時を知るために生まれたのが時計だが、いまや腕時計はファッションの一部、自分の個性や主張を表現するアイテムであることは多くの人が認めるところだろう。2014年に創業したノット(Knot)は、そうした現代のファッション、ライフスタイルを念頭に置いた腕時計ブランドだ。
ノットの大きな魅力のひとつは「カスタム性」にあるだろう。腕時計本体とストラップなどを自在に着せ替えてスタイリングを楽しむことができる。しかもメイド・イン・ジャパンという高品質な時計づくりと、買いやすい価格帯での販売という、ある意味相反する問題をクリアして、優れた時計を発表し続けている世界でも稀有なブランドだ。そんなノットからデビューした新作は、月の満ち欠けがわかる「ムーンフェイズ」機構を採用したロマンあふれるモデル。ノットのブランド誕生の物語と新作に対するこだわりを追う。
80年ぶりに誕生した日本製時計ブランド
2014年に創業し、2015年には東京・吉祥寺に直営第1号店をオープンした新鋭の時計ブランドがノットだ。国産の量産腕時計としては約80年ぶりに生まれたブランドで、その名前は「結ぶ、絆」に由来する。新鋭ブランドらしく、販売方法もユニークだ。通常、腕時計は本体とストラップがセットになって販売されるが、ノットでは腕時計本体、ストラップとバックルを別々に選んで、自分好みにカスタマイズすることができる。その組み合わせは10万通り以上もあると聞くから、他の人と腕時計がかぶってしまうことも少ないだろう。
さらに驚くことに、ノットの腕時計は加工から組み立てまで、すべてメイド・イン・ジャパン。しかも、顧客にダイレクトで販売することで流通の効率化を図り、買いやすい価格帯を実現している。これも新鋭ブランドならではの取り組みと見ていいだろう。
高いクオリティとコストパフォーマンス、そして斬新な販売方法、これらをすべて実現した革新的な腕時計がノットではないだろうか。
ノットを代表し、ロングセラーを続けている腕時計が「クラシック」シリーズ。写真の右は4回の試作を重ねて完成した同シリーズの「スモールセコンドスクエア(SQ-32)」だ。サファイアガラスを正方形に切り取り、「316Lスチール」を採用したケースを美しく磨き上げたノットの自信作。日本人の腕を美しく見せるように設計された小ぶりの32mmサイズで、厚さ6.0mm、重さ25gのコンパクトな設計で着け心地も快適だ。
中央が同シリーズの「クロノグラフ(CC-39)」。シンプルでトラディショナルなデザインながら、2カウンターのクロノグラフという精密なムーブメントを採用、厚さ9.0mmという薄型ケースに日本の職人技が薫る。左は同シリーズの象徴的な存在の「スモールセコンド(CS-36)」。腕時計のデザインが頂点を極めた1940〜60年代のトラディショナルなデザインをヒントにデザインされたモデルで、日本の技術力によって設計された厚さ6.5mmの薄型ケースが特徴。10年後も変わらぬ輝きをもつ名品らしい佇まいだ。
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2サイズ・全10色を用意して、「ムーンフェイズ」が新登場
ノットを代表する「クラシック」シリーズから、新たにデビューするのが「クラシック ムーンフェイズ」と名付けられたモデルだ。機械式時計の複雑機構として人気の高い「ムーンフェイズ」。これは満月や三日月などの「月相」を知ることができる機構を装備したものだが、そのロマンティックな機構をクオーツ時計で表現したモデルが今回の新作だ。1周するのに59日(半周で29.5日)に設定されたムーンフェイズ板が回転することで、月の動きを視覚的に見ることができるモデル。
時計に華やかさを添えてくれるディティールではあるが、シンプルでクラシカルな見た目にまとめられているところにノットのデザイン力の高さが感じられる。ペアで楽しめる38mmと34mmの2つのサイズが用意されているが、それぞれ違ったデザインと仕様をもつ。どちらも男女関係なく着用できるサイズ感に仕上げられ、ジェンダーレスな現代のファッション感覚にもマッチしている腕時計だ。
