ノン・ドザージュで仕上げた、ルイナールの新たなキュヴェ「ブラン・サンギュリエ」。気候変動に寄り添い、シャンパーニュの未来を切り拓く

  • 文:植田沙羅
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世界最古のシャンパーニュメゾンとしてフランスのランスで創業し、290年以上にわたり歴史を紡いできたルイナール。洗練されたシャルドネ種にこだわり、伝統製法によりつくられたシャンパーニュは、時代を超え多くの人々に愛されてきた。そんなルイナールは、昨今の気候変動によりもたらされたシャルドネの“新たなアロマ”を昇華させたノン・ドザージュのキュヴェ「ルイナール ブラン・サンギュリエ エディション 19」を生み出した。

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「ルイナール ブラン・サンギュリエ エディション 19」は、糖分を補わずに醸造したノン・ドザージュ。ブドウ本来の味わいが活きることから、ルイナールのシャルドネへの自信が窺える。小売店での販売は行わず、レストランやホテルでのみ取り扱われるプレミアムな一品だ。750mL ¥18,920

1729年の創業以来、シャルドネの魅力を最大限に引き出す高度な技術を磨き上げ、その繊細でフレッシュながら気品あふれる味わいは“シャルドネの芸術”と讃えられてきた。ランスの地下38メートルに張り巡らされた、古代ローマ時代の石灰岩の石切り場跡・クレイエルをシャンパーニュ熟成のセラーとして利用するなど、風土に根差した醸造法を取り入れているのも、ルイナールの大きな特徴だ。

この20年間、シャンパーニュ地方は地球温暖化により平均気温が上昇し、ブドウの収穫時期が早まる傾向にある。そこですべてのシャンパーニュを高品質に保ち続けるために、伝統製法を守りながらも、環境の変化に対応する姿勢が求められてきた。ルイナールの最高醸造責任者であるフレデリック・パナイオティスは「私たちはワイン生産者として、変わりゆく気候に謙虚に学び、技術を柔軟に適応させることで、シャンパーニュのテロワールの個性を明らかにし続けなければなりません」と語っている。

約10年の歳月をかけ、一部のシャルドネには気候変動に起因するアロマの特徴があることを突き止めたフレデリック・パナイオティスらは、シャルドネの持つ唯一無二の個性を最大限に引き出した新たなキュヴェ「ブラン・サンギュリエ」をつくりあげた。2017年に試験的なブレンドが行われたのち、翌年には「エディション18」として正式に発表。そして2019年に「エディション19」の醸造が決まった。

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フレデリック・パナイオティス●ルイナール最高醸造責任者。シャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会などで研鑽を積み、ヴーヴ・クリコ・ポンサルダンでロゼの醸造に携わる。2007年よりルイナールの最高醸造責任者に就任。
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東京・南青山のレストラン「NéMo」でお披露目された「ルイナール ブラン・サンギュリエ エディション 19」。この日は根本憲一シェフの手によって「ブラン・サンギュリエ」のために考案された料理が振る舞われた。

この2019年は、シャンパーニュ地方が3度もの熱波に見舞われた、異例尽くめの年だった。気温が30度を超える日が23日続き、開花から収穫までのサイクルはわずか81日間。これは過去10年の平均よりもさらに1週間早く、記録的な短さで育ったシャルドネは、これまでにない変化に富んだアロマをもたらした。ネクタリンや洋ナシを思わせるフレッシュな果実味と、レモンやポメロの爽やかな香り、アンジェリカやスイカズラの蜂蜜のニュアンス、さらにサフランやスモーキーなスパイスの香りが、互いの個性を活かしながら見事な調和を見せたのだ。

モンターニュ・ド・ランス、コート・デ・ブラン、グランド・ヴァレ・ド・ラ・マルヌ、ヴァル・デュ・プティ・モラン、セザネ、ヴィトゥリアの6つの地域の約20カ所のクリュで栽培したブドウを使用。2019年のワインをベースに、2016~18年のワインを含む「ルイナール ブラン・サンギュリエ」の永久リザーブを23%加えて仕上げている。

鮮やかなゴールドに光り輝くシャンパーニュはほのかにグリーン色を帯び、口当たりはフレッシュそのもの。ジューシーな果実味とポメロの酸味が広がり、グレープフルーツのようなほろ苦さと石灰質の質感が余韻を引き締める。力強い果実味とスパイシーな香り、そして豊かなテクスチャーは、まさに“自然とともに歩む”という哲学を体現した、ルイナールの挑戦の結晶といえるだろう。変わりゆくシャンパーニュ地方のテロワールを物語るかのような変化に富んだアロマは、彼の地の“いま”の息吹を運んでくれる。

MHD モエ ヘネシー ディアジオ

www.mhdkk.com

 

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