韓国のビーチに打ち上げられた超巨大クラゲ...温暖化で大量発生のペースが加速

  • 文:ジェス・トムソン

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VictorHuang-iStock

<ネットでは砂浜に横たわるクラゲの画像が話題になっているが、韓国では巨大なエチゼンクラゲが毎年のように大量発生するように>

韓国の海辺に横たわる巨大クラゲの画像がネットで話題になっている。このクラゲは英語ではノムラクラゲと呼ばれるエチゼンクラゲとみられるが、韓国ではこの数年、エチゼンクラゲの大量発生が問題となっている。

ソーシャルニュースサイト「レディット」に画像を投稿した「Alesig」によると、画像は韓国・仁川近くの海辺で2008年に撮影されたものだという。一緒に映された女性の足と比べても、その大きさは歴然だ。ピンクと茶色のその姿は、まるでゼリーに覆われた触手を持つ脳のようだ。

「大きさは1~1.5メートルくらいだと思うが、よくわからない。死んでいて、少しつぶれていた」とAlesigはニューズウィークに語った。

■【画像】韓国のビーチに横たわる超巨大クラゲの写真

画像には、恐怖におびえる人々のコメントが寄せられている。あるユーザーは「ビーチや海水浴に向かない国がある」と投稿。別のユーザーは「人間なら誰のことも怖いと思ったことはないが、あれは恐ろしい」と述べた。

画像に対する他の多くのコメントによると、この巨大な生物はエチゼンクラゲの可能性がある。クラゲの専門家で、ロンドンにある自然史博物館のサイエンティフィック・アソシエイトであるギル・マップストンも同意見だ。

「巨大なNemopilema nomurai(エチゼンクラゲの学名)は根口クラゲ目で、かさ周辺に触手を持たない。韓国で撮影されたことも合わせると、この種である可能性が高い」とマップストンはニューズウィークに語った。

エチゼンクラゲは根口クラゲ目の中でも大型の種で、世界最大のクラゲである「キタユウレイクラゲ」(別名:ライオンのたてがみクラゲ)とほぼ同じ大きさだ。「かさの直径は2メートル、重さは最大200キロにもなる」と、マップストーンは言う。

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毒を持ち、触れると死に至るケースも

エチゼンクラゲは通常、東シナ海と黄海に生息している。その長い触手には毒があり、触れるとかゆみ、腫れ、激痛を引き起こし、死に至ることもある。「刺されても死に至ることは少なく、強い痛みが30分ほど続いた後、和らぐことが多い。だが中国では、死亡例も数件報告されている」とマップストーンは説明する。

近年、韓国ではエチゼンクラゲの数が増加しており、大量発生の頻度も増しているようだ。韓国政府は海水浴客に、刺される危険性を警告している。

韓国英字紙コリア・タイムズによれば、7月19日現在、慶尚南道沖では100平方メートルあたり最大10匹のクラゲが確認されている。韓国海域で大量発生したクラゲは、船から網やポンプを使って吸い上げられる予定だという。

エチゼンクラゲの大量発生は、歴史的には40年に1度程度だったが、近年ではほぼ毎年発生しており、気候変動の影響が指摘されている。

今回の画像が撮影された前年の2007年に、学術誌「プランクトン・アンド・ベントス・リサーチ」に発表された研究によると、大量発生の原因としては、中国沿岸海域での水温上昇、富栄養化(水生生態系においてリンや窒素などの植物栄養素の濃度が徐々に増加すること)、沿岸の改変、魚類の乱獲が考えられるという。

海水温は10年ごとに平均0.1度上昇しており、同研究が発表されてから15年間で、水温上昇がクラゲの大量発生に及ぼす影響は加速しているとみられる。

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※この記事はニューズウィーク日本版からの転載記事です。