いまなお先進的で鋭い、1990年代台湾の青春群像劇『エドワード・ヤンの恋愛時代』が4Kで蘇る!

  • 文:韓光勲

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台湾の映画監督であるエドワード・ヤンは、没後15年以上が経った現在でも影響力を保ち続けている。2017年に日本でのリバイバル上映が話題となった『牯嶺街少年殺人事件』(1991年)の後、1994年に撮られた『エドワード・ヤンの恋愛時代』が今夏、4Kでスクリーンに蘇る。

本作は、2022年のヴェネチア国際映画祭でプレミア上映され、世界中の映画祭で相次いで上映された。「90年代の台北で描かれるすべてのことは、21世紀の大都市でも起こることだ」と絶賛された作品だ。

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© KailidoscopePictures

舞台は、1990年代前半の台湾。経済発展、西洋化、民主化が加速度的に進んでいた時代である。企画会社を経営する女性社長のモーリー(ニー・シューチュン)は、経営不振に悩み、婚約者であるアキン(ワン・ポーセン)との仲もうまくいっていない。モーリーの下で働く親友のチチ(チェン・シァンチー)は、モーリーの仕事ぶりに振り回され、恋人であるミン(ワン・ウェイミン)との雲行きも怪しい。モーリーとチチを中心としながら、2日半という時間設定のなかで、総勢10人の男女が描かれる。

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本作は登場人物ひとりひとりを丁寧に描く群像劇である。さまざまな場面が描かれるが、それぞれのシーンでは長回しが多用され、登場人物たちの会話が詳細に描かれ、その会話が笑いを誘う。1990年代の台湾を見事に切り取っているのだが、いまの観客が見てもリアルで、新鮮に聞こえる。働く女性たちの言動を丁寧に描いているという点も、現在の観客なら違和感なく受け入れやすいだろう。30年前の台湾を描きながら、すごく先進的な映画なのだ。

モーリーのオフィスにやってきた男性が「中国人の情とビジネス論」をとうとうと語り、モーリーを口説くシーンがある。近年、このように男性が女性に対して知識をひけらかして解説するような態度は「マンスプレイニング」と呼ばれ、批判されている。エドワード・ヤンは30年近くも前にこの「マンスプレイニング」を意識的、かつ批判的に描いているのだ。さらに、少し引いたショットで長回しが使われているので、男性がますます滑稽に見えてくるのが面白い。エドワード・ヤンの視線はあくまで客観的で、鋭い。

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© KailidoscopePictures

いま見ても先端的で新しい『エドワード・ヤンの恋愛時代』。4Kで復活した本作をぜひスクリーンで見てほしい。

『エドワード・ヤンの恋愛時代』

監督・脚本/エドワード・ヤン
出演/ニー・シューチュン、チェン・シァンチーほか 1994年製作 
8月18日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開。
www.bitters.co.jp/edwardyang2023/#

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