アートの街に開かれた、軽やかに浮遊する複合施設「まえばしガレリア」【今月の建築ARCHITECTURE FILE #12】

  • 文:佐藤季代
  • 写真:木暮伸也

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「アーツ前橋」や「白井屋ホテル」が徒歩圏内の、銀座通り二丁目商店街沿いに立つ。1階がテナント、2~4階が26戸のテラス付き分譲住戸。

アートとデザインの街として、近年再開発が進められている群馬県前橋市の中心街。2020年に開業した藤本壮介設計の「白井屋ホテル」を筆頭に、著名建築家による商業施設が次々と誕生している。今年5月には飲食店が立ち並ぶ商店街沿いに、平田晃久が手がけた複合施設「まえばしガレリア」がオープンした。

かつてあった映画館や広場の賑わいを取り戻す拠点として、 「一本の樹の下に人々が集まる様子」をイメージしながら設計された。さまざまなクリエイターや企業家が参加し進められたプロジェクトでもあり、通りに開かれた1階のパブリックエリアには日本を代表する5つのギャラリーとレストランが入居する。一部吹き抜けを設けたガラス張りのギャラリーと、それらと一体になった路地のような中庭が往来する人を呼び込む。

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街とつながる中庭は、テナントの出入り口と住戸のアプローチを兼ねる。来年夏には植栽がパネル全体を覆い、樹冠のようになる。

屋内外が混ざり合う開放的なギャラリーの上部には、2〜4階にかけて26戸のテラス付き分譲住戸が用意されている。壁面や屋根が緑化された住居群の箱が、何層にも重なり合いながら軽やかに浮遊する。建築を自然や生き物のように捉える平田独自の思考がここでも表現されている。

このほか、周辺エリアでは著名建築家によるアート施設やレジデンスが建設予定。新スポットとともに、地域活性を担う建築群に今後も注目したい。

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1区画に東京・京都に拠点を構えるタカ・イシイギャラリーが入居する。オープン時にはディノス・チャップマンによる個展が開催された。

 

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住戸はワンルーム、ロフト付き、メゾネットの6タイプがあり、すべて異なるデザイン。斜めに空間を区切るなど間取り自体もユニーク。

まえばしガレリア

住所:群馬県前橋市千代田町5-9-1 
TEL:店舗によって異なる 
営業時間:店舗によって異なる
定休日:不定休
www.towndevelop.jp
【設計者】平田晃久建築設計事務所
代表の平田晃久は1971年生まれ。伊東豊雄建築設計事務所勤務を経て、2005年に平田晃久建築設計事務所を設立。京都大学教授。おもな作品に「太田市美術館・図書館」など。日本建築学会賞などを受賞。

※この記事はPen 2023年10月号より再編集した記事です。