1. GRAND SEIKO(グランドセイコー)
キャリバー9S 25周年記念限定モデル SBGR325
1998年に登場し、グランドセイコーに初搭載された機械式ムーブメント「キャリバー9S」の開発25年を記念した限定モデル。当時と同サイズの37㎜径のケースに、キャリバー9Sを製造する「グランドセイコースタジオ 雫石」に近い岩手山の山頂から見上げる空の情景を、サンバースト加工を施したスカイブルーのダイヤルで巧みに表現した。
---fadeinPager---
2. ZENITH(ゼニス)
デファイ スカイライン
メタリックなパステルグリーンの文字盤には12時位置の星を起点としたサンバースト仕上げを施し、ゼニスの象徴である四芒星のパターンを復刻してあしらった。ファセットカットのベゼルを備えた八角形のスタイリッシュなケースは、腕に収まりやすい36㎜のやや小ぶりなサイズ。簡単に交換できるクイックストラップチェンジ機構を装備。
---fadeinPager---
3. BREITLING(ブライトリング)
ナビタイマー オートマチック 35
美しいサンレイ加工を施したミントグリーンの文字盤に、秒針先端に効かせた鮮やかなレッドが映える。ベゼルにはビーズをあしらってエレガントな装飾を施す一方で、パイロットウォッチの伝統を継承する回転計算尺を備えるほか、COSC公認クロノメーターの機械式ムーブメントの搭載や、7連のメタルブレスレット仕様など、硬骨なブランドの筋も通っているアンビバレンツさも魅力だ。
---fadeinPager---
淡いペールトーンのニットやスプリングコートを街で見かけると、春の兆しと次なる流行の訪れを感じるように、腕時計にも新しい波が押し寄せている。特に、この1〜2年の傾向としてスカイブルーやミントグリーンといった、ファッション性の高いカラーリングを採用するモデルが突如として見られるようになった。その多くはケース径36㎜前後で、男性からするとやや小ぶりなミッドサイズにペールカラーの文字盤を合わせた新作が続々と登場している。
もともとここ数年、男性用腕時計ではサイズダウンのトレンドが起きていた。1990年代後半に起こった“デカ厚”ブームという真逆の流行により40㎜を突破していたスタンダードサイズは、21世紀に入って再びゆり戻され、現在はアンダー40㎜が一定のボリュームゾーンを形成している。
一方でレディスウォッチの事情もある。こちらはケース径28㎜前後が定番であったが、じりじりと上昇し、33㎜以上も射程に収めている。つまりは34〜37㎜はジェンダーフリーなゾーンで、ペアウォッチやシェアウォッチの主戦場でもある。この傾向は同時にレディス特有のエレガントさやビビッドなカラーを伴ってきた。ミッドサイズ×ペールトーンの腕時計が誕生した背景がここにある。
ユニセックスとはいうものの、これらのモデルは男性には新鮮に映る。白か黒か(最近では紺か)、というメンズウォッチの暗黙の常識にとらわれない自由で奔放な色使いは、さまざまな可能性を広げてくれるのである。
並木浩一
1961年、神奈川県生まれ。時計ジャーナリスト。雑誌編集長など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。
※この記事はPen 2023年4月号より再編集した記事です。