『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』撮影は苦労の連続だった⁈ 109ページにおよぶコロナ対策手順

  • 文:中川真知子
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『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』トレイラー

コロナが引き続き猛威を奮っている。

日本でも連日感染者が増えており、全国の感染者数が18万人を超えた時点で「緊急事態宣言検討の時期」という意見が出た。

そんな中でも多くの職場でコロナ対策手順に従いつつ仕事を続けており、それはショービジネスでも同じだ。いや、こんな時期だからこそ、ショービジネスは必要とされてきた。

コロナのパンデミックでNetflixをはじめとするストリーミング登録者数が飛躍的に増えたことを鑑みても(その後は急速に減ったらしいが)、エンターテインメントを見ることで不安な気持ちを和らげる人の多さが伺える。ショービジネスに関わる人たちは、「The Show Must Go On(やめるわけにはいかない)」という言葉の重みを噛み締めているだろう。

だから、ハリウッドでは、エンタメ業界のトップスタジオと組織によって作られたCOVID-19の安全プロトコル(コロナ対策手順)をアップデートしながら、延長に延長を重ねて、安全な製作現場にするべく努力をしてきた。そして先日、新たに9月30日まで正式に延長されることが決定。また、新たに2つのルールが適応されたそうだ。

と、ここまで書いて、ハリウッドの安全プロトコルとは具体的にどういったものなのかが気になった。どこまで厳しく、そしてどこまで徹底されているのか。パンデミックが引き起こした製作現場の混乱とはどんなものだったのか。

今回は、7月29日に公開を控える『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』のケースをみていきたいと思う。

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突然の撮影中止と4カ月の待機の末に

ハリウッドの安全プロトコルの青写真を作ったのは、『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』の関係者だったらしい。既に撮影に入っていた同作のスタッフは、2週間の撮影期間の内の1週間が無事に終わったタイミングで、コロナの感染拡大に危機感を持ったスタジオに撮影中断を命じられたという。

というのも、撮影はカナダで行われており、万が一国境が封鎖されてしまっては関係者がアメリカに戻って来られなくなってしまう。全てが好調に進んでいたが、スタジオの決定とスタッフの安全を第一に撮影は一時的に保留となった。その後、COVID-19は収束する様子もなく『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』は4ヶ月もペンディング状態に。

そしてこの待機期間中に、製作フランク・マーシャル、パトリック・クローリー、制作総指揮のアレクサンドラ・ダービシャー、プロダクション・マネージャーであるのティム・ウェルスプリング、そしてリカルド・ディ・カッファ医師とYour Doctorらは、安全プロトコルを作った。

ディ・カッファ医師は、「現場でCOVID-19を発症しないと保証できる医師はいない」と言いつつ、感染者を迅速に特定して、隔離したり接触者を追跡できるようにしたりすることで、感染拡大のリスクを最小限にするのに努めた。

そして、突然の中断から4カ月が経過したころ、『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』はイギリス郊外のパインウッドスタジオで撮影が再開された。

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共有スペースを拭くだけのスタッフを100人用意

『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』は、コロナ禍で1番最初に撮影を再開したビッグタイトルだそうだ。

約700人のスタッフは、毎朝体温チェックし、熱がないと証明されるとリストバンドが渡された。リストバンドは色別になっていて、各部門のゾーンに行く通行手形の役割を担っていたようだ。

例えば、グリーンゾーンのリストバンドを持っているクルーは、唯一セットへの立ち入りが許されており、週3回のPCR検査が義務化された。現場の至る所に消毒液と手洗い場が設置され、ノーマスクでいる時間がある出演者の周辺は特に入念に消毒されたそうだ。

ソーシャルディスタンスとマスク着用も徹底された。ちなみに、マニュアルが作られたのは、ソーシャルディスタンスとマスクの着用が国家的義務になるずっと前のこと。

さらに、約100人のスタッフが取手や洗面台といった共用スペースを消毒するためだけに雇われたという。

これらは、今でもハリウッドのCOVID-19安全プロトコルのスタンダードになっているという。

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変わった2つのルールとは

9月30日までこのプロトコルが適応されるわけだが、2つ変更されたところもある。

The Hollywood Reporterが入手したDirectors Guildには、COVIDのレベルが高ければ、1)指定された予防接種を受けていないスタッフは、現場で提供される共同調理器具を使って作られるセルフサービスのフード提供に参加してもらえない 2)マスクをしていればキャストとクルーを乗せる車両はフル稼働できる(ただし、メイクを施したキャストがいる場合は距離を置く)と書かれていたそうだ。

製作現場が厳しいプロトコルを導入しているのは、予算とスケジュールが重要視されているからだ。

例えば、『ミッション:インポッシブル』シリーズ最新作は、コロナの感染拡大が理由で7回も撮影が延期されたが、その間に500万ドル以上(約6億8000万円以上)の損失が発生したという。(上限1億ドル(約130億円)の保険に入っていたため、保険会社に補填するように求めたが、保険会社側が支払いを渋っているために米パラマウント・ピクチャーズが訴えた、という別の問題も発生している)。

さまざまな苦労と、普段のプロダクションであれば発生しないコロナ安全プロトコル作りに見舞われた『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』は、7月29日に全国公開を迎える。コロナ禍での撮影だったとはいえ、決してコンパクトに収まったストーリーではなく、大画面に相応しい迫力と規模だ。

一足先に試写鑑賞した筆者は、ぜひ多くの人にシリーズの終焉を見届けてほしいと思っている。コロナ対策を万全にして、劇場で……。

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