【東京クルマ日記〜いっそこのままクルマれたい〜】 第176回“「ポルシェ・ヘッズ」なら愛さずにはいられない⁉ 熟成のような進化を遂げた永遠の自然吸気モデル”

  • 写真&文:青木雄介
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フロントがダブルウィッシュボーン式サスペンションに換装された第7世代の911GT3。 

ようやく最新ポルシェ911(992型)の自然吸気最高峰エンジンモデル「GT3」に乗った。新型の911GT3が悪いわけがない。だが上級スポーツモデルとして双璧をなす911ターボの進化ほどわかりやすくもない。GT3のような軽量化とスペックの強化を追い求めたハードコアモデルって、なにかが劇的に変わることはないのね。

特に911GT3は、地に足の着いた年次改良で熟成のような進化をする。先代のGT3が「永遠に不滅」レベルで名車会入りしたような記憶なのに「もう新型を発表するのですか?」って印象でね。人は記憶に残る名モデルに出合うと人生最後の走馬灯用メモリに、そのまま残しておきたくなるものらしい(笑)

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フルバケットシートは、エクステリアと同じシャークブルーで彩られている。

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なんとなく二の足を踏んでいた矢先に乗ったのが、ミッドシップスポーツの718ケイマンGT4RSですよ。同じ4ℓ自然吸気水平対向エンジンを載せてるのだけど、やっぱりリアエンジンならどうなるか気になったわけ。

乗ってみると、エンジンをかけた瞬間から、どうにも最高なのね。718ケイマンのコーナリングのオン・ザ・レール感は史上最高と書いたけど、911GT3はもっとすごかった。ガチーンと音が鳴り響く感じ。見えないレールはより太く強力になる。718ケイマンでは思いきりフィーチャーされていたエンジンも、911ではエンジン、フレーム、ブレーキが円を描くイメージでお互いを補完しながら作用し、拡張した上でバランスしている。

もっともそれがわかるのはハンドリング性能で、一般道の峠レベルではどのドライブモードを選んでも余裕のスーパーフラット。痺れるのは高速コーナーで、ステアリングに手のひらを押し付けるだけで繊細に曲がる「極み」のハンドリング精度。ドライブシャフトの回転が掌に、あふれ出るトルクがバケットシート越しに伝わってくる。アクセルをほんのわずかに踏み込めば、繊細に車体は加速するしコーナーでは車体が安定する。

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ブラックレザーのインテリアにはロールケージが組まれ、オプションより6点式シートベルト、消火器も選べる。

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ブレーキもやっぱり高い精度で車体をコントロールする。もともとPDKは「オート」にセレクトすると減速時に積極的にシフトダウンしていた印象があるんだけど、GT3仕様のPDKは「エンブレが必要ならパドルシフトを使ってください」と少しばかり素っ気ない(笑)

このパドルシフトこそ、サーキットを走るためのスイッチですよ。ESC(エレクトリック・スタビリティ・コントロール)とトラクションコントロールを解除するとステアリングはナチュラルになり、エンジンはいっそう軽快に吹け上がる。思う存分、自然吸気フラット6の叫びを脳幹に直結して堪能しよう。目覚めたようにあらわれるRR(リアエンジン後輪駆動)の唯一無二の挙動に歓喜の声を上げるはず。

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フロントは20インチ、センターロック式ホイールにセラミックコンポジットブレーキが装着されている。

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718ケイマンはミッドシップの素直な挙動で、あらゆるドライバーを魅了しようとするのに対して、911はわかる人にはわかる乗り味でドライバーの経験値を計ってくるところがある。

「911か、それ以外か」。そんなファンを超えたポルシェ・ヘッズのためにあるモデルなのがよくわかるんだ。

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4段階調整が可能な、アイコニックなスワンネック式リアウイング。これによりエンジンフードは特殊工具がないと開けられない。

ポルシェ 911 GT3

サイズ(全長×全幅×全高):4573×1852×1276㎜
エンジン:水平対向6気筒DOHC
総排気量:3996cc
最高出力:510PS/8400rpm
最大トルク:470Nm/6100rpm
駆動方式:RR(リアエンジン後輪駆動)
車両価格:¥22,960,000
問い合わせ先/ポルシェ コンタクト
TEL:0120-846-911
www.porsche.co.jp

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※この記事はPen 2023年7月号より再編集した記事です。