綾瀬はるか「初夜から予想外の展開に」。謎多き濃姫の生涯と、木村拓哉演じる信長に感じた”強さ”とは?

  • 写真:長山一樹(S-14)
  • 文:SYO
  • スタイリング:山本マナ
  • ヘア&メイク:中野明海
Share:

明智光秀はなぜ「本能寺の変」を起こしたのか? 「関ヶ原の戦い」で真の裏切り者は誰だったのか? Pen最新号「戦国武将のすべて」では、近年の研究によって明らかになった戦国武将たちの知られざる姿を解き明かしつつ、映画『レジェンド&バタフライ』、NHK大河ドラマ『どうする家康』など、話題作の魅力をひも解く。さらに戦国時代を舞台にした人気漫画・ゲームなどの制作秘話に加え、軍師の働きや名城の見どころ、天下分け目の合戦模様や大名の組織運営まで、あらゆる角度から戦国武将たちの姿に迫る。

その中から、1月27日の公開にせまった『レジェンド&バタフライ』に出演する綾瀬はるかのインタビュー記事を抜粋・再編集して掲載する。

Pen最新号「戦国武将のすべて」
【通常版】Amazonでの購入はこちら
【特装版】Amazonでの購入はこちら

1月27日公開の映画『レジェンド&バタフライ』で、織田信長の正室・濃姫役を演じた綾瀬はるか。その人生をたどることで見えてきた意外な人物像とは?

DMA-LB05_cut03_0220.jpg
ジャケット¥470,800、シャツ¥105,600、スカート¥256,300、ジャケットに付けた襟¥84,700/すべてジル サンダー(ジルサンダージャパン0120-919-256) パール付きリング¥308,000、イヤリング¥865,700/ともにタサキ(タサキ0120-111-446)

時に迷い、もがき、涙を流し、葛藤する生身の人間としての織田信長――。旧来の慣習に縛られない革新者のイメージや、比叡山延暦寺の焼き討ちに見られるような冷酷な〝魔王〟としての顔が広く流布する中で、これまで描かれることのなかった弱さや苦悩を抱えた姿に光を当てたのが、映画『レジェンド&バタフライ』だ。

尾張のいち地方領主の家に生まれた信長と、隣国・美濃を治める斎藤道三の娘で、政略結婚により正室となった濃姫(帰蝶)との、出会いから別離までの30余年の軌跡を木村拓哉と綾瀬はるかが演じた。

「織田信長さんという人を演じているからこそ、今回はより木村さんの佇まいの強さを感じました。アクションでも感情面でも、どんな芝居をぶつけても絶対に受け止めてくれるという安心感。初夜のシーンも着流しに合わせて木村さんとアレンジしました」

【WEB使用OK】『レジェンド&バタフライ』場面写真①.jpg
濃姫役の綾瀬はるかと、織田信長を演じる木村拓哉。ふたりにとって初の夫婦役となる。

---fadeinPager---

実在の人物でありながら、その存在は謎に包まれた濃姫。マムシと恐れられた美濃の斎藤道三の娘であり、信長の正室となったことの他は、その名前ですら確たる史料がほぼ現存しない人物だ。後の江戸時代に書かれた読本(よみほん)や軍記物の記述をもとに濃姫(美濃の姫)とも、帰蝶とも呼ばれる。

「確かに情報は全然ないのですが、脚本の古沢良太さんがすごく面白く魅力的に書いてくださいましたし、『もし濃姫が男性だったら天下統一するぐらいの器量があった』という設定が、演じる上でヒントになりました。大友監督ともお話しして、男勝りで聡明な性格や、姫なので武道や茶道は完璧にこなせる人物という骨格が出来上がり、そこに『濃姫にとっては3回目の結婚だからもう慣れている』という状況を踏まえて人物像をつくっていきました」

さらに、大友監督が重視したのは濃姫の“変化”だったという。

「隙あらば信長さんの寝首をかこうというスパイ的な立場で送り込まれた彼女が、彼に触れていくなかで本当に恋をしていくさまを撮りたいです、と監督からお話があり、その上で本番では『まずはやってみて』と任せていただけた」

