレットには大小のダイヤモンドとグラデーションのサファイアをセットする。ゴージャスなブレスレットは、多彩な煌めきとなめらかな動きを両立し、まさしくハイジュエラーの本領発揮だ。

豊かな色彩のハーモニーとジェムセッティングのサヴォアフェールが織りなす美しさに触れた瞬間、まるで恋人たちと同じ場所で同じ時を過ごしているような感動を得ることだろう。

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レディ アーペル ポン デ ザムルー ウォッチ /2025年の新作として発表された「ポン デ ザムルー」の4部作。上記の夜明けを描いた「オーブ」に加え、写真右から、朝の「マティネ」、夕暮れの「ソワレ」、月明かりの「クレール ド リュンヌ」というさまざまな時間帯で紡がれる男女の物語を表現した。18KWG (右・左)と18KRG(中)のケースにはそれぞれ同素材のブレスレットを組み合わせ、903石のダイヤモンド(11.78ct)と639 石のブルーまたはピンクのサファイア(18.68〜19.22ct)をセッティングする。自動巻き、ケース径38㎜、パワーリザーブ約36時間、3気圧防水。各¥66,660,000
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左:ブレスレットは、石の大小に合わせたリンク形状で構成し、繊細なつくりで手首に沿ってしなやかに馴染む。裏蓋には、サファイアガラスにエナメル デカールとゴールドのエングレービングを施し、物語の続きを描く。 右:ホワイトゴールドで彫金された男女が時と分を示し、正午と真夜中に出会い約3分間のキスを交わす。8時位置のプッシュボタンにより、オンデマンドでも作動し、口づけした後は経過した正しい時刻位置に戻る。

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ジュエリーとオートマタの出逢いが生む、心躍る魅惑のひと時 

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エクストラオーディナリー オブジェ ネッサンス ドゥ ラムール オートマタ /2022年から発表してきたオートマタの最新作は、ルネサンス期の絵画から着想を得て、愛を象徴するキューピッドをモチーフにした。土台には金色の煌めきを帯びたアイアンアイを用い、目盛りを付けた回転リングで時刻を示す。手巻き、高さ約27㎝、幅約21.5㎝、パワーリザーブ約8日間、世界限定1点。¥498,960,000(参考価格)
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左:ゴールドとダイヤモンドで飾られたキューピッド。プリカジュール エナメルの翼を羽ばたかせる姿は、いままさに矢を放つ瞬間を表現し、愛の始まりを予感させる。 右:羽のバスケットを支えるボウルには、貴重なパームウッドの珪化木を使用した。

メゾンでは創業当初からオートマタ(機械仕掛け)のオブジェを手掛け、精緻なメカニズムで自然界の動きを再現してきた。「エクストラオーディナリー オブジェ」は、この伝統的な技法を新たな解釈と技術によって現代に蘇らせ、毎年大きな話題を呼ぶ。新作「ネッサンス ドゥ ラムール オートマタ」は、キューピッドをモチーフに、メゾンでは初のラブストーリーをテーマにしたオートマタだ。

神話に登場するキューピッドが開いた羽のバスケットから現れ、翼を羽ばたかせながら回転上昇した後、再び隠れ家に戻る。この間、カリヨンのメロディが流れる。

開発制作は現代オートマタの第一人者フランソワ・ジュノとの協業で、2017年から続くパートナーシップの賜物だ。通常のオートマタに比べて金や装飾で重量は増すが、軽やかさを表現するため、動きの速度を精細に調整したという。そのなめらかな動きは、まるで生きているかのような温もりを感じさせる。そしてそこに愛の煌めきを吹き込むのが、メゾンが培ってきたサヴォアフェールであることに間違いはない。

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左:バスケットの羽は、ゴールドに伝統的なラッカー仕上げを施した。数種類の釉薬を溶き、調色した後、装飾部分にエアーブラシで塗布する。淡色の下地に濃色を粒状に吹きつけ、透明感ある仕上がりと自然な風合いを表現する。 右:キューピッドの支柱を支えるつぼみの部分は、多くのプレシャスストーンが用いられ、職人が一つひとつ手作業で仕上げる。
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フランソワ・ジュノ●1959年、スイスのサント・クロワ生まれ。14歳でオートマタのつくり手を目指す。オートマタ復元技術士をしながら美術学校でドローイングと彫刻を学ぶ。84年に独立。
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エクストラオーディナリー オブジェ プラネタリウム オートマタ /天空の動きを再現した「プラネタリウム オートマタ」は、第4作目になり、新たな装飾やデザインを施した。特注の吹きガラスのドームの下、太陽の周囲を6つの惑星と月が周回し、惑星はそれぞれの公転周期に基づき、常に正確に位置する。オンデマンドによって、オリジナルメロディが流れる中、流れ星が現れて周回するとともに惑星が上下運動しながら回転する。手巻き、高さ約50㎝、幅約66.5cm(扉が閉じている状態)、パワーリザーブ約15日間、世界限定1点。¥1,570,800,000(参考価格)
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レモンツリーなどで構成される台座の側面には、調整用に時刻表示、デイ/ナイト表示、永久カレンダー、15日間のパワーリザーブ表示を格納。
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上:ラピスラズリの文字盤の下から現れて周回する流れ星は、ミステリーセット ルビーやダイヤモンドが煌めく。 下左:中心に鎮座する太陽の核には、ローズゴールドのモチーフとスペサルタイトガーネットを使い、イエローサファイアやダイヤモンドを500本以上のゴールドステムにセットする。 下右:地球にはグリーンジャスパーを採用し、星の名を刻んだゴールドのリボンと2色のサファイアの実を着けた植物をあしらう。

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ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク

TEL:0120-10-1906
www.vancleefarpels.com