【東京クルマ日記〜いっそこのままクルマれたい〜】 第190回“もはや地上に降りた天使 !? 伝説のRSRを想わせるポルシェ”

  • 写真&文:青木雄介

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ボンネットを貫通させた給油口もカレラRSRのオマージュ。

最近の旧車人気の最たるものといえばやっぱり「クラシック・ポルシェ」。ここ15年ぐらいで人気モデルの901型(通称ナロー)はもちろん、不人気だったモデルまで値上がりを続け、そのまま高値安定状態に。程度のよい個体は争奪戦の上、しっかりとレストアされ、さらに高値をつけるという容赦ない資本主義社会の実相を見せてくれている(笑)

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ミュアヘッド社のレザーインテリアにエアコン、電動サンルーフ、ブルートゥースオーディオまで完備。 

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なかでも漫画『サーキットの狼』でよく知られた1973年製911カレラ、通称73(ナナサン)カレラの人気は根強く、最強のレーシング仕様RSRともなれば、世界を見渡したって購入はほぼ不可能。生産台数はたった49台なのでもはや金額の問題ではないのだけど、生粋のポルシェ好きなら一度はステアリングを握ってみたいと思うはず。実車は到底無理ゲーにしても、レストモッド(レストアし現代風にモディファイした車両)なら「どうでしょう?」というのが今回のテーマなんだ。

実際、このレストモッドの911が目黒通りに乗りつけられているのを見たときに、瞬時に思ったのは「これ触れていいの?」っていう、握手会に参加したアイドルファンのような心境に他ならなかった(笑)。もはや地上に降りたエンジェルですよ(笑)。外見だけで、ポルシェを表現しきっている。中身が国産の直4だとしても欲しくなるっていうね(笑)

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可変式ダンパーを装備。ブレーキは合金ビレットキャリパーとドリルドディスクに換装。

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元のクルマ(ドナー)は87年式のポルシェ911カレラ3.2(930型)でRSR仕様のフロントフェイスにダックテール型リアウイング。930型をRSRルックにすることで有名なのは、ドイツのルーフ社が年産1台だけつくるルーフ3.4RSRがある。

撮影車はイギリスの911レンシュポルト社によるもので、排気量もルーフと同様に3400㏄にボアアップし、鍛造軽量ピストンで圧縮比を上げレーシングカムを組み、6基のスロットルボディに換装されている。

乗ってみれば低速域でのトルクが効いていて、街乗りは完ぺき。アクセルは鋭敏で高回転までよく伸びるし、エグゾーストノートも軽快。速度を上げていくとハンドルが軽くなっていくクラシックポルシェらしさも堪能できて、ブレーキも高性能なものに換装されているからガツンと効く。

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3.2ℓエンジンをベースにコンピューターを組み込み、ボアアップし吸排気系を強化。 

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最高出力は320馬力でオリジナルの73カレラRSRより20馬力ほど高い。オリジナルとほぼ変わらないボディにサスペンションのトーションバーなど往時の味わいを残しつつ、可変ショックアブソーバーを組み込み、車内パネルの操作で乗り味を変えることができる。73カレラRSRを再現したというより、「俺のつくったポルシェに乗ってみてよ」というカービルダーらしい自信と無邪気さがそこかしこに際立っているのね。

個人的にはオリジナルパーツによる完全レストアが至高という意見に同意するものの、カービルダーによる個性的で見る人によって好みが違うレストモッドの世界のほうが断然好き。このクルマはカラーリングからパーツのデザインまで実にイギリスらしい。クラシックポルシェのハードな部分を残しつつ、自然吸気らしいエレガントなクルマに仕立てられている。そう、新車として買えるのも魅力だったね。

 

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ワイドアーチにダックテール型リアウイングでも絶妙なリアビュー。

911レンシュポルト RSR

サイズ(全長×全幅×全高):4290×1651×1320㎜
排気量:3.4ℓ
エンジン:水平対向6気筒
最高出力:320ps
駆動方式:RR(リアエンジン後輪駆動)
車両価格:¥44,000,000~
問い合わせ先/オートダイレクト
TEL:03-5573-8777
www.auto-direct.jp

※この記事はPen 2024年2月号より再編集した記事です。