14時間乗った飛行機は、大穴が空いたまま飛んでいた 降機後に乗客が発見

  • 文:青葉やまと

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エミレーツ航空の国際便で、乗客が降機後、機体に大きな穴が空いていたのを発見した。14時間のフライトのほぼ全区間を通じ、穴が空いたまま飛んでいたようだ。パイロットもキャビンアテンダントも、穴の存在を確認できなかった。

事故が起きたのはエミレーツが運行するEK-430便だ。ドバイ国際空港を発ち、7月1日にオーストラリア西部のブリスベン空港に着陸した。機体のエアバスA380は22本のタイヤを装備しているが、このうち1本が離陸直後に破裂している。破片の一部が、フェアリングと呼ばれる胴体を覆う空力パーツを直撃した模様だ。エミレーツによると、穴が空いたのはこの被覆パーツのみであり、構造と与圧に問題はなかった。

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脱落したボルトが直撃した可能性も

一方、ジェット旅客機衝突データ評価センター(JACDEC)はツイートを通じ、機首を支えるノーズギアから手のひら大のボルトが脱落しており、これが胴体破損の原因になったとの見解を示している。

イギリス人女優でありオーストラリアでの活動経験ももつ女優のリサ・ケイさんは、「(破裂の)音を聴いたし、フライトアテンダントたちが顔を見合わせていたのを覚えている!」とツイートした。

ブリズベンへの着陸にあたり、パイロットは管制塔に対してタイヤがパンクしている疑いがあると報告し、空港では非常事態に備え緊急車両が待機した。着陸後、左翼の付け根を覆うルートフェアリングと呼ばれる部材に穴が空いていることが発見され、タイヤにもバーストが確認された。航空事故情報サイトの豪アビエーション・ヘラルドによると、同機は当日の復路便への使用が見送られている。

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専門家「フライトの続行は妥当」

タイヤは離陸から45分後に破裂したとみられ、この時、乗客と乗務員らが異常に大きな音を聞いている。ソーシャルメディア上ではフライトを続行したことに対する疑問も上がっているが、航空事情に詳しい専門家は、とくに問題はなかったと捉えているようだ。

英キングストン大学のジョナス・ボロー上級講師(航空学)はユーロニュースの取材に対し、システム上にエラーが表示されなければ、パイロットの立場としては何もできないと説明している。このとき、状況把握のために取れる代替手段は3つあるが、今回の場合はそのすべてで問題の発見に至らなかったという。

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3つの確認方法とは

クルーが取ることのできた確認方法のうち、1つ目はキャビンアテンダントによる目視確認だ。異常を感じた場合は機内から確認できる範囲で目視のチェックを行う手はずだが、今回原因となったタイヤは胴体の下部に位置しており、キャビンからは確認できない。ルートフェアリングの損傷はみえた可能性もあるが、機内の通路上からは角度の関係で難しかった模様だ。

2つ目はパイロットがカメラを通して確認することだが、ルートフェアリングの位置をカバーしているカメラはなかった。3つ目に、出発空港に対して確認を依頼することが可能だが、ドバイ空港側が滑走路を検査したところ、タイヤの破片などの異物は確認されなかったという。

ボロー氏は「おそらく100万回に1回ほどでしょう。日常的に起こることではありません」と語り、非常にめずらしいインシデントだとの見解を示している。エミレーツは航空情報サイトの「エアライン・レーティング」が選出する「世界で最も安全な航空会社トップ20にも選出されている。定評のある航空会社だけに、人々の驚きも大きかったようだ。

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