『すずめの戸締まり』声優・原菜乃華&松村北斗インタビュー。“バディ”の絆を発揮した声の力

  • 写真:後藤武浩
  • スタイリング:山田安莉沙 (原菜乃華)、藤長祥平 (松村北斗)
  • ヘア&メイク:馬場麻子 (原菜乃華)、髙橋幸一 (ネステーション)(松村北斗)
  • 編集&文:久保寺潤子

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11月11日に公開され、11月28日時点で映画観客動員ランキング3週連続首位を獲得、ますます世間を賑わせている映画『すずめの戸締まり』。


2023年1月号本誌では、新海監督をはじめ、声優を務める原菜乃華&松村北斗、CGや美術、音楽に関わる制作スタッフにインタビュー。音楽ジャーナリスト・柴那典による音楽についての考察のほか、山田智和、瀧本幹也らに聞く新海作品の魅力や見どころ、野村訓市が語る新海作品におけるRADWIMPSについてなど、クリエイターからの視点も必読だ。Amazonでの購入はこちら


本記事では、発売中の本誌の中から、主人公、岩戸鈴芽と宗像草太の声を演じた原菜乃華&松村北斗のインタビューを紹介。声優初挑戦の現場や作品の魅力について話を聞いた。

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左:ドレス¥60,500、パンツ¥42,900/ともにLautashi(BRAND NEWS TEL:03-3797-3673) その他はスタイリスト私物 右:ジャケット¥355,300、パンツ¥266,200/ともにボッテガ・ヴェネタ(ボッテガ・ヴェネタ ジャパン TEL:0120-60-1966)その他はスタイリスト私物

オーディションで1700人の中からヒロインに抜擢された原菜乃華は、中学1年生の時に観た『君の名は。』を、生涯忘れられない作品のひとつに挙げている。一方同じくオーディションで抜擢され、草太役を演じた松村北斗も声優は初挑戦。憧れの新海作品に参加するプレッシャーと興奮を抑えられなかったという。

──監督とはどのようなやり取りが行われたのでしょうか。

 監督は「そのままでいいですよ」と言ってくださったので、あまりつくり込まずに現場に入りました。初めは自分の声がイヤで、耳を塞いでいたくらいだったんですが、何度かトライ&エラーを繰り返すうちに、お芝居をしている瞬間と、後で自分の声を聞いた時のズレが縮まっていきました。

松村 新海監督は僕の声の色を見定めて選んでくださったのかもしれないですが、僕は声優としての知識や技術はゼロに等しく、これだけのものが完成したのは奇跡としか思えないんです。監督や音響スタッフの方たちの力に導かれてここまで来たという感じです。草太はこれまでの新海作品に登場した男の子のキャラクターとは違う新しい人物像なので、僕自身も聞いたことのない声音が出せたらと考えて、監督と詰めていきました。

──全国を旅しながら扉を閉めていくストーリーが展開するなか、印象に残っているセリフはどんな言葉でしたか?

 アフレコに入る前に監督から小説版をいただきました。そこに鈴芽のバックボーンや思っていることが描かれていたので、台本を読む時には、小説との擦り合わせを自分なりに行いました。「(死ぬのは)怖くない」というセリフは印象的でしたね。あそこに鈴芽の死生観のようなものが色濃く表れていると思います。高校生の女の子がなかなか言える言葉じゃない。あのシーンは鈴芽が背負ってきたものが垣間見える瞬間です。

松村 僕は戸を閉める時に唱える祝詞の言葉ですね。実は親友が大学で神道学を専攻していて、彼の影響で祝詞の言い方を真似していたことがあるんです。一緒に伊勢神宮に旅行に行ったりして、神社や祝詞には親しみがあります。

 私はずっと隣で松村さんが「お返し申す!」って言うセリフを聞いていて、格好いいな〜って思っていたので、自分が言った時は「よっしゃ!」って、楽しかったですね。

松村 草太は鈴芽と出会う前からずっとひとりで閉じ師をやってきたのに「あれ?そこ俺の見せ場なんだけどな」と(笑)。ふたりで扉を閉めるシーンからだんだん関係性や役割が変化していくので、あそこは好きなシーンですね。

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──アフレコを進めるうちに、演じていることを忘れるくらい役に没入していたそうですね。

松村 この作品はふたりが協力して怪物に挑む、バディものの側面が強いですよね。草太の風貌にはひとりで戦っている強さが漂っていますが、相棒である鈴芽というキャラクターに強さを宿らせたのは、原さんの芝居の力だと感じます。草太が鈴芽に圧倒されたように、僕も物語が進んでいくにしたがって原さんに頼もしさを感じた。とても珍しい経験でしたね。

 私も初めて松村さんの芝居を見せていただいた時、草太さんのビジュアルから想像していたまんまの声が聞こえてきて。隣で草太さんの声を聞いていると、自然と涙が浮かぶシーンもありました。松村さんによって鈴芽にしてもらったという感じがします。

──最後に、『すずめの戸締まり』の魅力をお聞かせください。

 鈴芽は笑顔の裏に抱えているものもあるんですが、全体を通してコミカルなシーンが多いです。人とのつながりによって最終的に自分の大切なものに気づくんです。見終わった後には、周りの人はもちろん、自分のことも大切にしてあげたい、と思えるはずです。

松村 今回の作品は前2作と比べていちばんファンタジー色の強い物語ではないでしょうか。アクションもあって映像や音も派手ですが、根底には誰もが共感できる現実や繊細な心理描写もあって、新海作品のオールスターみたいな作品だと思います。

原 菜乃華

東京都出身。映画『罪の声』(2020年)、ドラマ『ナイト・ドクター』(21年)、『真犯人フラグ』(21~22年)、『ナンバMG5』(22年)などに出演。『すずめの戸締まり』のオーディションでは1,700人を超える応募者の中から、ヒロインの岩戸鈴芽役に選ばれた。


松村北斗

静岡県出身。アイドルグループSixTONESのメンバーとして活躍するほか、俳優としても話題作に出演。ドラマ『私立バカレア高校』(2012年)、連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(21~22年)、映画『坂道のアポロン』(18年)、『ライアー×ライアー』(21年)などに出演。11月2日に両A面シングル『Good Luck!/ふたり』をリリース。

『すずめの戸締まり』

2022年11月11日(金)より全国東宝系にて公開中

原作・脚本・監督/新海誠  
声の出演/原菜乃華、松村北斗、深津絵里、染谷将太、伊藤沙莉、花瀬琴音、花澤香菜 、神木隆之介、松本白鸚
キャラクターデザイン/田中将賀 作画監督/土屋堅一
美術監督/丹治匠 音楽/RADWIMPS 陣内一真
https://suzume-tojimari-movie.jp/

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