「クラシック ムーンフェイズ」の38mmは、ムーンフェイズらしいトリプルカレンダーを搭載したモデルだ。12時位置に日付、3時位置で月、9時位置で曜日を表示するように設計されている。注目すべきは、このモデルの文字盤のデザイン。中央部分にグレイン加工を施し、外周の部分はケースのカラーリングによって、同色のサンレイまたはマットで仕上げた2層文字盤を備えている。
2層の質感のコントラストがムーンフェイズを引き立て、腕時計に豊かな表情を宿すことに成功。しかも2層文字盤は下部分だけを円弧で形つくることで、4つ目の窓をもつようなデザインに仕上げられている。またケースのフォルムも同シリーズを踏襲したもので、下面を削った美しい造形は、より薄く見えるようにデザインされている。
「クラシック ムーンフェイズ」の34mmは、クラシックシリーズのシンプルでスリムなフォルムにムーンフェイズ機構を搭載したモデルだ。38mmからカレンダー機能を省いたモデルと考えてもいいだろう。視認性が高くシンプルな印象を備える3針タイプの文字盤で、6時位置にあるムーンフェイズ板が回転することで、月の満ち欠けがわかる。文字盤は38mmサイズ同様に2層仕上げで、質感のコントラストが文字盤に独特の表情をもたらす。神秘でロマンティックなムーンフェイズに合わせて、ローマンインデックスを採用。クラシックな雰囲気を高めるとともに、同シリーズの他モデルとの差別化も図られている。
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シチュエーションや気分でストラップを付け替えよう
ノットの最大の特徴は、購入の際に時計本体とストラップやバックルが選べることだ。これならば自分好みの腕時計に仕上げることも簡単だが、腕時計はファッションの一部。その日のスタイルや気分に合わせて時計を選ぶことも有効だ。
ノットならば、膨大なバリエーションのストラップが用意されているので、替え用のストラップを購入すれば、用途や季節に合わせて使い分けることが可能。しかも交換が容易にできるイージークリック方式が採用されているので、ベルトの内側にある小さなレバーをずらすだけでストラップの交換ができる。服を着替えるように、毎日取り替えてもまったく苦にならない。腕時計を身に着ける楽しみが何倍にもなるだろう。
ノットのブランド名は「結ぶ、絆」に由来するが、これが最も表現されているのが「MUSUBUプロジェクト」だ。これは日本各地に息づくモノづくりの伝統を世界に広めたいと始められた独自のプロジェクト。そもそもノットの腕時計は日本製で、秋田や福島にある優秀な工場と「結ぶ」ように製作されている。そんな日本製へのこだわりは、腕時計本体だけでなく、ストラップの製作にも及んでいる。
姫路レザーのキモト・レザーワークスや栃木レザーといった日本各地の老舗タンナーに依頼したレザーストラップに加え、京都の「くみひも」や山梨の「印伝」といった、日本の伝統工芸の職人とコラボレーションした美しいファブリックストラップも製作。
腕時計本体からストラップに至るまで、“リストウェアで日本と世界を結ぶ"というブランドの哲学を形にしたものと言えるだろう。
全国に12店舗あるノットの「ギャラリーショップ」
ノットのショップは「ギャラリーショップ」と名付けられている。オープンディスプレイ形式の店内には数々の本体と膨大な数のストラップが展示されているので、実際の商品を手に取って、思う存分にカスタマイズ体験ができる。どのモデルにしようか、どのストラップを合わせようか、自分の腕に実際に着けて発見できることも多いはずだ。
加えてメンバーシップサービスや修理の受付、ラッピングや刻印サービスといったギフトサービスも行っており、ノットのブランド哲学や世界観を表現したショップといえるだろう。2015年に完成した吉祥寺本店は第1号店で、東京だけでなく、愛知、関西、九州など全国に12店舗を構え、台湾やタイ、フィリピン、韓国などの海外にも進出を果たしている。ぜひお近くの店舗に行って、ノットの腕時計とストラップを手に取ってみてほしい。
問い合わせ先/Maker's Watch Knot
https://knot-designs.com/
https://knot-designs.com/c/collection/watch/moonphase