【今月の映画3選】伊坂幸太郎の人気小説が、 ハリウッドで“弾丸列車”に!『ブレット・トレイン』ほか

  • 文:細谷美香(映画ライター)

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今月のおすすめ映画①『ブレット・トレイン』
伊坂幸太郎の人気小説が、ハリウッドで“弾丸列車”に!

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物語の舞台は新幹線を思わせる超高速列車「ゆかり号」。ジョーイ・キング、アーロン・テイラー=ジョンソンらとともに真田広之が出演。

ベストセラー作家、伊坂幸太郎の小説がついにハリウッド映画になった。「殺し屋」シリーズの『マリアビートル』を映画化したのは、ブラッド・ピットのスタントを長年務め、『デッドプール2』などを手がけたデヴィッド・リーチ監督だ。驚くほど原作に忠実な部分が多い本作について彼は、「大胆さと独創性、絶え間ない面白さと気の利いたセリフがある。そしていちばん重要なことは、俳優たちがじっくりと取り組めるような、特徴が明確に定義されたキャラクターが存在すること」だと語る。

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“運命”について語る男を重厚に演じ、刀を使ったパワフルなアクションも披露する。

人間味あふれるキャラ立ちした殺し屋たちがそれぞれのミッションを遂行するために超高速列車に乗り込み、東京から京都へ。不運続きの殺し屋、レディバグをチャーミングに演じているのはブラッド・ピットだ。ラッキーのシンボルであるはずの“天道虫”が不憫な目に遭うたびに笑いが起こるのは、彼のどこかとぼけた飄々としたコメディセンスあればこそ。さえない帽子とメガネを身につけ、ブリーフケースや水のボトルといったアイテムを駆使し、次から次へとユニークなアクションを繰り出してくる。「列車内、食堂車や静かな車内、トイレといった特殊な環境で戦うためには、どうすれば面白くなるのかを考えざるを得なかったんです。そうした挑戦を通して、よりよいものを生み出すことができました」という監督の言葉通り、閉ざされた空間で工夫を凝らして振り付けされたファイトシーンから目が離せなくなる。

いわゆる“トンデモ系”の描写もあるが、ここはポップに様式化された想像上の日本。思いがけない場面で流れる「時には母のない子のように」や麻倉未稀の「ヒーロー」にニヤリとできるのは、我々の特権だろう。ハチャメチャな戦いのなかに家族愛や運命、因果応報を描き、伊坂ワールドの精神を宿したとびきりのエンターテインメントに仕上がっている。

『ブレット・トレイン』

監督/デヴィッド・リーチ
出演/ブラッド・ピット、ジョーイ・キングほか
2022年 アメリカ映画 2時間6分 9月1日より全国の劇場にて公開。
※公開時期・劇場などが変更される可能性があります。

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今月のおすすめ映画②『NOPE/ノープ』
『ゲット・アウト』の監督が描く、“ 見てはいけないもの”の正体とは?

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舞台となるのは一家が牧場を営む広大なカリフォルニアの土地。ある日、空から異物が降り注いだ直後、父親が突然息絶える。兄妹は謎めいた死の直前に巨大な飛行物体を目にしたことから、その証拠を収めた動画を撮影しようとするが……。『ゲット・アウト』でアカデミー賞脚本賞を受賞したジョーダン・ピール監督の最新作。独創的なコンセプトで人種差別を風刺してきた監督が、スケール感あふれるSFホラーを完成させた。“絶対に見てはいけないなにか”が意味するものをスクリーンで目撃したい。

『NOPE/ノープ』

監督/ジョーダン・ピール
出演/ダニエル・カルーヤ、キキ・パーマーほか
2022年 アメリカ映画 2時間11分 TOHOシネマズ日比谷ほかにて公開中。
※公開時期・劇場などが変更される可能性があります。

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今月のおすすめ映画③『オルガの翼』
祖国ウクライナを追われた、15歳の少女が見つめる世界の分断

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© 2021 POINT PROD - CINÉMA DEFACTO

2013年、ウクライナ・キーウで欧州選手権を目指す体操選手のオルガ。ヤヌコーヴィチ大統領の汚職を追うジャーナリストの母とともに命を狙われる危機にさらされ、祖国を離れることになる。父の故郷、スイスのナショナル・チームに入った彼女は、ユーロ・マイダン革命によって変わっていくウクライナを遠くから憂える。15歳の少女がいかにして世界の分断を見つめ、ゆらぎながらなにを見出し、覚悟を決めていくのか。本物のアスリートである主人公の身体性と実際のデモの映像が、現代の痛みを伝える。

『オルガの翼』

監督/エリ・グラップ
出演/アナスタシア・ブジャシキナ、サブリナ・ルフツォワほか
2021年 フランス・スイス・ウクライナ合作映画 1時間30分9月3日より渋谷ユーロスペースほかにて公開。
※公開時期・劇場などが変更される可能性があります。

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※この記事はPen 2022年10月号より再編集した記事です。