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電通出身のクリエイターが集結! 令和時代の新しい“つながり”で人の心を動かす

  • 文 : 高野智宏
  • 写真 : 齋藤誠一

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電通出身のクリエイティブ・ディレクター5名によって、広告業界に新しい風が吹こうとしている。組織でも個人でもなく、コレクティブ(集合)としてクリエイションに向き合う彼らに注目した。

6月28日に発売されるPen8月号「アイデアと行動力で世界を動かす、“仕掛け人”を探せ!」から一部を抜粋して紹介する。

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4月に開設した南青山のオフィスにて。前列右から時計回りに、細川美和子、田辺俊彦、保持壮太郎、菅野薫、東畑幸多。オフィスの内装は、細川の推薦にて、アンティークショップ「はいいろオオカミ」が、シンプルでいて居地のよいオープンな空間を演出。https://tsuzuku.tokyo

さまざまな“仕掛け”を駆使して、人々の心を動かし続ける広告業界のクリエイターたち。今年1月、電通出身のディレクター5名による新たなコレクティブ「(つづく)」が誕生した。サントリー天然水のCMをはじめ、誰もが一度は目にしたことのある広告を手がけ、カンヌライオンズなど数々の受賞歴をもつ彼ら。それぞれフリーランスでも十分に活躍できるはずだが、なぜ集まることにしたのか。その経緯をメンバーの菅野薫はこう語る。

「年齢や経験を重ねていく中で、今後の人生も純粋に社会やクライアントのためのクリエイティブに能力を注ぎたいと思い、共感した仲間が集まりました」

グローバルな舞台で活躍する田辺俊彦は「みな得意分野が違って刺激をもらえる。緩やかに関係し合うことで、新しい何かが生まれる予感がありました」と語る。

同じように、期待を寄せるのが保持壮太郎だ。「個人だとスタッフも固定しがちで、出来上がりも想像を超えない。ここでの新たなクリエイションに自分自身が期待している」

また、人が集まること自体に意味があると考えたのは東畑幸多だ。「テレワークが当たり前のいま、その瞬間同じ空間を共有するだけで救われることもある。『組織』か『独立』以外の選択肢を示す意味でも、コレクティブ(集合)を名乗ることにしました」

組織が大切にされたのが昭和の時代ならば、個人が活躍したのが平成の時代。そして令和は、個性豊かでフラットな“集まり”の時代なのかもしれない。成果だけでなく、働き方やプロセスも重視されるいま、新しい組織のあり方から、これまでにないクリエイションが生まれていくだろう。

(つづく)という印象的な名を生み出したのは、コピーライティングに定評がある細川美和子だ。

「すぐに消費されるのではなく、長く続く仕事に人生を費やしたい。そんな会話の中でこの言葉が浮かびました」

全員でのネーミング会議が開かれた際は、開始数秒で細川から (つづく)が提示され、その瞬間に会議が終了したという。

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(つづく)のウェブサイトのトップページ。小説やドラマの最後に(つづく)と書かれていると、続きが待ち遠しくなる。自分たちが手がけた仕事もそう思ってもらいたいと考えて、あえてカッコをつける表記にしたそうだ。

「効率も大事だけど幸福も忘れたくない。この名前にみんなの想いが集約されている」と語る東畑は、立ち上げる際、広告の先に人がいることを改めて認識したという。

「多くのことを数字で可視化できてしまう時代ですが、広告は人の心を動かす仕事。ここは、それを証明する場所でありたい」

人と顔を合わせずともつながりをもてる時代だからこそ、リアルな場所を大切にする。彼ら自身の実践が、人々の心を動かす作品に(つづく)のだ。

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クリエイティブ・ディレクター/プランナー
保持壮太郎

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保持壮太郎●1981年、神奈川県生まれ。広告の企画・制作をはじめ、新商品・サービス開発や小説原案に番組企画など活動は多岐にわたる。最近の仕事に「大阪・関西万博2025誘致」や藤井風「“Free” Live 2021」など。著書に『なぜ君たちは就活になるとみんな同じようなことばかりしゃべりだすのか。』がある。

CM「ポカリスエット~『羽はいらない』篇」

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エアドームの中に全長45mの道路を再現。内部に発生させた人工の雲に、中島さんがワイヤーアクションで飛び込んでいく舞台裏映像は必見!YouTubeの大塚製薬公式チャンネルで公開中。

広告制作の知見を活かし、多領域で人の心を動かす

東京2020オリンピック競技大会の競技場内演出や大阪・関西万博の誘致活動を「広告ではない領域でも、人の心を動かす点では同じと考えて取り組みました」と振り返る保持壮太郎。彼がいま手がける案件のひとつがポカリスエットのCMだ。担当となったのは、くしくもコロナが猛威を振るい始めた頃。話題になった「NEO合唱」篇も、当初考えていた撮影が不可能になり、出演者に自撮りしてもらった映像をもとに制作したという。昨年からは中島セナさんを起用したシリーズを展開。今春の「羽はいらない」篇で、立ち上る雲へ彼女が飛び込んでいくシーンが目を奪った。可能な限り実写にこだわり、巨大セットを舞台にした映像に、誰もが心を動かされることだろう。

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クリエイティブ・ディレクター/プランナー/コピーライター
細川美和子

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細川美和子●おもな仕事にP&Gパンテーン「#この髪どうしてダメですか」、東京ガス企業広告「家族の絆」「東京ガスのひと」シリーズなど。カンヌライオンズ、ACC、TCCなど国内外の賞を多数受賞。言葉を中心に広告とPR、マスとソーシャルを融合し、長く愛され物語のあるブランドづくりを志す。

