美しい植物標本から生まれた、胸がしめつけられる物語

  • 文:瀧 晴巳(フリーライター)

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【Penが選んだ、今月の読むべき1冊】
『ポール・ヴァーゼンの植物標本』

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ポール・ヴァーゼン/堀江敏幸 著 リトル・モア ¥2,200

遺された物には持ち主の記憶が宿っている。堀江敏幸は、小説でその痕跡を鮮やかにひも解いてみせる。『その姿の消し方』では一枚の絵葉書から名もなき詩人の人生をたどってみせた。『その姿の消し方』は架空の話だが、本書では日本のアンティークショップの店主が南仏の蚤の市で見つけた美しい植物標本95点と、それにインスパイアされた掌編が1冊になっている。1世紀以上も前、ひとりの女性が編んだ私的なアルバムのような花々に想いを巡らせ、わずかな手がかりからその人が確かにいた痕跡にたどり着く。

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※この記事はPen 2022年11月号より再編集した記事です。