〈スピーカー〉
ELAC Debut ConneX DCB-41(エラック デビュー・コネックス DCB-41)
多機能とクオリティは両立しないことが多いのが、AV機器の世界。でも時に例外もある。ドイツの名門エラックのアクティブ(アンプ内蔵)スピーカー「Debut ConneX DCB‒41」がそれだ。高域19㎜+低域115㎜ユニットを擁し、現存のアクティブ型の中でトップクラスの音質を聴かせ、入力インターフェイスが多彩。しかも金額10万円以下と、抜群のコストパフォーマンスを誇る。
インターフェイスは、有線ではテレビ接続用のHDMI・ARC端子、PCとの接続用のUSB端子、光デジタル端子、アナログのRCA端子を備え、スマートフォンとはブルートゥースで無線接続。驚くのはレコード再生用のイコライザーも内蔵していること。ワイヤードとワイヤレスにて、あらゆる機器との接続が可能だ。世にアクティブスピーカー多し、だがこれほど贅沢なのは随一だ。
それでいて音がよい。エラックはドイツのハイエンドスピーカーメーカーだ。筆者はかつて、北ドイツの軍港・キール市にあるエラック本社を訪ね、数々の高音質技術の素晴らしさに感銘を受けた。エラックサウンドとは「高品位、緻密、細かなグラデーション」が美質だと認識している私は、本スピーカーに伝統の音づくりが色濃く投映されていると聞いた。
情家みえ『エトレーヌ』(UAレコード)収録の「チーク・トゥ・チーク」を聴くと、冒頭のアコースティックベースの量感と力感が小さな筐体から意外なほど感じられた。スピード感も適切だ。ボーカルの伸びやかさ、輪郭のクリアさ、ディテールの質感も、上級のエラック的な雰囲気だ。中域から高域にかけての情報量の多さ、緻密さにも感心した。エラック的な美質が横溢する、小さな名アクティブスピーカーだ。
麻倉怜士
デジタルメディア評論家。デジタルシーン全般の動向を常に見据える。著書に『高音質保証! 麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略』(日経BP社)などがある。
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TEL:03-5743-6202
※この記事はPen 2023年12月号より再編集した記事です。