村上華子から画家ヴァロットンまで。Penが選んだ今月の展覧会2選

  • 文:住吉智恵(アートプロデューサー)
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最古の写真誕生の陰に潜む、切なくも美しい失敗の足跡

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導入部の薄布にはニエプスが実験を試みた庭の像が浮かぶ。photo: Ken Kato

パリを拠点とする村上華子は、古典写真技法の研究を通して見ることの根源に立ち返る試みで注目されている。本展では最古の写真を残したといわれるニエプスの言葉や実践を丁寧に検証しながら、発明の陰にある幾多の失敗の足跡を辿る。ニエプスの庭の木漏れ日、ノートや手紙、磨き上げられた石版石、スプーンや銀貨、実験材料の暗号や小説の一部分、そしてラベンダーオイル香る実験室。ほのかなイメージの輪郭を現したおぼろげな写真の気配が網膜のロマンをささやく。

村上華子『du désir de voir 写真の誕生』展

開催期間:9/17~23年1/15
会場:ポーラ美術館
TEL:0460-84-2111
開館時間:9時~17時 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:無休
料金:一般¥1,800
www.polamuseum.or.jp/sp/hiraku-project-13

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黒と白の密室劇が暗示する、時代を超えた人間模様の機微

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『嘘(アンティミテⅠ)』1897年 木版、紙 三菱一号館美術館蔵

19世紀末のパリで活躍したスイス生まれの画家ヴァロットンは、黒一色の革新的な木版画で名声を得た。パリの街で観察した社会の暗部や人間模様を辛辣な視点で描いた一連の代表作には時代を超えたダークな魅力がある。特に男女関係の不協和音を暗示する10の場面を描いた希少性の高い連作『アンティミテ』は、黒と白で単純化された人物と装飾的な調度品の描写が、密室のひそひそ話や艶っぽい秘めごとの謎めいた空気を表現し、好奇心を掻き立てる。

『ヴァロットン―黒と白』

開催期間:10/29~23年1/29
会場:三菱一号館美術館
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時~18時(金曜と会期最終週平日、第2水曜は21時まで) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日、12/31、1/1 ※10/31、11/28、12/26、1/2、9、23は開館
料金:一般¥1,900
https://mimt.jp/vallotton2

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※この記事はPen 2022年12月号より再編集した記事です。