「アテント 大人用紙パンツ」

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2020年「24時間テレビ」で12本連続放映されたCMが話題に。当日の朝刊の広告。

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生活者と共創した「かくさない」パッケージ。堂々と持ち歩けるデザインを目指した。

“矢印の向き”を逆にして、より良い社会へ

パンテーンの「#この髪どうしてダメですか」キャンペーンでは世論を巻き込み話題を呼ぶ一方、東京ガスの企業CMでは、家族の絆の物語で感動を届け続ける細川美和子。彼女が最も大切にするのが言葉であり「企業から生活者へー方向である言葉の矢印の向きを、SNSを通して逆にすれば、企業も社会もよりよくなる」と考えている。好例が大王製紙の紙パンツ「アテント」のキャンペーンだ。「#常識をはきかえよう」と宣言し、SNSやサイト上で生活者との対話を生み出し、可視化できる仕組みを構築。結果、新しいパッケージデザインが実現するなど、生活者の言葉の力を証明してみせた。

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クリエイティブ・ディレクター/クリエイティブ・テクノロジスト
菅野薫

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菅野薫●1977年、東京都生まれ。広告の企画制作を手がける一方、デジタルテクノロジーを活かし、リオ・オリンピック/パラリンピック閉会式の東京ショーや、ビョークやパフュームなど国内外のアーティストのMVやライブ企画にも多く参加。カンヌの最高賞であるチタニウム・グランプリなどを受賞。

ライブパフォーマンス「YAKUSHIMA TREASURE(コムアイ×オオルタイチ)『ANOTHER LIVE』」

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通常の映像とは異なり、時に鳥瞰となり、時に演者の身体をすり抜ける、デジタルデータだからこその革新的な表現が圧巻だ。https://another.yakushimatreasure.com

テクノロジーを駆使した表現で、革新の体験をもたらす

デジタルテクノロジーを駆使した先進の表現で、広告のみならず世界的アーティストのMVやライブパフォーマンスを彩ってきた菅野薫。なかでも圧巻の映像表現で話題を呼んだのが、YAKUSHIMA TREASURE(コムアイとオオルタイチ)がコロナ禍に、屋久島のガジュマルの森で行った「ANOTHER LIVE」の映像だ。赤外線で360度の3D点群データとしてスキャンされた空間、フォトグラメトリーで捉えた色彩、そして、深度センサーで読み取った演者の動作を統合しブラウザ上に映し出されたのは、人間の視覚を超越した幻想的な世界。菅野でしか創造しえない、革新の映像表現といえる。

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クリエイティブ・ディレクター/CMプランナー
東畑幸多

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東畑幸多●1975年、東京都生まれ。サントリー、ホンダ、日清食品など多くの企業TVCMを制作。クリエイティブ・ディレクターとして、企業ブランディングや統合キャンペーンなどコミュニケーション全体の設計を担当。ブランドの本質的価値を捉え、ファンとブランドとの幸せな関係をデザインする。

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CM「サントリー天然水『土と水と人と』篇」

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東畑は「澄み切った空気ごと取り込みたいという消費者のニーズを、フィジカルな演技で表現してくれた」と石橋を称賛。

ファンのニーズを映し、幸せな関係を築く

担当して10年目になるサントリー天然水のCMは、東畑幸多の代名詞と言える存在。しかし当初は売り上げが伸びず、クライアントと一緒に試行錯誤をしたと言う。その原因を「競合ばかりを気にして、ファンを見ていなかった」と振り返る。原点に返り、水源の地で合宿を敢行。気づいたのは「水だけでなく、アルプスの清冽な空気ごと身体に取り込みたい」というフィジカルなニーズ。天然水の世界観にそのニーズを反映したCMは、昨年から石橋静河を起用し継続中。SDGsをテーマにした「素晴らしい過去になろう」篇も、森を育て水を育む同社の姿勢と、次世代への想いを込めた自信作だ。

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クリエイティブ・ディレクター/映像プランナー
田辺俊彦

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田辺俊彦●1978年、東京生まれ。18歳まで世界7都市で育つ。コンセプトからクリエイティブまで、複数の国をまたぐキャンペーンを多数手がける。最近の仕事にSHISEIDO、UNIQLO、GUCCI をクライアントとしたグローバルキャンペーンなどがある。

CM「資生堂150周年企業広告~『美しさとは、人のしあわせを願うこと。』篇」

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人気女優が各時代の女性を演じ大きな話題に。なかでも56年前を再現した前田美波里の現在の姿には誰もが驚き、称賛した。

日本文化や歴史を読み解き、クリエイションに落とし込む

「18歳まで海外暮らしだったので、日本の文化や企業が世界でどう捉えられているかを常に意識している」という田辺俊彦。トヨタやユニクロ、資生堂のグローバルコミュニケーションを担当しているのは自然なことと言える。しかし、独立して最初のプロジェクトは日本国内に向けた資生堂の150周年企業CMだった。「資生堂はクリエイティブを志すきっかけとなった憧れの企業。日本の文化を築いた歴史を振り返り、未来を見据えた資生堂としかつくれない作品にしたいと思いました」と語る。その言葉通り、各時代を象徴するメイクと装いの女優たちが美しい笑顔で魅せる、資生堂らしく華やかな、そしてなにより資生堂愛に満ちた映像となったことは、ご存じの通りだ。

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