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アメリカの自動車愛好家コミュニティから、レンジローバーを中心とした新しいカルチャーが生まれる

  • 写真:鈴木香織
  • 文:稲石千奈美
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レンジローバーは豊かな生活を演出する魔力が備わっている。自動車愛好家が集う「ザ・モータリングクラブ」を運営するアメリカのオーナーに、その魅力を訊いた。

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マイケル·ラペッティ●新形態のクルマ愛好会「ザ・モータリングクラブ」会長。IT業界で活躍するも、ランドローバー・ディスカバリーとスキーに明け暮れた日々が忘れられずクルマ愛好家が集い、つながる会員制のクラブを2019年に創設。会員誌『ザ・モータリングジャーナル』の発行人。

「ダイヤの原石のようにミステリアスな古いモデルを探した」というラペッティの愛車は1995年型。アメリカ西部のオーナーを転々とし、LAに戻ってきた個体。ていねいにレストアされ、現在はクラブの看板車になった。州をまたいだ旅行にぴったり。

「ザ・モータリングクラブ」は、自動車愛好家がラウンジで寛ぎレース中継の鑑賞会やツーリングなどを行うプライベートクラブ。会員所有のスポーツカー、オフロードモデル、バイクなど個性的な乗り物が集う。なかでも特別な存在感を放つのが、会長のマイケル・ラペッティが所有するレンジローバー・クラシック。ナンバープレートはクラブ名「MOTOR CLB」となっている。

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左:会員誌『ザ・モータリングジャーナル』はこだわった装丁や約130ページの内容が好評で会員でなくても年間購読(125ドル)できる季刊誌として発売されている。 右:会員が気軽に立ち寄り、寛げる広いラウンジ。飲み物やスナックは無料。ワークデスク、イベントスペース、ポッドキャストスタジオに加え、貸し出し用のヴィンテージ車3台もあり、数十台のクルマを収容できるストレージも用意する。www.themotoringjournal.com

子どもの頃からランドローバー社の広告を部屋に飾るほど憧れ、スキー三昧のために購入したのはランドローバー・ディスカバリー。吹雪の雪山や深い森を駆け巡った2年間で、ブランドの真髄が身体に刻み込まれた。

その後IT系企業でキャリアを積んだマイケルは「社会がデジタル化し、仮想空間が広がるからこそ、人が集まるリアルな場所を求めている」とクルマ愛好者のためのリアルなクラブの設立を決意。クルマ(と冒険)を愛する人を隔たりなく歓迎する、肩肘張らないコンセプトに賛同する会員を募った。会員数はクリエイターやIT関係者を中心に約400人になる。

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会員にはクリエイターが多く、オリジナルグッズは会員によるユーモアたっぷりのデザイン。キャップやTシャツなどの小物を広く販売する。www.themotoringjournal.com

クラシックスポーツカーがクラブのメイン車種だが、ラペッティのレンジローバーに感化された会員間でオフロード車が急増、クラブ初のオフロード企画は、ランドローバー・ディフェンダーやフォード・ブロンコ、トヨタ・ランドクルーザーなどが集まり大盛況。次のレンジローバー・クラシック限定イベントには、LAに近い砂漠に44台のクルマが集合した。

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会長の所有車をきっかけに会員の間でレンジローバーの所有が急増。3月に開催した第1回「レンジローバー・クラシック クラシック」ではモハベ砂漠に44台が結集。オーナー限定の愛好会「ザ・クラシッククラブ」を発足。カリフォルニアでのイベントを中心に活動予定。www.theclassic.club photograph:Michael Rapetti

「これほど多くのクラシックが集まることは珍しい。みんなが愛車を語り、走る興奮の1日だった」。反響に応え、サブグループ「ザ・クラシッククラブ」を発足したほど。ラペッティは、LAに次のクラブハウスも準備中。他の都市でも展開を予定している。

スポーツカーでもオフロード車でもいい、ヴィンテージならなおさらいい。ヴァーチャルな時代にクルマの走りと冒険をリアルに共有するコミュニティを創設したラペッティの読みは、いまのところ大当たりしている。

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※この記事はPen 2022年9月号「レンジローバーで走れ!」特集より再編集した記事です。
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