新海誠監督の集大成にして最高傑作! 最新作『すずめの戸締まり』が描く、少女の“解放”と“成長”

  • 文:上村真徹
  • 画像提供:東宝

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©2022「すずめの戸締まり」製作委員会

2022年11月11日(金)に公開される映画『すずめの戸締まり』。11月28日(月)発売のPen本誌では「新海誠の世界を泳ぐ」と題して全24ページに及ぶ特集を掲載。これに先駆け、本記事では、映画のあらすじやキャスト・スタッフ、見どころなどを紹介する。

社会現象的ヒット作『君の名は。』で自らの名前と才能を広く世間に知らしめ、今、最も新作が期待されるアニメーション作家、新海誠。

2022年11月11日(金)、前作『天気の子』から約3年ぶりとなる待望の最新長編アニメーション映画『すずめの戸締まり』が全国東宝系にて公開。あらすじと見どころを紹介する。

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【あらすじ】
向こう側から訪れる災い…、17歳の少女が“扉”を閉める冒険へ

これまで“新海ワールド”と呼ばれる繊細な映像美や重厚なシナリオで見る者を魅了し続け、世界から最も注目されるアニメーション監督へと飛躍した新海誠。そんな気鋭のクリエイターが、“災い”をテーマに新境地へと挑んだ最新作『すずめの戸締まり』が劇場公開される。

九州の静かな町で叔母と2人で暮らす17歳の女子高校生・岩戸鈴芽(すずめ)。彼女は広大な廃墟の中、幼い自分が草原をさまよい歩く不思議な夢をよく見ていた。

そんなある日、「扉を探してるんだ」という旅の青年・宗像草太と出会う。その浮世離れした雰囲気が気になって彼の後を追ったところ、すずめは山中の廃墟に迷い込む。そこで彼女が見たのは、古ぼけた扉だった。

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岩戸鈴芽●17歳の女子高校生。九州の静かな町で、叔母と二人暮らし。 ©2022「すずめの戸締まり」製作委員会
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宗像草太●”災い”をもたらす扉を閉める「閉じ師」の青年。扉を探す旅の途中ですずめと出会う。 ©2022「すずめの戸締まり」製作委員会

やがてすずめは、草太が“災い”をもたらす扉を閉めて鍵をかけることを使命とする「閉じ師」であり、廃墟にたたずむ扉を探す旅をしていることを知る。

そんな2人の前に突然、謎の猫・ダイジンが出現し、「すずめ すき」「おまえは じゃま」としゃべり出した次の瞬間、草太を椅子の姿に変えてしまう。それはすずめが幼い頃に使っていた、脚が1本欠けた小さな椅子だった。

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ダイジン●人の言葉を話す謎の白い猫。扉が開く場所に出没し、すずめたちを翻弄する。 ©2022「すずめの戸締まり」製作委員会
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すずめの椅子●草太は、すずめが幼い頃に使っていた子供用の椅子に姿を変えられてしまう。脚が1本欠け、3本脚で動く。 ©2022「すずめの戸締まり」製作委員会

その後、この世に“災い”をもたらす扉が日本各地で次々に開き始めていく。すずめは不思議な扉と小さな猫に導かれ、九州、四国、関西、そして東京と、日本列島を巡る“戸締まりの旅”を続けていく。

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【キャスト&スタッフ】
声優初挑戦の2人を豪華キャスト陣が支える

ヒロインのすずめを演じるのは原菜乃華。新海監督が1700人を超えるオーディション参加者の声をすべて聴き、抜擢した。声優初挑戦の若手女優ではあるものの、2009年に6歳で芸能界デビューを果たし、これまで映画『罪の声』やTVドラマ『ナンバMG5』などに出演し存在感を発揮してきた注目株。本作でもその実力をいかんなく発揮し、17歳の少女が体験する喜び、怒り、悲しみ、楽しみを感情豊かに表現している。

すずめの運命を変える閉じ師・草太に声を吹き込んだのも、同じく声優初挑戦となる松村北斗。彼もまた新海監督にオーディションで見出された。どこか浮世離れしている存在でありながら等身大な青年像を具現化している。

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すずめを演じるのは、1700人を超えるオーディションを勝ち抜いた原菜乃華。 ©2022「すずめの戸締まり」製作委員会
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岩戸環●漁協で働くすずめの叔母。すずめが幼い頃から二人で暮らし、その成長を見守るが、過保護な一面も。深津絵里が声を務める。 ©2022「すずめの戸締まり」製作委員会
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声優初挑戦の花瀬琴音が演じる、すずめと同い年の少女・海部千果(右)。 ©2022「すずめの戸締まり」製作委員会

