体脂肪を落とすのに有酸素運動はいらない──ネイビーシールズ仕込みの筋トレ術

  • ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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(写真はイメージです) Ridofranz-iStock

<米軍の特殊作戦部隊トレーニングスペシャリストが明かす、自分史上最強の身体能力を手に入れる方法>

私たちは「体脂肪を落とすには、有酸素運動が不可欠である」と幾度となく聞かされてきた。しかし、それは正しくない。「有酸素運動は、非効率的で効果があまりない」と、米軍の特殊作戦トレーニングスペシャリスト、マーク・ローレンも言う。

ローレンは、アメリカで2011年に発売され、20万部を超えるロングセラーとして売れ続けている"You Are Your Own Gym"の著者。フィットネス器具やサプリなどを使用せずに筋肉を鍛えていく自重筋トレーニングの手法を取り入れていることから、手軽に始められると人気に火がついた話題のボディウエイトエクササイズ本だ。

このたび、『マッスルエリート養成バイブル』(ジョシュア・クラークとの共著、かんき出版)として日本に初上陸した。

ローレンは、米軍の中でも厳しい選抜と訓練が行われるネイビーシールズ、グリーンベレー、空軍特殊作戦部隊などで活躍する兵士1000人以上を育ててきた。自身もそうした過酷な任務に就いた一人で、当時、卒業試験を経て残っていた訓練生は15%以下。今では考えられないほどのオーバートレーニングを施されたためだという。

「若い訓練性の限界を打ち破るうえでは効果的だったが、フィットネスを最適化するという意味では、理想に程遠いものだった」

折しも、アメリカ同時多発テロを境に、特殊作戦に従事する兵士の任務が増加した。訓練生を徹底的に鍛え、ダメなら追い出すという「やりすぎずに効果を上げる(more is better)」方法から、「やりすぎないほどいい(less is more)」方法への転換が急務になった。

何が効果的で何が効果的でないのかを検証する必要に迫られたローレンは、最新のストレングス&コンディショニング理論とスポーツ科学を応用し、わずかな時間でよりよい結果を出すトレーニングを生み出した。

この方法を取ることで、トレーニングの脱落率は40%ほど削減したという。無駄な脂肪を短期間で削ぎ落し、筋肉質で健康でもある体を最速で開発することになった。

とはいえ、『マッスルエリート養成バイブル』は、何も超人的な肉体をつくり上げたい人だけのものではない。日々の健康維持を自重筋トレで行いたい人も含む、すべての人に不可欠なトレーニング法を紹介している。さらに、筋力だけでなく、心臓、肺などの心肺機能を向上させる要素もあるという。

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なぜ、有酸素運動は時間の無駄なのか

冒頭のローレンのコメントに戻る。なぜ、有酸素運動では痩せられないのか。

例えば、「体重60キロの女性が目標とする有酸素運動の心拍域で15時間運動すれば、約500グラムの脂肪が燃焼する」とうたう広告があったとする。

私たちの代謝機能がこの宣伝文句の通りの速度でカロリーを消費していれば、人類は氷河期を生き延びてはいない。マンモスを探している間にカロリーが枯渇し、狩りができずに餓死することになるからだ。

現代に置き換えると、スーパーへ買い物に行くために消費するカロリーだけで息絶え絶えになる、ということを意味する。

ランニング、サイクリングなどの有酸素運動でトレーニングすればするほど楽になるのは、心肺機能が向上するからではない。筋肉に持久力が付くから楽になるのではなく、特定の動作に対して体が効率的に動くようになっただけ。つまり作業効率がアップしているだけなのだ。

有酸素運動を習慣化すると、実際には筋肉が萎縮していく。加齢に伴って多くの人の体重が増え始めるが、それは筋肉量が減っているからだ。そのうえで有酸素運動のみしていたのでは、ますます筋肉量が減ってしまう。

ため込んだ体脂肪を解消するカギは、筋力トレーニングをやって筋肉をつけ、若々しい代謝を取り戻すこと。そのためには、インターバルトレーニングをやるべきだと、ローレンは説く。

高強度エクササイズを一定時間行い、その後、一定時間休息し、それらを繰り返す。有酸素トレーニングに比べ、短時間でより多くのカロリーを消費し、体脂肪を含めた体組成の前向きな変化をもたらしてくれる。

筋肉をつけるだけでなく、ワークアウト後の代謝にも影響を与えることができるため、身体のホメオスタシス(恒常性)を回復させることにつながる。そうなると睡眠中であっても、代謝を上げてカロリーを燃やし続ける。

有酸素運動にはそんな機能はない。効率的に鍛えるには、あらゆる時間をも使う必要があるのだ。

痩せたい、そして筋肉も増やしたいならば、まずは筋肉を増やすことに重点を置く。目標の筋量に達したら、脂肪を減らす作業に切り替えるといい。

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1週間の1.2%の時間だけ割けばいい

私たちには選択肢がある。心と魂が住む唯一無二の「家」である体を気遣うか、時間の経過とともに衰えていくほうに身を任せるか。ほとんどの人は衰えていくほうを選ぶ。

一方で、本気で自分を変えようと決める少数派の人たちがいる。ローレンのプログラムは、1日20~30分、週に4~5回をワークアウトに時間を割くことを要求するが、これはその週全体の1.2%未満に相当する時間だ。たったそれだけで十分なのだ。

それにこのプログラムであれば、家の中だけでエクササイズが完了する。ジムに行くための準備なども必要ない。煩わしいジムの人間関係に惑わされる時間があるなら、さっさと動き始めればいい。体を動かせば、ストレスが洗い流され、心と体が生き返る。決めたことをやり遂げることで自尊心も高まる。

目標を達成するためには、望みを持つことが大切だ。「筋肉を増やしたい、ウエストを補足したい、脚を美しくしたい......」など明確にしていくこと。目標のない計画は失敗に結び付く。軍隊では「逆計画法」を用いてタイムラインを作成するが、それと同じだ。

目標を明確に設定し、達成しなければならないタイムリミットから逆算してタイムライン化することで、行動開始が容易になる。あとは、単に、あきらめなければいいだけの話だ。

トレーニングへのモチベーションを維持するためには、目標と言い訳を具体的に書き出してみるといいだろう。具体的であればあるほどいい。言い訳を特定できれば、その言い訳を意識するようになり、吹き飛ばすことが可能になる。

何をどれだけ得たいか、失いたいか、あるいはやりたいか?
いつまでに何をするか。
自分がトレーニングをさぼるとしたら、どんな理由が考えられるか。

それらを書き出し、そして覚えておこう。次に言い訳が浮かんでも、断固としてトレーニングをすると決めること。心の中の敵はさまざまな姿で攻め入ってくる。敵を知れば、負けることはない。

揺るぎないモチベーションを手に入れ、マーク・ローレン式の実践的なエクササイズ法を学び(『マッスルエリート養成バイブル』には125のエクササイズが紹介されている)、トレーニングに挑んではどうだろうか。

※この記事はNewsweek 日本版からの転載です。

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