漆器ブランド・セキサカから、自由な余白をもつプロダクトが登場

  • 文:猪飼尚司(デザインジャーナリスト)
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リサイクル耐熱ABS樹脂、ウレタン吹付塗装。H35×W270×D136㎜。各¥3,300 photo: Kyoko Kataoka

漆器には、昔ながらの天然木に漆を塗って仕上げるものの他にもうひとつ、樹脂にウレタン塗装を施した合成漆器が存在する。量産が可能なので安価なうえ、乾燥や湿気にも強く使い勝手がいいのが特徴だ。越前漆器の産地、福井県鯖江市で300年以上漆器に携わってきたセキサカは、現代の暮らしに合う新しいプロダクトのかたちを求めるべく、デザイナーの熊谷彰博に相談をもちかけた。

「ある決められた用途のためにデザインを考えるのがうつわの基本。でも、今回はひとつの目的は定めず、かたちからどこまで自由な使い方ができるかという仮説を立て考えていきました」

熊谷は、漆器の木地を削る時に使うろくろが回る様子をヒントに、ハーフパイプがくるりと一周まわり込んだような形を想定。「誰しもが立ち寄り、それぞれに自由な時間を過ごす公園や広場のような存在になれば」という思いから、製品を「パーク(PARK)」と名付けた。

楕円形の中央に入れた凸部が、うつわの内部空間を緩やかに仕切ることで、多様な使い勝手が生まれる。

主菜と副菜をワンプレートに盛り付ける食器として使うことはもちろん、キッチンではカトラリーケースにしたり、デスクトップに置けばステーショナリーを整理するオーガナイザーとしても使える。さらに玄関脇で鍵やアクセサリーの収納場所にしたり、ベッド脇に置いてスマートフォンやメガネを入れておくのもいいだろう。

日常の風景に自然に馴染んでいくことを考え、マットな質感で、サンド、コンクリート、フォレスト、ブリックの4つの落ち着いた色味にもこだわった。

「使い方に正解はありませんから、表裏を反転させるなど、予想外の使い方を試していただけると僕たちも嬉しいです」

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デスク周りでは小物入れとして、食卓ではうつわとしても使用できる。食洗機にも対応。 

パーク

セキサカ
https://sekisaka.jp

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※この記事はPen 2023年9月号より再編集した記事です。