フレッシュな2人を支える豪華キャストも要注目だ。

漁協で働くすずめの叔母・岩戸環を演じるのは、『悪人』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞などを受賞した深津絵里。環の同僚・岡部稔には、若手きっての個性派俳優の染谷将太。ヒッチハイクしていたすずめを拾う神戸のスナックのママ・二ノ宮ルミには、映画やドラマにとどまらず活躍の場を広げている伊藤沙莉。愛媛を訪れたすずめが出会う、同い年の少女・海部千果には声優初挑戦となる花瀬琴音。すずめの母・岩戸椿芽には人気声優の花澤香菜。草太の祖父・宗像羊朗には歌舞伎役者の松本白鸚。そして草太の友人・芹澤朋也を『君の名は。』で主人公を演じた神木隆之介と、そうそうたる実力派揃いだ。

劇伴を担当するのは、『君の名は。』『天気の子』に続いて新海監督と3度目のタッグとなるRADWIMPS。今回は世界を舞台に活躍する映画音楽作曲家、陣内一真と共作し、映像と音楽の一体化をより高い次元で実現している。主題歌「すずめ feat.十明」のボーカルは、TikTokで人気を集めているシンガーソングライターの十明が務め、繊細な歌声で映画に新たな感動を加える。

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【見どころ】
扉を閉じることで「希望」を描くロードムービー

新海監督が本作の構想として思い浮かべたことはふたつある。

ひとつは「場所を悼む物語」であること。すずめが“災い”をもたらす扉を閉めるために日本各地の廃墟をめぐる旅は、もはや壊すことも直すこともなく、これ以上発展することのないまま捨て置かれた地域への鎮魂の儀式と言える。

しかしそこに描かれているのは、“終わってしまう絶望”ではなく、あるべき手段で閉じるべきものを閉じて、きちんと終わらせてから新たな一歩を踏み出すという“希望”だ。そうしたポジティブなテーマ性は、すずめが旅先でさまざまな人々と紡いでいく出会いと別れからも感じ取れることだろう。

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すずめが歩む道の先で待つのは、見たこともない風景、人々との出会いと別れ、驚きと困難の数々…。 ©2022「すずめの戸締まり」製作委員会
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草太を演じるのは松村北斗。新海監督はオーディションで、「内面の豊かさ」を見出したという。 ©2022「すずめの戸締まり」製作委員会

もうひとつ、新海監督が描いた構想。それは「少女が異形の者と旅をする物語」にすること。脚が1本欠けた小さな椅子に変えられた草太は、不自由でありながらも自力で動き、その姿はどこかコミカルで愛嬌も感じさせる。

そんな彼がすずめとバディになって繰り広げる冒険は躍動的なアクションが満載で、“少女の解放と成長”をテーマにしつつ、軽やかなエンターテインメントとしても楽しませてくれる。

災害大国・日本が向き合うべき“災い”というテーマをファンタスティックに掘り下げ、想像もつかない“戸締まりの旅”に巻き込まれていくすずめの高揚感を、アニメーションならではの表現手法で描いた、一級品のアクション・エンターテインメント。新海監督の新境地にして集大成がここにある。

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『Pen』(11/28発売)で全24ページの大特集

11月28日(月)発売のPen本誌では、第2特集「新海誠の世界を泳ぐ」を24ページに渡って掲載。『すずめの戸締まり』を筆頭に、過去作品も振り返りながら新海作品の魅力をあらためて紐解いていく。

新海監督をはじめ、『すずめの戸締まり』で声優を務める原菜乃華&松村北斗はもちろん、CGや美術、音楽に関わる制作スタッフにもインタビュー。新海作品全てを詳細に研究する文芸評論家・榎本正樹には監督インタビューと文学性について、音楽ジャーナリスト・柴那典には音楽についての考察を寄稿してもらった。さらに、山田智和(映像作家・映画監督)、瀧本幹也(写真家、映像作家)らに聞く魅力や見どころ、野村訓市が語る新海作品におけるRADWIMPSについてなど、クリエイターからの視点も必読。

『すずめの戸締まり』

2022年11月11日(金)全国東宝系にて公開

原作・脚本・監督:新海誠  
声の出演:原菜乃華 松村北斗/深津絵里 染谷将太 伊藤沙莉 花瀬琴音 花澤香菜 神木隆之介/松本白鸚
キャラクターデザイン:田中将賀
作画監督:土屋堅一
美術監督:丹治匠
音楽:RADWIMPS 陣内一真
https://suzume-tojimari-movie.jp/

©2022「すずめの戸締まり」製作委員会

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『すずめの戸締まり』予告

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『すずめの戸締まり』予告②

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