「大河ドラマに新しい風が吹く作品」、『どうする家康』で大河初出演の有村架純にインタビュー

  • 写真:土屋崇治(TUCCI)
  • 文:SYO
  • スタイリング:瀬川結美子
  • ヘア&メイク:尾曲いずみ
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12月28日発売のPen最新号「戦国武将のすべて」では、戦国武将たちの知られざる姿を解き明かしつつ、映画『THE LEGEND & BUTTERFLY』、NHK大河ドラマ『どうする家康』など、話題の大作の魅力をひも解く。さらに戦国時代を舞台にした人気漫画・ゲームなどの裏側や制作秘話に加え、軍師の働きや名城の見どころ、天下分け目の合戦模様や大名の組織運営まで、あらゆる角度から戦国武将たちの姿に迫る。

本記事では、その中からNHK大河ドラマ『どうする家康』に出演する有村架純のインタビュー記事を抜粋・再編集して掲載する。

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連続テレビ小説『あまちゃん』でブレイクしてから約10年。有村架純が、遂にNHK大河ドラマに初出演。『どうする家康』で託されたのは、徳川家康の正室・瀬名(築山殿)。一般的には悪女とされている彼女を、再解釈して快活な人物として演じている。

「脚本の古沢良太さんとクランクイン前にお話しして、家康さんにとって家というものが癒やしの場所で、瀬名は温かな気持ちになれる存在だと最初に伺いました。印象的だったのは、古沢さんが『歴史上の出来事の“なぜそうなったのか、の部分は、後の人間が推測し、つくり上げた創作でしかない』とおっしゃっていたことです」

自らも築山殿について調べ、「情報が少ないぶん捉え方もさまざまだと気づいた」と語る有村さん。

「家康さんと仲が悪かったという説も本当はわからないし、家康さんも『鳴かぬなら鳴くまで待とうほととぎす』の句に代表されるように忍耐強い人物という説と、実は短気だったのでは?という見方の両方がありますよね。結局、史料に残っていることがすべてじゃない。だったら、私の頭の中で描いた人物像がもしかしたら本人にすごく近いかもしれないと思えるようになった。その上で今作は、たくさん笑ったり明るく振る舞う人物として瀬名を演じています」

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現在の東海地方一帯を治めていた駿河国の大名・今川義元の姪であったとされる瀬名。今川家の人質であった元康に嫁ぎ、嫡男・信康を出産。元康が今川家と断交し、織田信長と同盟を結ぶと、瀬名の立場も悪くなっていった。 提供:NHK

固定観念にとらわれずに生きた人物として扱う意識は、現場全体に流れている。時代劇にはつきものの所作の指導においても、あくまで「芝居の邪魔にならない程度に」と配慮が行き届いているそう。「手を叩かない、指をささない、物を拾う時や歩く際の所作など“姫”としての立ち振る舞いには気を付けつつ、柔軟にいろいろと試せる現場です。脚本自体が、役者を制御しないつくりになっているのも大きいですね。それぞれがやりたい動きや表現を追求しても成立する世界観ですから。それでいて各々の心情は汲み取れるし、エンタメ性も強い。松本さん演じる家康もチャーミングで、大河ドラマに新しい風が吹くような作品になっているとも思います」

自由度の高い現場に身を置くことで、有村さん自身の戦国時代への認識にも変化が生じている。従来は「死と隣り合わせの殺伐とした時代」という感覚だったが、いまにつながる“常”を見出した。

「戦国時代も鳥は鳴くし、花は咲くし、空は美しい。激動の時間の中でもそこは変わらずにあるんだと気づきました。現代でも、どれだけ落ち込んでも太陽は照らしてくれるし、変わらない日常が救いにもなる。その感覚は普遍的なものだと思います。死と隣り合わせの時代でも、咲いている花を綺麗だと思うことは許されていい。うした部分は『どうする家康』の中でもきちんと描かれています」

この気づきが、瀬名の明るさに明確な根拠と深みをもたらした。「彼女が明るく振る舞うのは、この時代を生き抜く覚悟、親から学んだ武家の気質、そして家康さんを支える存在でありたいという想いの表れから。そう思って演じています」

有村架純

1993年、兵庫県生まれ。2010年に『ハガネの女』で俳優デビュー。13年の連続テレビ小説『あまちゃん』で話題を集め、同『ひよっこ』では主演を務める。21年の映画『花束みたいな恋をした』で第45回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を獲得。Netflix映画『ちひろさん』が23年2月23日に公開&配信予定。

pen1228_re.jpg Pen最新号の表紙は、映画『レジェンド&バタフライ』で織田信長を演じる木村拓哉の【通常版】と、原哲夫による『花の慶次』の【特装版】の2パターン。

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2023年2月号増刊 No.537 ¥1,100(税込)

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