ヴァージル・アブローの集大成となる書籍『Work in Progress』の出版が決定

  • 文:長谷川安曇
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2021年11月28日に心臓血管肉腫のため、41歳で他界したヴァージル・アブロー。2012年に自身のファッションブランド「Off-White」を設立し、2018年に「ルイ・ヴィトン」のメンズ・アーティスティック・ディレクターに就任した。

2021年11月に他界した、ファッションデザイナーのヴァージル・アブロー。 半年経ったいまも、彼の急すぎる死を多くの人が惜しんでいる。

今年6月にパリで開催されたルイ・ヴィトンの2023年春夏のメンズコレクションでは、生前のアブローが率いていたデザインチームが、彼のスピリッツを色濃く反映したコレクションを発表。ラッパーのケンドリック・ラマーがアブローに対するトリビュートとして、自身の曲を披露した。ラマーは会場の最前列に座るナオミ・キャンベルの隣で、「ヴァージル、何マイル先にいるんだ?」と問いかけた。

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6月末にルーヴル美術館の中庭「クール・カレ」で開催された、ルイ・ヴィトン」の2023年春夏メンズコレクションの様子。YouTube-Courtesy of Louis Vuitton

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ルイ・ヴィトンのジャケットとパンツを身にまとった、ケンドリック・ラマーもパフォーマンスを披露。

そんな中、アブローを失った悲しみを、少しだけ癒してくれるニュースが飛び込んできた。イギリスの出版社、ワンワールド・パブリケーションズが、『Work in Progress』と題した、アブローが生前に書いた本を出版すると発表したのだ。パリを拠点にするファッション批評誌『Vestoj』創刊者で編集長のアンニャ・アロノウスキー・クロンバーグとの共著になる。

アロノウスキー・クロンバーグは同誌を始め、シカゴ現代美術館で2019年に開催されたヴァージルの個展『Figures of Speech』の公式インタビューなど、幾度となく、アブローにインタビューしてきた。

「亡くなる前の数年間にアブローは自身の仕事について、アロノウスキー・クロンバーグとの知的で理論的、想像力に富んだ会話で癒されていた」とワンワールド・パブリケーションズの担当者は語る。

アロノウスキー・クロンバーグは、アブローとともに数年前からこの本に取り組んでいたという。本は、ふたりの対話の記録を元にしたもので、対話の内容には実際に会って交わしたもの、電話やEメール、メッセージのスレッドなども含まれているという。

アブローのアイデアや独創性をベースに、文化批評や論理、アート、個人的なストーリーなど、彼の集大成となる一冊だと発表されているこの本。詳しい出版日に関しては未定だが、いまもなお人々の心に宿る、ヴァージル・アブローの残した偉業を実感できるチャンスになりそうだ。

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