大地震によって廃墟となった韓国・ソウルのマンションに住む人々を描いた映画『コンクリート・ユートピア』が、8月9日韓国で公開された。パク・ソジュンとイ・ビョンホンが共演し、初登場動員数1位を記録するなど韓国で話題を呼んでいる本作。日本では来年1月5日に公開が予定されている最新映画の見どころと、先日韓国で行われたジャンケット取材の様子をお伝えしたい。
舞台は、大地震が起きて廃墟となってしまったソウル。奇跡的に唯一残ったのが「ファングン・マンション」だ。噂を聞きつけた外部の生存者たちがマンションに群がり、住民たちは危機を察知する。生き残りのため一丸となった住民たちは、リーダーとしてヨンタク(イ・ビョンホン)を選び、臨時住民代表に任命。ヨンタクを中心に部外者の立ち入りを阻止し、住民だけの新たな規則を作っていく。住民たちの頑張りのおかげで、地獄のような外部とは異なり、平和でユートピアのような暮らしが手に入ったかに見えた。しかし、終わりのない生存の危機のなか、住民たちの間でも予想しなかった争いが生まれていく……。
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まず、大地震によって廃墟となったソウルの描写が凄まじい。オム・テファ監督は「大地震のなかでマンション一棟だけが崩れずに残ったという設定を観客が信じられるよう、リアルさに重点を置いて制作した」と語った。リアルな描写が続くなかで、極限状態に置かれた人々の行動がていねいに描かれている。周りが廃墟で、一棟だけ建物が残るという設定は、ドラマにもなった楳図かずおの漫画『漂流教室』を連想する人もいるかもしれない。日本の観客にとっても馴染みやすい設定だろう。
韓国では、何棟もずらりと立ち並ぶマンションの光景を目にすることが多い。韓国人にとってはマンションでの生活は身近な描写だ。映画では自治会での会議や揉め事なども描かれ、住民たちが「マンションは住民たちのものだ!」「マンション万歳!」と叫び、外敵をやっつけていく。人々の強い共同体意識と、それが故の排外主義が巧みに描写されている。その中で揺れ動く人々の葛藤が面白い。
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本作は韓国映画のオールスターキャストが揃っている。ハリウッドでも活躍するイ・ビョンホンはもはや説明するまでもないだろう。妻を守ろうと奮闘するミンソンは、ドラマ「梨泰院クラス」が日本でも人気を博し、マーベル映画への出演も決まっているパク・ソジュン。ミンソンの妻、ミョンファはこちらも人気女優のパク・ボヨンが演じる。他にも、キム・ソニョン、パク・ジフ、キム・ドユンなど、人気・実力を兼ね備えた俳優たちがキャストを彩る。
そんな中、イ・ビョンホン演じるヨンタクは、度胸のある頼れる人物として当初は描かれている。だが、その目の奥には陰があり、触れられたくない過去を持つ。特に、ミンソン(パク・ソジュン)に語りかけるシーンが印象的だ。ヨンタク(イ・ビョンホン)の顔の半分が明るく照らされるが、もう半分は暗くどす黒い。照明を効果的に使った演出が光る。声にも凄みがある。
さらに、ヨンタク(イ・ビョンホン)は、マンションの住民たちで開く祭りのシーンも印象深い。ヨンタクがマイクを持って歌うと、ヨンタクの顔が画面いっぱいにクローズアップされる。極限状態のなかでリーダーに祭り上げられた男が歌い、踊る。笑えるシーンにも見えるが、真剣そのもののヨンタクの顔が画面全体に緊張感をみなぎらせていて、その後の展開を暗示している。顔だけでこれほど語れる俳優は、イ・ビョンホンの他にいないのではないだろうか。このシーンを見るだけで映画館に行く価値があるだろう。
取材時、イ・ビョンホンはこの場面の意図について次のように語ってくれた。
「あのシーンは私にとっても印象的でした。笑いと緊張が行ったり来たりしますよね。住民たちは楽しんで踊っていますが、奪ってきた食糧を食べている。とても皮肉が効いていて、裏には暗いストーリーが潜んでいます。ちなみに、あそこで踊るダンスは『おじさんダンス』のうまい後輩から教えてもらいました」
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最後に、オム・テファ監督、イ・ビョンホン、パク・ソジュン、パク・ボヨンから、アジアの映画ファンへのメッセージを紹介したい。
オム・テファ監督「マンションという舞台はアジアに共通するので、海外のファンがどのように見てくれるのか気になります」
イ・ビョンホン「とにかく映画を楽しんでほしい。今後は海外のファンとの交流も持ちたいと思っています」
パク・ソジュン「迫力のあるサウンドが魅力なので、ぜひ劇場で見てほしいです」
パク・ボヨン「今後も作品を通してファンと会えることを楽しみにしています」
韓国では観客300万人を突破し、日本でもヒットが期待される本作。ぜひ公開を楽しみに待っていてほしい。
『コンクリート・ユートピア』
監督/オム・テファ
出演/イ・ビョンホン、パク・ソジュン、パク・ボヨンほか
2023年 韓国映画 2024年1月5日(金)より全国公開予定。
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