【ミラノデザインウィーク2023】工芸の技を重ね合わせ、生まれ変わるロエベの一脚

  • 写真:フランキー・ヴォーン 文:猪飼尚司

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細く紡いだ繊維や切り出した革を、人の手で1本1本丁寧に重ねたり、交差させたりしながら仕上げていく織り技。時代の流れとともに知恵を蓄積し、発見を繰り返しながら、我々はカゴや衣服をはじめとしたさまざまな暮らしの道具を開発してきた。

1846年創業のブランド「ロエベ」は、歴史に裏付けられた確かなものづくり哲学を継承しながら、2013年のジョナサン・アンダーソンがクリエイティブ ディレクターに就任以降、さらに現代におけるクラフトの価値と真意を追求すべく、多様な取り組みを行っている。

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今年のミラノデザインウィークでロエベがフォーカスしたのは、ウィンザーチェアの原型とも呼べるカントリーチェア。ハの字に開いた脚、何本ものスポークが座面に直接取り付けられたこの椅子は、基本的な形を変えることなく、何世紀にもわたり愛されてきた普遍的な生活の道具だ。世界各国から集められた素朴な佇まいの椅子一つひとつに、ロエベは個性と表情を与えるように巧みな装飾を施していった。

 

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ロエベによれば、元来カントリーチェアは農民たちのあいだで自然発生的に誕生したもので、つくり続けられていた日用品のため正式な記述も少なく、どこを起源年、どのように発展していったのかという進化の歴史を追うことは難しい。しかしながら、古いものは10世紀頃にはしており登場しており、1000年以上の時代を生き抜いたにも関わらず、基本的な形状と構造は変えぬまま現代へと受け継がれているのは驚くべき事実だ。

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これまで目立つ存在ではなかった“民衆の椅子”を、デザインの力によって生まれ変わらせるべく、ロエベは世界から30脚のカントリーチェアを収集。昨年のミラノで見せたカゴに多様な編みを加えながら修復&装飾していく技法を踏襲しながらも、今年は椅子の特徴でもある背のスポークを効果的に生かし、イギリスの工房とのコラボレーションにより、バリエーション豊かな表現を模索していった。

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編みのために使われた素材は、自社製品で用いる革やラフィア(ヤシの葉を加工した繊維)のほか、サーマルブランケットに使用するアルミ蒸着した極薄フィルム、さらにシャーリングレザー、フェルト、ビニールなど多種多様。素材の特徴を巧みに捉えながら、ロエベの創造性と工房の高い技術力によって独自のパターンを展開し、もとは控え目で、地味とも呼べる椅子たちが、装飾よって、ときに若々しく華やかで、ときに高貴で品格のある姿を示している。

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会場となったパラッツィオ・イシンバルディでは、世界各国のさまざまな地域、時代のアンティーク22脚とベルギーの家具工房、ヴィンセント・シェパードが新しく製作した8脚の、計30脚を展示。自由に自分好みのファッションを楽しむ人のように、一脚一脚が生き生きして、色めいて見える。中央にはロエベがモチーフとするキノコのオブジェと、それに呼応するキノコ柄の椅子もお目見えし、来場者も興味深く見入っていた。 

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