1. PATEK PHILIPPE(パテック フィリップ)
カラトラバ 5226
アンティークカメラのグリップを想わせるテクスチャーと、中心から外側へ深くなるグラデーションが美しいアンスラサイト文字盤に、夜光付きアプライドインデックスが映える。ギョーシェ装飾を側面に配し、ラグとケースバックを一体化させた特別なケース構造を採用した。
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2. TAG HEUER(タグ・ホイヤー)
タグ・ホイヤー オータヴィア
グラデーションで奥行きを表現した文字盤に、ヒストリカルな大型リューズや時分針、アラビア数字インデックスを添えた。1933年誕生のダッシュボード計器にルーツをもち、「オートモービル+アヴィエーション」のDNAを受け継ぐ。
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3. LONGINES(ロンジン)
ロンジン スピリット ズールー タイム
サンドブラスト加工を施したアンスラサイト文字盤と大型針が、グリーンのセラミックをインサートした両方向回転ベゼルと相まって、絶妙なヴィンテージ感を醸し出す。航空時計のパイオニアであるロンジンが100年以上の経験と知識を注ぎ込んだGMT搭載の最新作だ。
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「トープ」や「アンスラサイト」をはじめ、ファッションやインテリアの世界ではグレーを基調としたニュアンスカラーが根強い人気を誇るが、腕時計の世界でもじわじわと広がりつつある。ブラックに近いダークカラーから、暗褐色ぐらいまでの“グレーニュアンスの文字盤”が、2022年の新作では際立つ。その色はここ数年の流行であるヴィンテージデザインをモダナイズする、格好の色みとしても機能しているようだ。
漆黒のような完全な黒は長年にわたるダイヤルの定番色だが、そこから微妙に引き算、掛け算を行うところが、各ブランドの手練の技だ。外側から内側に向けて徐々に明度を上げ、文字盤表面にもノスタルジアを起動するような仕上げを施したパテック フィリップの「カラトラバ」は、モダナイズド・グレーのひとつの境地だろう。サンドブラスト加工の地にアンスラサイトカラーを載せた「ロンジン スピリット ズールータイム」は、どこにもないヴィンテージ感を立ち上げる。タグ・ホイヤーの「オータヴィア」もまた、味のあるカーフストラップが似合う。
どれも黒を単純に薄めたのではなく、三原色を巧みに調合して得た奥行きがある色。時代を超えて愛されるヴィンテージスタイルは、ニュアンスグレーという新たな“深み”と出合い、いっそう輝きを増すのである。
並木浩一
1961年、神奈川県生まれ。時計ジャーナリスト。雑誌編集長など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。
※この記事はPen 2022年8月号より再編集した記事です。