DSC07444.jpg
史実では謎多き濃姫を、快活で力強さとたくましさを備えた人物として綾瀬さんは演じた。

---fadeinPager---

「言うは易く行うは難し」ではないが、本作で綾瀬さんに託されたタスクは多岐にわたる。所作の一つひとつに至るまで説得力をもって“魅せる”領域に達しているのは、恐れ入るばかりだ。

「たとえば、重心を上下動かさない歩き方は強く意識しました。大変なのは、角を曲がる時。着物の中で打掛(うちかけ)を蹴っているのですが、簡単そうに見えて難しいんです。そして、彼女の精神力を表現するために、声に張りや力強さを込めました。『笑止千万!』という感じで、思い切りやりました」

片や、濃姫の内面には「理解するのに苦労はなかった」とも。

「今回演じた濃姫に対して、昔の人という感覚がないんです。この時代の結婚は家のためという側面があったから、好きだのなんだの自分の気持ちをストレートに言えないのが当たり前だっただろうなと思います。でも、濃姫に限ってはもし現代に生きていても素直じゃなさそう(笑)。仮に離婚するという話になっても、『そっちから言えば?』と言うでしょうね」

サブ①58DSC03270 (1).jpg
織田信長が家督を継ぎ当主となる前の16歳から、本能寺の変で死去する49歳までの激動の人生を演じた木村拓哉。天下布武の目的のために、鬼と化し、少しずつ心身を崩していくさまは、観る者の心を惹きつける。

---fadeinPager---

時代を問わない普遍性が、本作には流れていると語る綾瀬さん。

「当たり前ですが、人はひとりでは生きていけない。たとえ天下を統一し、富を得たとしても人とのつながりがいちばん大事だと私は思うし、本当に大切なものを愛しむ尊さを改めて感じました。自分にとって最愛の人を蔑ろにするとこうなってしまうかもしれない、という見方もできるし、ふたりを観て切ないと感じるのは自分の中にどこか重なる感情があるからだとも言えます。信長さんがどんどん大きくなっていった陰に妻の濃姫さんの存在があったという設定は驚きでした。ふたりで案を出し合って天下統一を目指すさまは観たことのない歴史の新たな側面だと感じますし、面白く観ていただけると思います」

re115 DSC07557.jpg
00047 DSC00797.jpg
DSC07000.jpg
DSC05255.jpg
明智光秀役は宮沢氷魚、森蘭丸は市川染五郎、木下藤吉郎(羽柴秀吉)は音尾琢磨、徳川家康は斎藤工と、脇を固める俳優陣も個性派揃い。

---fadeinPager---
17DSC04394.jpg
濃姫のいちばんの理解者として侍女である各務野を中谷美紀が演じた。

綾瀬はるか

1985年、広島県生まれ。テレビドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ』『ホタルノヒカリ』『JIN-仁-』などに多数出演。NHK大河ドラマ『八重の桜』でも主演を務める。『海街diary』では繊細な演技が高く評価され数々の映画賞を受賞。『精霊の守り人』『奥様は、取り扱い注意』に続き、本作では切れ味鋭いアクションを披露。

『THE LEGEND & BUTTERFLY(レジェンド&バタフライ)』

監督/大友啓史
脚本/古沢良太
出演/木村拓哉、綾瀬はるか、宮沢氷魚、市川染五郎ほか 
2023年 日本映画 168分 1月27日より全国公開。
https://legend-butterfly.com

pen1228_re.jpg Pen最新号の表紙は、映画『レジェンド&バタフライ』で織田信長を演じる木村拓哉の【通常版】と、原哲夫による『花の慶次』の【特装版】の2パターン。

「戦国武将のすべて」

2023年2月号増刊 No.537 ¥1,100(税込)

【通常版】Amazonでの購入はこちら
【特装版】Amazonでの購入はこちら

関連記事