息をつける場所があることで、余裕が生まれて視野が広がる

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    55 山口真由|法学博士

    各界で活躍する方々に、それぞれのオンとオフ、よい時間の過ごし方などについて聞く連載「My Relax Time」。第55回は、財務官僚や弁護士を経験し、現在は情報番組のコメンテーターとしても活躍する、信州大学特任教授で法学博士の山口真由さんです。

    写真:殿村誠士 構成:舩越由実fix_yamaguchi_myrelaxtime_1.jpg

    山口真由(やまぐち・まゆ)●1983年、北海道生まれ。法学博士。東京大学法学部卒業後、財務省に入省。退官後、弁護士に。渡米しハーバード・ロー・スクール修了。帰国後、東京大学大学院で博士課程を修了。2021年に信州大学特任教授に就任。23年6月に出産・育児のための一時休業から復帰した。著書に『挫折からのキャリア論』(日経BP)など。

    育児をするようになっても、できるだけ仕事はセーブしたくないと考えています。でも、スケジュール管理の仕方は変わりました。以前は急な依頼があっても対応できましたが、いまは昼も夜も時間が取れないので、なるべく事前のご相談をお願いしています。(育児をしていると)どんなことが起きるかわからないですからね。

    余裕をもって仕事を進める環境が整えば、女性も男性も、育児のために自分が築いたキャリアを諦めなくてもいい時代になると思うんです。周りに相談してみると、多くの人は理解してくれますし、弱い部分を開示したほうがお互いに手を差し伸べ合える気がするんです。人生は繰り返しゲーム。いまできなかったとしても、将来お返しできる機会は来るはず。必要以上に自分を責める必要はないのかなと思います。

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    子育てをしていても、自分のための時間をつくるのは大事だと思うんです。たとえば、朝に一杯のコーヒーを飲むだけでもリラックスになるし、子どものことをもっとかわいく感じることができる。母親は、子どもの奴隷のようにならなきゃいけないわけではありません。子どもには尽くしますが、自分のタイムスケジュールと家庭に向き合う時間のバランスは重要です。

    以前、仕事で外泊が必要だったとき、子どもと離れることにすごく罪悪感があったんです。でもウェブカメラで様子を見たら、すごく笑っていたんですよ。その笑顔に救われたような気がして、そんなに思い詰めなくてもいいのかなって。

    でも実際には、まだそれほど自分のための時間をつくれてはいません。お風呂が好きなので、湯船にゆっくり浸かって手足を伸ばしたいけれど、やっぱりそれは難しい。本を読むのも好きだけど時間は限られている。本当は思いっきり物語を読みたいし、お酒も好きだから飲みたい……そういう時間を取り戻すのは、もう少し落ち着いてからですね(笑)

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    子どもができて変わったことのひとつは、たばこの匂いに敏感になったこと。妊娠中、喫煙ルームの近くだと知らずに新幹線の席を予約したことがありました。たばこの匂いがしてはじめて気づいたんですが、私にとって大切なコーヒーを飲む時間が、喫煙する方にとってはたばこを吸う時間だったりするんですよね。

    相手の視点に立って物事を見るのは、すごく大事なことだと思うんです。ただそれは自分に余裕がないとできないことでもあるので、生活のなかに息をつける場所をつくっておくことが必要だと思います。 

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    『挫折からのキャリア論』山口真由 著 日経BP ¥1,870円

    問い合わせ先/JT
    www.jti.co.jp